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【発明の名称】 |
芳香族―脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法 |
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【氏名】長島 広光 【氏名】小野澤 隆 【氏名】佐々木 誠 【氏名】角田 隆志 【氏名】野村 俊広 |
【課題】光学材料等として有用な、優れた色相、耐熱安定性を有する芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートを製造する。
【解決手段】芳香族炭酸ジエステルと少なくとも1種の脂環構造を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物及び少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下、溶融重合せしめる芳香族―脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法において、芳香族炭酸ジエステル、芳香族ジヒドロキシ化合物及びアルカリ金属またはアルカリ土類金属触媒を混合し、エステル交換反応の進行により芳香族ジヒドロキシ化合物を芳香族炭酸ジエステルに溶解せしめた混合物を脂環構造を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物と重合させることを特徴とする芳香族―脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 芳香族炭酸ジエステルと少なくとも1種の脂環構造を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物及び少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下、溶融重合せしめる芳香族―脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法において、芳香族炭酸ジエステル、芳香族ジヒドロキシ化合物及びアルカリ金属またはアルカリ土類金属触媒を混合し、エステル交換反応の進行により芳香族ジヒドロキシ化合物を芳香族炭酸ジエステルに溶解せしめた混合物を脂環構造を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物と重合させることを特徴とする芳香族―脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。 【請求項2】 芳香族ジヒドロキシ化合物を溶解させる際の温度が、80℃以上170℃以下である、請求項1記載の芳香族―脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法。 【請求項3】 少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物が1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンである、請求項1〜2のいずれか1項に記載の芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造法。 【請求項4】 芳香族炭酸ジエステルがジフェニルカーボネートである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、色相、耐熱安定性に優れた芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネート樹脂のエステル交換法による製造法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BPAと記す)等の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとを酸結合剤の存在下、界面重合させて得られるポリカーボネートは、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性にも優れていることから、光学材料として各種レンズ、プリズム、光ディスク基板などに利用されている。しかしながら、芳香族ジヒドロキシ化合物としてBPAだけを用いてなるポリカーボネートでは、光弾性定数が大きく、溶融流動性が比較的悪いために成形品の複屈折が大きくなり、また屈折率は1.58と高いものの分散の程度を表すアッベ数が30と低く、屈折率とアッベ数とのバランスが悪いため、広く用いられるには十分な性能を有していないという欠点がある。このようなBPA−ポリカーボネートの欠点を解決する目的で、BPAとトリシクロ(5.2.1.02,6 )デカンジメタノール(以下、TCDDMと記す)の共重合ポリカーボネートはアッベ数と屈折率のバランスが良いことが報告されており、光記録材料や光学レンズ等の用途に十分な性能を有している(特開昭64−66234号公報)。しかしながら、この共重合ポリカーボネートの製造方法は、(1)BPAのビスクロロホルメートとTCDDMあるいはTCDDM及びBPAとを重縮合する、(2)TCDDMのビスクロロホルメートとBPAあるいはBPA及びTCDDMとを重縮合する、(3)BPAのビスクロロホルメートとTCDDMのビスクロロホルメートとの混合物とBPA及び/又はTCDDMとを重縮合する方法が述べられているにすぎない。このような、脂肪族ジヒドロキシ化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物の共重合体の製造において、ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメートを製造し、その後ジヒドロキシ化合物と重縮合させるという2段階の反応では、製造工程も複雑になり、その結果として製造コストも高くなる欠点があった。ポリカーボネートの製造方法としては、溶液法(クロルホルメート法)以外に、炭酸ジエステルとジヒドロキシ化合物とを溶融状態で重縮合させるエステル交換法が知られている。