新教程解説 Part3(技術指導の内容)平川仁彦 副本部長
新教程の基本的なコンセプトは、まず、目的は多様化し手段は進化するとといった、スキー指導は生き物であるということがあります。つぎに、環境の変化です。「場」「物」「人」の変化に加え「情報」が加わります。最後は、積極的な、情報と知識の発信が求められているということなのです。(教程8ページ〜9ページ)
執筆者の平川理事
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教程のページを捲る伝達は不要
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早く皆さんにお見せしたい
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スキー指導は変化している
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■技術指導の体系はあくまで上達の道筋を示すもので、初歩から上級への技術的な展開になる
楽しいスキーが目的とすれば、技術習得を目的とした指導は、手段となります。技術習得の道筋の体系化ですが、体系図、展開図はあえて省いています。技術体系という表現もやめています。
基本的な考え方として、技術習得を目的とした上達の道筋をしめすもので、初級から上級への道筋を示すものになり、したがって体系図にしますと、階段方式が出来上がってしまいます。
新教程では、階段ではなく、パラシュート、梯子という話も出ていますが、一応は、長期計画や、初心者が上級者になるという技術的な段階を示すことが必要であるということで、段階ごとに図に示してありますが、基本技術と応用技術のみとしてあります。
■体系は、技術の順序性を示す。従って、検定など評価の基準として役立つが、指導は必ずしも順序に捕われる必要はない
ただし、検定などでは体系が役立ってきます。到達度、習熟度というものをどのへんの基準にあるのかを照らし合わせることで体系が役立ちます。 研修会の場面で混乱や論議が出てくることを期待しています。伝達ではなく、考えるという習慣も期待します。実際は、体系に基づくプログラムしか伝達されなこのいところに大きな問題があります。
一般のスキーヤーが現実的な条件の中で練習するということであり、1日から長くても3日間ぐらいの短期間であるわけです。これを長期計画で対応したのでは、何をやっているのかさっぱりわからないということになります。
その意味では、その人の運動スタイルを評価、見極めて、テールコントロールなのか、トップコントロールへもっていくのか、指導プログラムそのものも多様化していると理解してください。したがっってこの教程のページを捲るような伝達講習は不要です。
昨シーズン、インタースキーがありました。若干、教程のベースになるようなこと、具体的にはワークショップで新しい指導展開がだされました。それは、ターンの原因となるスキーコントロールの仕方に着目したことです。この内容は、絶対伝えていただきたいと思っています。
■ターンの原因となるスキーコントロールの仕方に着目
一般スキーヤの相対スピードの次元から、また運動技能の習熟段階から、主要課題を「原因」にもとめます。
■相対スピードの大まかな目安
時速
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過程
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備考
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5K
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導入
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歩く速度
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10〜20K
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組立
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クロスカントリー選手、マラソン選手
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30K
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応用
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ひとつのパターン運動系を持って滑る
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40K以上
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発展
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エキスパートの人たちが楽しめる
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それ以上
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競技
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競技レーサー |
導入から応用に掛けては、「如何にターンするか」が課題になり、 発展になると「外力への対応」が課題になります。教程のPart3(46ページ)の上達の様子は、旧教程と変わっておりませんが、一部表現を変えています。検定委員会のほうでは、これを評価基準として考えているということです。
つねに生徒を評価してフィードバックしていくということになります。
具体的には、スキーコントロールの仕方としえは、3態になるわけですが、 何々ターンという言葉は極力減らしています。カービング、スキッディングという言葉も一部出ているだけで、スタイルを求めるということではなくて、原則的なパターンを3つ要領としてあげていると理解いただきたい。
■操作における「スキーの主導性」
原因となるスキーコントロールをするときに、主に、重みをスキーに乗せていく、どっちのスキーに主体性があるのかという意味合いです。
◆テールコントロール
