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◆理論テーマ(その2) イクザミナー委員会 市野聖治委員長


スライド12

スライド13

◆3つのターンの原因と結果

  スライド12は、ターン運動を作り出すための運動、具体的には3つ確認をさせていただきたいと思います。どちらかといいますと、真ん中と下の問題については昨年も説明をしましたが、一番上の問題については説明をしませんでした。「抜重・回旋」「荷重・角付(外)」「荷重・角付(内)」の3つの身体運動なのです。
  「抜重・回旋」は、ウエイトをはずしてスキーを自由にして人間の力で自転させます。「荷重・角付(外)」というのは、ターン外側にスキーが落下していく運動になります。「荷重・角付(内)」は、ターン内側に落下する運動です。
 スライド13で、「荷重・角付(外)」が右側の絵で、水平面に対して、外側に赤い矢印のように移動させる力が生まれます。「荷重・角付(内)」が左側の絵で、水平面に対して内側に角付することによって、ターン内側に移動させる力が生まれるのです。
  スライド12にもどりますが、この3つが我々の運動の種類です。テールコントロールは、「抜重・回旋」と「荷重・角付(外)」という運動で行っています。この辺を昨年きちんと説明しなかったので、具体的には、指導員検定のプルークボーゲンで誤解が生まれましたということを聞いております。緩斜面でテールコントロールのプルークボーゲンをするとスキーが回転を終わり、次の回転に入ろうとする時、テールコントロールであっても、谷側での落下運動をもってスキーを始動させようというイメージを持たせるような説明をしていました。このことは不可能ではないのですが、重力に対する斜面方向のエネルギーは緩斜面では非常に小さくなりますので、そのエネルギーで下へスキーを落としていこうということは、テールコントロールのプルークボーゲンでありながら、一番難しい種目ということになってしまいました。それよりもむしろこの種目は、初心者の指導種目的な位置づけでおいてあるのだと理解するのが自然であるということです。ということで、ターン外側のスキーを落下しやすいところまでは、自分の筋力を使ってスキーを移動させようと考えるのが常識的であろうと思います。
  テールコントロールという種目は、大なり小なり切り替えのところで、抜重・回旋という要素が含まれてきます。
  もうひとつは、「荷重・角付(内)」ですが、これは今まで無かったことを説明したわけです。このことについて、十分理解されていないということです。スキー教程には3行しか載っていませんが、2軸運動、中心軸運動ということについて、後でお話をしたいと思います。教程の編集時点では時期尚早であったと思いましたが、今、その説明が必要になっており、技術の進歩は早いと実感しています。


スライド14

スライド15

◆テールコントロールとトップ&テールコントロールは同じもの

 スライド14ですが、テールコントロール、テール&トップコントロール、トップコントロールの3つは、同等の技術であるという考え方がありました。今のように考えて生きますと、「抜重・回旋」を含むテールコントロールというのは、一番初歩的な技術であり、トップ&テールコントロールとテールコントロールは、同じものであるということです。つまりスライド14の右下の考え方となります。我々が感覚的にイメージしますと、トップ&テールコントロールの上手いものと、トップコントロールは同じではないかと考えますが、これは違うのです。
  トップ&テールコントロールのプルークボーゲンは、プルークターンの基本形という形になってきます。それから、プルークターンというのは、トップコントロール、トップ&テールコントロールの技術を考える時、きわめて応用範囲の広い技術と思います。従来、外スキー主導、両スキー主導、内スキー主導と言ってきましたが、トップ&テールコントロールは外スキー主導から始まって、内スキーを使っていくという意味で、両スキー主導の概念は、外スキー主導で内を使っていくということで、両スキー主導をあまり強調しなくてもよくなってきたと思います。
 スライド15は、テールコントロールは「抜重・回旋」を必ず含むのですが、習熟が進んでいけば「抜重・回旋」が減っていくんだと考えます。当然、スピードが上がれば、相対的水平面から早く落下させることができるので、「抜重・回旋」は少なくなります。「抜重・回旋」は完全な中心軸運動で、身体に中心の仮想線を引いて、そこが回転するような形でで筋力を使っていきます。
  「荷重・角付(外)」は、中心軸感覚的に行われるものから、2軸感覚的に近いものまであります。 重力を利用して、落下エネルギーをフルに利用していくことになれば、外スキー主導の2軸運動的な運動が、中間的に存在すると考えられます。