しかし、この製造方法ではモノマーおよびポリマーが比較的高温で長時間保たれるため、着色しやすく、また、ポリマー中に残留する触媒がポリマー物性を低下させる原因となり、特に、脂肪族構造を含有するポリカーボネートではその傾向が顕著である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、加熱処理を行っても分子量低下による機械的物性低下がなく、且つ高い透明性と良好な色相を維持する熱安定性の優れたエステル交換法芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法を提供することを目的としている。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記事情に鑑み鋭意検討を行った結果、芳香族炭酸ジエステルおよびジヒドロキシ化合物を混合し、ジヒドロキシ化合物を芳香族炭酸ジエステルに溶解せしめた混合物を脂環構造を有するジヒドロキシ化合物と重合させることによって、色相、熱安定性の優れた芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートが製造できることを見いだした。 【0005】すなわち本発明は、芳香族炭酸ジエステルと少なくとも1種の脂環構造を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物及び少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物とをエステル交換触媒の存在下、溶融重合せしめる芳香族―脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法において、芳香族炭酸ジエステル、芳香族ジヒドロキシ化合物及びアルカリ金属またはアルカリ土類金属触媒を混合し、エステル交換反応の進行により芳香族ジヒドロキシ化合物を芳香族炭酸ジエステルに溶解せしめた混合物を脂環構造を有する脂肪族ジヒドロキシ化合物と重合させることを特徴とする芳香族―脂肪族共重合ポリカーボネートの製造方法を提供するものである。 【0006】 【発明の実施の形態】本発明では芳香族炭酸ジエステルと少なくとも1種の脂環構造を有するジヒドロキシ化合物及び少なくとも1種の芳香族ジヒドロキシ化合物とをエステル交換反応させて芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートを製造する。 【0007】[炭酸ジエステル]本発明に用いられる芳香族炭酸ジエステルは、下記の一般式(I)で表される化合物である。 【0008】 【化1】
【0009】(式中Arは1価の芳香族基であり、Arは同一であっても異なっていてもよい。) 【0010】上記一般式(I)で表される芳香族炭酸ジエステルは、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ジキシリルカーボネート、ビスプロピルフェニルカーボネート、ビスオクチルフェニルカーボネート、ビスノニルフェニルカーボネート、ビスメトキシフェニルカーボネート、ビスエトキシフェニルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート等が例示されるが、特に好ましくはジフェニルカーボネートが挙げられ、塩素含有量は、1ppm以下であることが好ましい。芳香族炭酸ジエステルは、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して0.97〜1.2モルの量で用いられることが好ましく、特に好ましくは0.99〜1.10モルの量である。 【0011】[脂環構造を有するジヒドロキシ化合物]本発明の反応に用いられる脂環構造を有するジヒドロキシ化合物としては、例えば、トリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノール、β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン−3,9−ジエタノール(スピログリコール)、ペンタシクロ[9.2.1.13,9.02,10.04,8]ペンタデカンジメタノール、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノールあるいは1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらのうちで、特にトリシクロ(5.2.1.02,6)デカンジメタノール(以下TCDDMと略す)が好ましい。上記脂環構造を有するジヒドロキシ化合物は、不純物として含まれるカルボニル基含有量がKOH換算で1.0mg/g以下、好ましくは0.5mg、さらに好ましくは0.1mg以下であるものが用いられる。また、塩素や金属イオンの含有量がそれぞれ1ppm以下のものが好ましい。 【0012】[芳香族ジヒドロキシ化合物]本発明の反応に用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は下記一般式(II)で表される化合物である。 【0013】 【化2】
【0014】(上記式(II)において、Xは【化3】
【0015】であり、ここに、R3およびR4は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基あるいはフェニル基であり、R3とR4が結合し環を形成していてもよい。R1とR2は水素原子または炭素数1〜10のアルキル基またはハロゲンであり、R1とR2は同じでも異なっていてもよい。また、mおよびnは置換基数を表し0〜4の整数である。) 【0016】上記一般式(II)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビスフェノール類;4,4’−ジヒドロキシジビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のビフェノール類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン等が挙げられる。これらのうちで、特に1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下、BPZと記す)が好ましい。また、前記式(II)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を2種類以上併用して用いる事もできる。 【0017】[触媒]本発明では、触媒としてアルカリ金属化合物、或いはアルカリ土類金属化合物が用いられる。