ノーベル平和賞:OPCWが何をしたというのか…シリア
毎日新聞 2013年10月11日 22時13分(最終更新 10月11日 23時44分)
【カイロ秋山信一】シリアで化学兵器の廃棄に向けた活動を続ける化学兵器禁止機関(OPCW)のノーベル平和賞受賞が11日、決まった。だが、シリアでは連日、激しい戦闘が続き、市民の犠牲者が増え続けている。「平和」とかけ離れた生活を強いられているシリアの人々の目には「世界はシリアの現実から世界は目をそらせている」と映っている。
「化学兵器禁止機関がシリアで何をしたというのか。砲撃は続き、毎日、市民が殺されている」
8月に化学兵器が使用されたシリアの首都ダマスカス郊外のグータ地区に住むムハンマド・タイブさん(21)は、毎日新聞の電話取材にあきれたように言った。タイブさんによると、11日も政府軍の砲撃は続き、自宅周辺は停電しているという。
グータ地区の反体制派の野戦病院で働く男性は「化学兵器と通常兵器の何が違うのか。ミサイルや銃撃で苦しみながら殺される方がむしろ残酷だ」と指摘。化学兵器を特別視する国際社会への不満を表した。
在英の反体制派組織「シリア人権観測所」によると、アサド政権と反体制派の武力衝突が始まった2011年3月以降の死者数は、9月までに11万5000人を超えた。化学兵器による犠牲者は、このうち1〜2%程度でしかない。
国連によると、国外に逃れた難民は約217万人、国内避難民は約500万人に上る。人口の約3分の1が自宅を追われた計算だ。内戦が続けば、14年末には難民が500万人を超えるとの試算もある。
自宅に残れたとしても生活は過酷だ。ダマスカス郊外の反体制派支配地域では12年11月以降、電気や水道が遮断されている。政府軍が包囲しているため、食料や医薬品が欠乏し、飢餓の懸念も高まっているという。
タイブさんが言った。「本当にノーベル平和賞にふさわしいのは、内戦を終結させられる人たちだ」