スライド16

スライド17

◆トップ&テールコントロールは、はっきりとトップコントロールとは違う

 トップ&テールコントロールでは、主要な局面は「荷重・角付(外)」になりますが、はっきりした「抜重・回旋」ではないものの、上下の運動を使ったものから、雪面からスキーを話さないでむしろスキーが内側に落ちていくような、「荷重・角付(内)」のような要素を使って、荷重角付のターンポジションを作り出していくものです。ただし、この時はの「荷重・角付(内)」は、ターンではなく、ターンポジションを作り出すために使われています。この辺のすべりは、トップデモンストレーターの滑りを分析すると、15年前から行われていたことがわかります。
  このことから、トップ&テールコントロールの上手な人が、「荷重・角付(外)」が少なくなるので、これをトップコントロールと感覚的に混同してしまうのです。「荷重・角付(外)」がいくら小さくても、主要な局面が、外側にスキーを移動しようとするエネルギーを使っていますので、はっきりとトップコントロールとは違うのだということをお考えいただきたいと思います。


スライド18

後援中の市野聖治委員長

◆トップコントロールは、他の2つとは別なもの

 スライド17は、トップコントロールの場合です。舵取りのすべての部分が「荷重・角付(内)」で展開されます。最初はニュートラルゾーンを多く使うことが必要になってくるでしょう。そして浅い回転弧のものから深い回転弧のものへ習熟していくのです。いままでのことをまとめたものがスライド18ですが、テールコントロール、トップ&テールコントロールは、「荷重・角付(外)」の大きいものから小さいものへとなります。その意味で、テールコントロールとトップ&テールコントロールは、主要な局面を「荷重・角付(外)」を使うことで、将来的には同じグループになってくる可能性があります。トップコントロールは「荷重・角付(内)」ですから、テールコントロールとトップ&テールコントロールとは、はっきりと一線を引いた別のものとなります。


スライド19

スライド20

◆トップコントロールの山回り

 トップコントロールについての谷回りについては、説明を加えておきたいと思います。山回りについては、昨年も説明いたしました。(スライド19)違和感は無いと思いますが、ニュートラルポジションから、荷重と角付のコントロールから、角付がターン内(山側)に傾けることによってWというエネルギーが出来て、WはW0とWXに分解されます。W0という力は下からの突き上げN0という力で相殺されます。それでWxという力が、山に落下しようとするのですが、山があってそれが出来ません。山から押しかえされますのでNxという力が働きます。つなりWxという力を持ちながらまっすぐ滑らざると得ないのです。そうしますと、トップが浮き、センターより後ろにずれ、引っ張り合う力が同一線上でなくなり、スキーは内側、内側へ移動していくのです。

◆トップコントロールの谷回り

 昨年は説明をしていませんが、谷回り回転です。スライド20の左の絵ですが、ニュートラルポジションから、谷側にあるスキーの谷側にあるエッジが雪面に食い込んでいます。そうしますと、山回りで説明したことと同じように説明が出来ます。重さが2つに分かれて相殺されてWxという力が働きますが、アウトサイドのエッジが雪面に噛んでいますから、Wxのエネルギーを持ちながらまっすぐ進みます。走しますと、重心が移動しトップが浮き、回転モーメントが働きますので、内側に移動していきます。
  問題は、スライド20の真ん中の絵です。この絵を判りやすく説明しますと横滑りです。Wxを雪面からの抵抗で相殺されませんので、ずるずると下に落ちていくという局面を迎えます。トップコントロールの谷回りでは、この横滑りのポジションが長くあると、非常に不安定になります。トップコントロールの谷回りの場合は、右上の絵のニュートラルポジションからストレートに左の絵の状態にくる事が大切になります。ある意味で逆斜滑降というのでしょうか、谷側の噛ませた滑りが回転のエネルギーを生み出します。

  この佐々木明くんの写真は、まさにターン内側の谷側のエッジが噛んで、まっすぐ進み、抵抗Nxが後ろに移動するので、回転が働く、まさにその状態です。これがわれらが誇る佐々木明君のトップコントロールの谷回りです。


佐々木明選手のGSの滑り(競技本部提供)

