がん患者らから摘出した腎臓を第三者に移植する「病気腎移植」をめぐり、備前市立吉永病院(同市吉永町吉永中)で、がんではない腎臓を摘出する不要な手術を施されたとして、岡山県内の女性(77)が病院を運営する同市に約3700万円の損害賠償を求めた訴訟は、岡山地裁(古田孝夫裁判長)で10日、市側が女性に1700万円を支払うことを条件に和解が成立した。
原告代理人の柴田義朗弁護士(愛知県弁護士会)によると、病気腎移植でドナー(臓器提供者)から腎臓を摘出した病院側の過失を問う訴訟は例がなく、和解も初めて。
柴田弁護士の説明では、和解協議には病院関係者や原告の家族を含め約10人が出席し、市側が家族に「迷惑をお掛けした」と謝罪。閉廷後の会見で同弁護士は「移植はドナーの人権と安全を尊重して行うべき。同様に苦しむ患者が出ないよう、医療関係者には十分な説明と適切な治療をしてほしい」とする家族のコメントを読み上げた。
一方、市は「訴訟が長期にわたったことなどで患者に多大な心労をかけ、遺憾の意を表したい」とする吉村武司市長のコメントを発表。和解理由については「これ以上裁判が長期化すれば市だけでなく、原告にも多大な負担となる」とした。