◆連載 わかり易い2軸理論
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嶺村聖佳ナショナルデモンストレーター |
◆連載をはじめるにあたって
最近、よく出てくる2軸理論ってなに? もっとわかりやすく説明してもらえないでしょうか? という疑問に答えようと
「わかり易い2軸理論」と題して、連載を開始することとしました。
平面の上で行なわれているスポーツのほとんどは2軸理論の方が有利であるといわれています。最近のスポーツ界で活躍しているスーパースター達の多くは この2軸理論に依ってプレーしていると云われています。 人間以外の二足歩行の動物、4つ足の馬やチーターなど、ほとんどの動物は2軸で効率的に歩行し走っています。
それならば これを利用すれば、効率良く、楽に滑れて、早く回れ、良いタイムが出て、レースにも勝てる!という夢のような理論という事になりますが、長年中心軸でスキーをしてきた我々にとってなかなか身体が思うように動かないというのが現実だと思われます。 まだまだ理論先行で指導法、練習方法などが確立されていないのも事実であり、この理論に否定的な方達が居るのも事実です。
そこで私達広報委員会は この「2軸理論」をわかり易く解説するとともに 各方面の意見等々、幅広く掲載っしながら、皆様の新しい技術理論の理解のお役に立ちたいと考えておりますので、どうそご愛読お願い致します。
[2005年1月30日 広報委員会委員長 山田 隆]
第1話:トップデモンストレーター嶺村聖佳
「私は2軸感覚でスキーをやっているのではないかと…」
◆嶺村聖佳 滑りは強靭、でも小柄で華奢な普通の子でした
嶺村講師は板をはずして… |
普通の「行進歩き」です |
こちらは「ナンバ歩き」です |
1軸 外側を蹴って内に |
2軸 ダイレクトに内側です |
11月末の中央研修会も終了し、12月上旬には各ブロックにて研修がはじまりました。長野県車山高原スキー場で開催された、南関東ブロック研修会Bで、派遣デモンストレーターとして参加した、嶺村聖佳さんを取材してみました。一見、小柄で華奢な彼女から、あの迫力のある男勝りの(失礼)滑りはまったく想像することは出来ません。しかし、彼女は何と言っても、その圧倒的な強さで、スキー技術選手権大会で、2002年、2003年、2004年優勝と、日本人女子では史上2人目(宮下紀子)の3連覇を達成したのです。
◆強い子の嶺村聖佳も「2軸感覚」で滑っていた
嶺村聖佳さんに聞いたところ、「トップコントロールでも内足を軸にして外側を動かして、内足でターン弧の調整をするというような方法を使っています。そういう意味では、自分は2軸運動感覚でスキーをやっているのではないかなぁ…と思っています」と、非常に控えめに語ってくれましたが、彼女は「2軸感覚」で滑っていると話してくれたのです。
◆研修班の最初のテーマは「ナンバ歩き」
なんと、嶺村講師が雪上研修の最初に行ったことは、「ナンバ歩き」の体験だったのです。ナンバの歩きとは、出した前足(たとえば左足)に荷重して、この足を軸として、前足(右足)を出し、今度は右足に荷重して軸とするという感じになります。前足に軸があるということは、出した足にしっかり重心を乗せることが重要です。
では、方向を変える場合、通常の歩き方ですと後ろの足で蹴って踏み出すのですが、ナンバ歩きでは、内足を出してそれに重心を乗せていくという感じになります。
参考:DVD 「ナンバ走法」 人間考学研究所、NHK人間講座(DVD付属) 甲野義紀 NHK出版
◆「行進歩き」は1軸(中心軸)運動、「ナンバ歩き」は2軸の運動
これは、いつも皆さんがスキーで使っている外主導と内主導に関係してくるのです。外側で蹴って内に入ってくるものが1軸(中心軸)で、内に軸を置いて外側を動かしていくものが2軸と、私の中での1軸と2軸の違いなんだと思っています。では、何が違うのかと言えば、重心がどちらによって運動を起こすかということだと思います。外側なのか、そのままダイレクトに内側なのかという事です。
◆なぜ「ナンバ歩き」(2軸)に合理性があるのか
あるブロック技術員からの質問がありました。普段人間が生活している時の歩き方は、右足を前に出す時は右手を後ろにということで、行進歩きを行っています。つまり、ナンバ歩きではない歩き方をしているわけですから、当然、行進歩きの方が理にかなっていて、合理的だからだと思います。その観点からは、不自然と思われるナンバ歩き的な運動を、なぜスキーで行う合理性があるのでしょうか?
◆「行進歩き」のひねって戻すという動作は無駄がある
嶺村講師の答えは、わたしは進化したいと思って取り組んでいることなのですが、実際には速く動かなければいけないという状況では、やはり、「行進歩き」的なひねって戻すという動作が、技術が上がれば上がるほど無駄なものになってくると、自分は感じています。「ナンバ歩き」のような、内足に軸を作って行く方が無駄な動きもなく効率的で、トップコントロールはやりやすいと思います。
嶺村聖佳 実際に早く動かなければいけない状況では「ナンバ歩き」 |
◆まとめ
まず整理をしましょう。
1、「行進歩き」は、1軸(中心軸)運動であり、結構無駄な動きが多いらしい
2、「ナンバ歩き」は、2軸運動であり、意外と効率が良いらしい
そして、
1、「行進歩き」は、1軸(中心軸)運動で、体を捻るので、不安定である
2、「ナンバ歩き」は、2軸運動で、
それぞれの足に体重を乗せるので安定している
嶺村聖佳さんは、
1、スキーの1軸(中心軸)運動は、外向傾など捻りを作り、外足に荷重するので、時間とパワーをロスする
2、2軸運動は、
そのまま内足に荷重するので、時間とパワーに無駄がない
嶺村聖佳の滑りは大きく変化しています |
◆おまけ
上の写真は、嶺村聖佳さんの2002年技術選手権と2004年技術選手権の比較です。2002年の時も、文句なく優勝しましたが、この写真の差がおわかりでしょうか。2002年は、お尻が残っており、ヒップファーストとなっています。これは2軸運動ではあるのですが、捻りや外足の使い方など、若干ですが不完全さが感じられます。2004年は、みごとなショルダーファーストで、スタンスの広さも含め、もう完全な内足主導による2軸運動と言って良いでしょう。3連覇の間も、このような大きな進化を遂げていたのです。
(つづく)
[01月30日付 教育広報委員会 上田英之]
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