スライド21

◆2軸と中心軸

  スライド21は、去年もお見せしました。右側の図、真ん中に仮想の軸を置き筋力で対応するのが、中心軸感覚です。それに対して左側の図は、2軸並内側の股関節と外側の股関節を通る運動軸を想定しています。よくナンバ歩きとか、なみあしとか言われていますが、基本的に、軍隊の行進のような中心軸ではなく、右足が前に行った時に右に自分のウエイトが乗るように体全体を調整します。
  ナンバというと、難という字をあて難しい局面という説明する人がいますが、われわれが非常に疲れている時
右足をステップアップしたら右手はひざについてウエイトを乗せていくとご理解ください。いろいろな情報が沢山出ていますので、情報を収集していただければと思います。


スライド22

スライド23

◆馬とチーターの2軸運動

 馬も実はそういう走り方をしています。チーターもです。どうしても、内スキー主導、2軸運動を理解していただくためには、内回りということを理解いただきたいのです。内回りは、歩いていて曲がる時に、内回りは内側の足から曲がります。外回りは外側の足から曲がります。内スキー主導は、当然、内側にのらないといけません。
  その時、馬の走り方が面白いと思いました。馬は、右足を前に出す時、次に左足を揃えるのですが、右足を左足が追い越ししません。これを右前足と言うそうです。右側が内側にあるコーナーであれば、馬は右前足、右側を内側にして走るのです。右側の関節をたたんで走ります。(スライド22)馬がやっているからという訳ではありませんが、かなり合理的に走っていえると言えます。
  スライド23は、チーターです。完全に2軸の運動をしています。内側の脚の使い方、たたみ方に注目です。チーターはかなりハイスピードで走るわけです。

◆感覚的に内側をもっと考えなければいけない

  その意味では、感覚的にも内側というものをもっと考えないといけません。我々は、いままで、外スキー主導、外スキー荷重、外側を向くんだといってきた、そういう感覚から、内側へ意識を持っていっても良いと思うのです。


スライド24

市野委員長と平川副本部長

◆2軸運動感覚というのは、内スキー主導と非常に近い

 2軸運動感覚というのは、内スキー主導と非常に近いのです。昨年からご質問をいただいている中に、内スキー主導と始動とどう違うのか。これは、主導は始動にはおきかえれません。主導はターンの前半だけでなく、全体を内スキーが積極的にリードしているのです。スライドの丸の大きさは荷重の大小を表しています。ターンの前半部分で荷重が内側の脚を短くすることで、荷重が内側にシフトされて角付されてターンが始まります。たしかに荷重が大きいです。ターンが進んで行きますと、ほとんどの場合外側に位置しますから、ただでさえ大変なところで谷足が下になりますので、荷重は外側のスキーのほうに大きくなります。しかし、リードするのは内側の足であり変わらないということなのです。
 2軸運動の特徴は、左右両側の軸が逆方向に動くと考えていただければ判りやすいと思います。内側の脚をたたむ=屈曲外旋といいます。外側の脚はむしろ伸展しています。脚を伸ばす力。これでウエイトが内側に乗り角付が行われターンが始まりますターンが進んできますと、その力に対して、実は、このへんは微妙な表現なのですが、内足の役割を考えると、昨年もお話をしました甲野善紀さんのホームページで、アテネオリンピックの陸上の女性の選手との駐車場での議論があったのですが、そこでは、我々が速く走るためには、前に出した足を消さないと走れないというのです。消えるのではなく、消すのです。消えると消すは意味が違います。容易に考えられるのは、前に出した足が踏ん張ってしまえば、走ることはできません。陸上競技はここ2年ぐらいで大きく変わりました。末續慎吾選手が良い成績をだしたこともあります。
  それまでは、前足をしっかり腿上げしていくんだということでしたが、むしろそうではなく自分の前足は下にたたきつけて、自分のウエイトを支持したらすかさず消す、そのことによって速く走るのだと甲野さんは言っているのだと思います。
 そうかんがえますと、このターンで、内側に荷重してターンが始まりました。しかし内側が頑張り続けますとターンし続けられません。この内足を消すことによって回転を仕上げることが出来ると考えます。どういう事かというと、内足を短くすることでウエイトが内足に乗りました。しかし内足が邪魔でターンがいかないので、消すというイメージが必要となります。甲野善紀さんの言葉では、足裏の垂直乖離とも言っています。スキーで通用するのか試していただきたいのですが、ウエイトを乗っけて支持したとこから、今度は足裏は雪面から持ち上げるような感覚、イメージが出てきます。
  外足よりもうんと山側に足がありますので、内側は大切な仕事をしています。ウエイトが乗っているだけが重要な仕事ではありません。内足主導、内スキー運動は左右の脚がまったく違う力を使っています。そして内スキーを消していく。ですから、甲野善紀さんの言葉なら、内スキーを支点を持ってその支点を消して、はずしていく、これで内スキー主導のターンは起きると考えます。この辺は感覚の話になります。みなさんがこの感覚を得られるのか試してみたいと思います。