このような化合物としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属等の有機酸塩類、無機塩類、酸化物、水酸化物、水素化物あるいはアルコキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。 【0018】アルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が挙げられる。 【0019】また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸水素バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸ストロンチウム、酢酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、フェニルリン酸マグネシウム等が挙げられる。 【0020】これらの触媒は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して10-9〜10-3モル、好ましくは10-7〜10-5モルの量で用いられる。これより少ないと溶解速度が極端に遅くなり、これより多いと生成したポリマーの分子量が低下し色相が悪化する。 【0021】芳香族ジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルに溶解させるための溶解槽は、垂直回転軸と撹拌翼を備えた一般的な撹拌装置を有する竪型撹拌槽を使用できる。溶解槽の材質は、加熱溶融時に鉄等が溶出しなければ良く、少なくとも接液部を鉄製分(鉄として。以下、「鉄製分」の含量は鉄換算の値を意味する)20重量%以下、好ましくは、10重量%以下さらに好ましくは5重量%以下とする。例えば、ニッケル、ジルコニウム、チタン、タンタル、これらの合金、ハステロイがある。電解研磨などの表面処理を施すことによってSUS―304、SUS−316等のステンレス鋼を用いることもできる。 【0022】芳香族ジヒドロキシ化合物を炭酸ジエステルに溶解させるための溶解槽は、実質的に酸素の存在しない窒素雰囲気化に保つことが好ましい。芳香族ジヒドロキシ化合物の投入時に混入する可能性のある酸素は、炭酸ジエステルと混合後、窒素の吹き込み等で除去できる。 【0023】溶解槽に投入される炭酸ジエステルは、液体でも固体でも良い。液体の場合、例えば融点以上に保温された炭酸ジエステルを配管を通じて溶解槽に送液することにより投入できる。芳香族ジヒドロキシ化合物は粉末状固体で溶解槽に投入する。投入される芳香族ジヒドロキシ化合物の粒度は特に規定されないが、投入および溶解の容易さから、0.005〜2mm程度が好ましい。溶解槽への投入は、炭酸ジエステルを先に行い、炭酸ジエステルが溶融状態になってから、触媒および芳香族ジヒドロキシ化合物を順に、または同時に行うのが好ましい。 【0024】触媒は、原料混合時に固体または液体または溶液として加えることができる。溶解時に触媒を加えることによって一部エステル交換反応が進行し、生成した芳香族ヒドロキシ化合物が芳香族ジヒドロキシ化合物の溶解を促進するため、より短時間で溶解でき混合した原料の熱履歴を少なくできる。 【0025】本発明において、上記の特定の化合物と共にその物性を損なわない範囲で目的に応じ、各種公知の酸化防止剤を溶解槽に加えた後芳香族ジヒドロキシ化合物を溶解することが望ましい。 【0026】酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−メチル−4−エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−メチル−4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ,ジノニルフェニル)ホスファイト、ビス(モノノニルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4−t−ブチル−6−メチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジメチルフェニル)ヘキシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ヘキシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ステアリルホスファイト等のホスファイト化合物、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス[2−メチル−4−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]ブタン等のヒンダードフェノール系化合物が挙げられる。これらは、単独、或いは2種以上併用して用いてもよい。 【0027】これらの酸化防止剤の添加量は、芳香族ヒドロキシ化合物100重量部に対して0.001〜0.1重量部、好ましくは、0.01〜0.08重量部、さらに好ましくは、0.01〜0.05重量であり、これより少ないと所望の効果が得られず、過剰では樹脂の耐熱物性、機械的物性が低下し適当ではない。 【0028】溶解槽中の温度は、好ましくは80〜170℃、より好ましくは100〜160℃である。この温度範囲より低いと芳香族ヒドロキシ化合物の溶解速度が極端に遅くなり、高いとこれを用いて重合したポリマーの着色が顕著となる。 【0029】炭酸ジエステルに芳香族ジヒドロキシ化合物を溶解すると、アルカリ金属またはアルカリ土類金属触媒の存在により、エステル交換反応が進行し、炭酸ジエステルと芳香族ジヒドロキシ化合物の反応物が生成するが、やがて平衡状態となる。平衡状態に達する時間は、温度、炭酸ジエステル、芳香族ジヒドロキシ化合物の種類、触媒の量、種類によって異なる。例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネート、芳香族ジヒドロキシ化合物としてBPZを用い、触媒として炭酸水素ナトリウムをBPZ100重量部に対して0.0002重量部を添加し、温度160℃とした場合、1時間でほぼ平衡に達する。触媒を適量加えることでBPZ(融点179℃)よりジフェニルカーボネートに対する溶解度が高いBPZとジフェニルカーボネートに対するの反応物を生成し、比較的低温(155℃)でかつ短時間(1時間)でBPZをジフェニルカーボネートに溶解することができる。 