外スキー主導が発展段階まで一貫しています。 一般的には、抜重と回旋ということです。伝統的な技術で、雪面との接触が軽い、あるいは空中になります。これは、発展形になればなるほど、おそらく将来は扱わなくても良いというような気がしています。
◆トップ&テールコントロール
運動するわずかな時間差ですが、順序性から言うと、トップからターンを起こして行きます。外スキー主導の段階から、両スキー主導にかわるという特徴があります。プルークターンの段階から。縦滑りの要素がでてきます。
◆トップコントロール 誤ったカービングを正しくする
外スキー主導から両スキー主導、内スキー主導で完成段階ですが、外スキー主導がはたして必要かか、ショーとカービングなどでは、完全に内主導が最初から入っています。内主導から入って、結果的にターン仕上げ舵取りの部分で外や両足を使うということになります。また未知数的なところで研究課題です。
恐れているのは、カービング、日本のスキーヤーが全部、ココへ行ってしまいます。我々の考えは、誤ったカービングコントロールをやっているのを正しい使い方に変えなければいけないということです。逆に、内スキー荷重の方から、両スキーや外スキーに活用の幅を広げていくような形もいいかなというケースもとっています。
トップコントロールで教えていけば、テールコントロール、トップ&テールコントロールの場合のようなニュートラルを教えて、片プルークを教えて等の構造を組み立てていく段階がいらないということです。
最初からパラレルでダイレクトにターンの条件を作る仕事をして、あとはバランスをということです。パラレルターンを習得するということをあんまり考えなくて、遊びながら、雪がその人に教えてくれることです。
現実的には、技能レベルが低いと、内主導をやってもスキッディングが、あるいはプルークの形がでてきます。しかし、指導の流れではプルークを意識させることではなく、スキッドを教えることではなく、ということです。
特にテクニカルプログラムのようなものを、トップコントロールでは沢山バリエーションとして持っていると、楽しいレッスンの可能性が出てきます。
■上達による区分の融合 カービング=ブレーキの効かない暴走スキーヤーが出てくる
応用過程では、テールコントロールとトップ&テールコントロールは共通点は多くなります。トップコントロールとは違いますが、縦滑りの共通性が出てきます。カービング的な要素がでてきて、勘違いになるのですが、
この勘違いはかまわないと考えています。
カービングスタイルに走りすぎてしまう=いわゆるブレーキの効かない暴走スキーヤーがでてくるので、トップコントロールという言葉に代えて、あえてカービングは使わないようにしました。
トップコントロールがレーシングテクニックということではなくて、悪雪などの重い雪の中斜面・緩斜面を技術レベルがそう高くなくても、スイスイと回れるという有意点がありますので、そういうところを捕らえてください。
◆運動の形体的な変化、質的な変化 プルークはルーズな扱いで
従来と変えている点は、上達とスキースタンスの変化を捉えています。体系の中での要点は、従来と変わっていませんが、大きく変えているのは、従来、基本過程でやった直滑降のバリエーション、プルーク、プルークのバリエーションからボーゲンという道筋を大幅にカットしております。
プルークは雪上を移動する中での必要技術ですが、ターンの組み立てで両方向に相反する動きをとる運動は最初から取らないほうが良いと考えます。したがって、プルークボーゲンはルーズな扱いで、はやく同一方向へ外スキーも内スキーも操作されるような運動要素を基盤にして、どーっと、一気にターンへいきましょうという考え方となります。従来から大きく変わってきているところです。
◆基礎過程(導入段階)
場所の選び方は良いか、この練習の狙いは、この斜面ではどんなことをやればいいのかが重要です。どこで何をどのようなことをやるという実際例をシミュレーションしていただくことが必要です。
◆基礎過程(組み立て) 摺足と滑走 パラレルポジションとスタンス
基本動作とポジション。すり足と滑走は、スキーでは重心移動のパターンとして重要な意味を持っています。
骨盤の前傾角度をきちんと取っていく動きになります。平面での落下という表現もあります。
構えの問題では、股関節の可動域を持つ構え、いい姿勢は骨盤が少し前傾しています。バイオメカにクスの用語の部分でも(138ページ)赤い線が入っていますが、日本のスキーヤーは起こして滑るという訓練が行われているように思われます。個人的には、プルーク系統のバリエーションのやりすぎと考えております。筋肉の反射が出てくるようなポジション、動作のベースになるポジション、それを覚えるための基礎過程の練習があります。動きの無いところでこの構えなどとやってしまい、それを雪上でその構えを出せという指導は誤りやすい。
原因となるスキーコントロールの様式としては3態あります。ヒントととしては、方向変換のところ、とまりかたのところで持ち出しています。内回りと外回りの、身体のつかいかたが大きなヒントになります。
結果についてですが、内傾という言葉の意味。内傾、外傾は相反する言葉に聞こえますが、すべて外傾で、そのなかの、胸とか骨盤がどうなっているのかということで語っています。原因としての上体の構え、動作と区分して理解する必要があります。内傾とか外傾とか作りに行く動作はスキーコントロールの原因にはなりませんと言うことです。
◆応用過程
どういうパターンがどういう斜面に適している。どういうスピードがどういう対称に適しているということを実践を交えながら、状況条件と技法の適合となります。
◆発展過程
ジャンル別の展開、コブ斜面とかシチエーション、カービングレースを目指す世界。若い人がカービング、技術選のようなデモンストレーションスキーなど。年配の方はクルージング、快適、安心、天気、仲間で感動を得る。それぞれ専門的な課程に入っていきます。基本パターン、基本的なパラレルターンをどういう風に変化活用すると、発展系の状況にあった活用が出てくるのか確認していただきたい。補助的なプログラムはいろいろなアイデアがでてくると思いますが、ねらい、どこで、なにを、どのようにやるかと言う観点で確認してください。
■新教程について
新しい滑り方を出したということではありません。Part1、Part2の技術論、Part1で言っている指導活動全体の新しいコンセプト、実技の場面では、実際の経験・量はみなさんありますから、滑り方の高い質を求めていくような伝達講習ではなく、技術をどう活用して、学習指導の全体的な組み立て、商品の生産技術、製品力をどう高めることを、実施にディスカッションしていただくことが狙いになります。
[10月121日付 教育広報委員会 上田英之]
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