スライド25

嶺村聖佳のすべりの変化

◆ショルダーファーストとヒップファースト

 世界的に有名なピッチャーでランディジョンソンがいます。40歳でノーヒットノーランをしました。このピッチャーと松坂とではフォームが全然違います。
 アメリカの大リーグの記事ですが、ランディジョンソンがノーヒットノーランが出来るのは、投げ方としてショルダーファーストと言う投げからです。松坂はヒップファーストです。とう違うのか、ランディジョンソンは前足を消します。松坂は前足を消さないで、そこを支点にし続けて、後ろ足をもっていってダーンと速いボールを投げます。完全に筋力を使ってなげていくタイプと、重力の落下運動を100%使って投げていく違いで、松坂の投法では40歳であのボールは投げられないのではとありました。

 スライド25ですが、ショルダーファースト、ヒップファーストということでたまたまみつけたものです。2輪車の技術は全く判りませんが、フォームだけをみれば、スキーのものと同じだと考えます。
  松坂は、ヒップファーストで速いボールを投げてるのですがあまり効率はよくない。それに対してランディジョンソンはショルダーファーストとしましたが、技術選手権の進化も見ていただきたい。2002年から、2004年の間にほとんどのトップ選手が進化しています。


スライド27

2軸の説明にも力が入ります

◆重心軸と運動軸の混同に注意

 2軸の話をしましたが、重心軸と運動軸を混同しますと話が複雑になります。ですからターン後半に外スキーに荷重があるというのは、重心軸の話です。運動軸は内側がリードしているという話です。

◆2軸では体幹部が重要

 今のようなことを考えますと、体幹部を重要視することはわれわれは骨盤、股関節を重要視してきました、股関節が十分に使えるためには骨盤の前傾が必要だ、などです。
 この体幹部全体をコントロールするためには、ここだけではなく、肩甲骨というものが非常に重要な着眼点と いわれています。昔の中国で言う、股関節を結ぶラインを下丹田(かたんでん)、上丹田(じょうたんでん)といわれるところで、上半身がリラックスして肩甲骨が自由に保たれているということが、こういった2軸の内スキー主導を完成させるためにも重要だと認識しています。その意味で、場合によっては、ターン外側の肩甲骨が、ターン内側のスキーの上に位置されていることが認識されていることが必要かと思います。新しいことで、感覚的には表現が上手く出来ませんが、いずれにしても体幹部が重要な意味を持つわけです。

◆2軸の簡単な例

 2軸の運動につきましては、初めてお話をするわけで、まだ十分、理解いただいていると思えませんので、最後にわかりやすい例をお話をさせていただきたいと思います。
  高柳委員長に協力していただきます。私の前に立ってください、両手は下げたままで。私が右手で、高柳さんの左肩を押します。では失礼します。どうでしょうか?それでは、私が左手を上に上げて、高柳さんの左肩を再度押させていただきます。2回も押させてもらい失礼しました。(笑い)
  後の押したほうが、しっかりと押せていることがわると思います。つまり、最初のものが中心軸、後のものが2軸なのです。中心軸では、軸により体が回転して、右手で押すのですが左肩は後ろに下がり、力が分散してしまいます。これに対して、右手を上げて2軸にしますと、体が回転しなくなり、しっかりとロス無く右手で押すことができます。とても簡単な例ですが、ご理解いただければと思います。
(おわり)


中央研修会が開催される
スキー技術論「スキーの壁」 その1 科学と感覚、机上の空論 市野聖治委員長
◆スキー技術論「スキーの壁」 その2 原因と結果、2軸理論 市野聖治委員長
チルドレン・ジュニアーの指導について 競技本部 片桐幹夫氏
スキー、スノーボード実技研修、テレマーク体験

 

 

[11月23日付 教育広報委員会 上田英之]

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