【0030】本発明に関わるエステル交換反応は、公知の溶融重合法により行うことができる。すなわち、前記の原料、および触媒を用いて、加熱下に常圧または減圧下にエステル交換反応により副生物を除去しながら溶融重合を行うものである。反応は、一般には二段以上の多段工程で実施される。 【0031】具体的には、第一段目の反応を120〜260℃、好ましくは180〜240℃の温度で0〜5時間、好ましくは0.5〜3時間反応させる。次いで反応系の減圧度を上げながら反応温度を高めて芳香族ジヒドロキシ化合物と脂肪族ジヒドロキシ化合物と芳香族炭酸ジエステルとの反応を行い、最終的には133Pa以下の減圧下、200〜300℃の温度で重縮合反応を行う。このような反応は、連続式、バッチ式のいずれでもよい。上記の反応を行うに際して用いられる反応装置は、槽型、押出機型、或いはパドル翼、格子翼、メガネ翼等、表面更新性の優れた撹拌翼を備えた横型攪拌装置が使われる。 【0032】 【実施例】以下、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらによって何らの制限を受けるものではない。 【0033】実施例等における溶液色相(YI値)の測定法は以下の通りである。サンプル8.0gを塩化メチレン80mlに溶解し、5.0cm石英ガラスセルを用いて測定した。色差計は日本電色工業(株)製スペクトロカラーメーターSE−2000を使用した。塩化メチレンのみによるブランク測定値は0.2であった。 【0034】実施例1実質的に酸素の存在しない窒素ガス雰囲気下、130℃に保温された混合槽にジフェニルカーボネートとBPZとを一定比率(ジフェニルカーボネート/BPZ(モル比)=2.02)になるように、まず130℃に保温されたジフェニルカーボネートの液体を混合槽に送液し、撹拌開始後BPZ(粉末)を投入した。BPZ投入時にHP136(BPZ100重量部に対し0.04重量部)と炭酸水素ナトリウム(触媒、BPZ100重量部に対し0.000094重量部)をBPZ粉末と混合しながら添加した。混合槽の内部温度を155℃まで上昇し、1時間撹拌して均一化した混合物を130℃に保温されたバッファー槽に送液した。実質的に酸素の存在しない窒素ガス雰囲気下、第1竪型攪拌重合槽(反応条件:13332Pa、205℃、攪拌速度160rpm)での原料モル比(ジフェニルカーボネート/(BPZ+TCDDM))が1.01となるように、バッファー槽のジフェニルカーボネートとBPZの溶融混合物を54.3kg/hの流量で、第1重合槽に連続的に供給し、また、同時にTCDDMを15.2kg/hの流量で連続的に供給し、第1重合槽での平均滞留時間が60分となるように槽底部のポリマー排出ラインに設けられたバルブ開度を制御しつつ液面レベルを一定に保った。槽底より排出された重合液(プレポリマー)は、引き続き第2、第3、第4の竪型重合槽並びに第5の横型重合槽(日立製作所(株)製 メガネ翼重合機(商品名))に逐次連続供給された。平均滞留時間は第2〜第4の竪型重合槽が各60分、第5横型重合槽は90分となるように液面レベルを制御し、また同時に副生するフェノールの留去も行った。第2〜第5重合槽各槽の重合条件はそれぞれ、第2重合槽(220℃、2000Pa、攪拌速度160rpm)、第3重合槽(230℃、40Pa、攪拌速度60rpm)、第4重合槽(240℃、40Pa、攪拌速度20rpm)、第5横型重合槽(245℃、40Pa、攪拌速度5rpm)とした。第5横型重合槽より排出されたポリマーは溶融状態のまま連続的に3ベント式2軸押出機(46mm2軸押出機(株)神戸製鋼所製)に導入され、樹脂供給口の最も近いベント口の手前で後述する添加剤をマスターバッチの形態で樹脂に対し2wt%の割合でサイドフィードコンパクターにより供給し、各ベントにて脱揮後、水冷しペレット化した。マスターバッチの組成は、ユーピロンS−3000(商品名;三菱ガス化学(株)製ポリカーボネート)のフレーク状のものをベースとし、p−トルエンスルホン酸ブチル(東京化成工業(株)製;以下pTSBという)の添加量が炭酸水素ナトリウムの中和当量の9倍量[27μmol/mol(BPZとTCDDMの合計モルに対して)]、及び芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネート100重量部に対して、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン(商品名HP−136;チバスペシャリティケミカルズ(株)製)が0.01重量部、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]](旭電化工業(株)製、商品名 LA−31)が0.01重量部、調色剤(三菱化学(株)製、商品名 ダイヤレジンBlue-G)が0.00003重量部となるように調製した。こうして得られたポリマーの溶液色相(YI)は1.1〜1.4であった。 【0035】実施例2触媒を酢酸カルシウム(BPZ100重量部に対し0.000197重量部)に変更し、加熱開始から5時間後に送液した以外は実施例1と同様に行った。その結果、得られたポリマーの溶液色相(YI)は1.2〜1.4であった。 【0036】 【発明の効果】本発明によれば、優れた色相、耐熱安定性を有する芳香族−脂肪族共重合ポリカーボネートを製造することができ、本発明は工業的にも極めて有効な方法である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004466 【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
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| 【出願日】 |
平成13年2月26日(2001.2.26) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100066692 【弁理士】 【氏名又は名称】浅村 皓 (外3名)
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| 【公開番号】 |
特開2002−249576(P2002−249576A) |
| 【公開日】 |
平成14年9月6日(2002.9.6) |
| 【出願番号】 |
特願2001−50460(P2001−50460) |
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