メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

トピックス
このエントリーをはてなブックマークに追加
mixiチェック
水俣条約採択―水銀禍の克服に向けて

水銀の利用や排出を規制する「水銀に関する水俣条約」が、きのう熊本市で採択された。水俣病の公式確認から57年。水銀中毒の恐ろしさを訴え続けた患者たちが世界を動かし、ここま[記事全文]

原発防災訓練―事後検証に力を入れよ

原発事故を想定した総合防災訓練がきょうから、鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発で2日間にわたり実施される。国や電力会社、地元の自治体や住民が参加する大規模な訓練は福[記事全文]

水俣条約採択―水銀禍の克服に向けて

 水銀の利用や排出を規制する「水銀に関する水俣条約」が、きのう熊本市で採択された。

 水俣病の公式確認から57年。水銀中毒の恐ろしさを訴え続けた患者たちが世界を動かし、ここまでこぎ着けた。

 メチル水銀を含んだ工場排水による公害を世界が知ったのは1972年だった。第1回国連人間環境会議の会場前で、当時15歳の胎児性患者、坂本しのぶさん(57)が体を張って被害を訴えた。

 会議をきっかけに国連環境計画(UNEP)が生まれ、41年の時を経て、今回の水俣条約採択へとつながった。

 条約には水銀を含む製品の製造、輸出入の原則禁止、水銀鉱山の新規開発禁止などの規制をいくつも盛り込んだ。

 小規模な金採掘での水銀使用廃絶の期限がないなど、今後の課題も残しているが、それでも、多国間規制に踏み出した意義は大きい。

 世界最大の水銀利用、排出国である中国と、化学物質や廃棄物に関する条約に慎重な態度をとってきた米国も、交渉に参加した。両国が批准すれば被害の予防に役立つだろう。

 日本では確かに、体温計や薬品などの多くが水銀を使わなくなった。化学工場の製造ラインからも、水銀はほとんど排除された。だが、世界に目を転じると、汚染は深刻である。

 UNEPによると、2010年には1960トンの水銀が世界中の大気中に排出された。小規模な金採掘、石炭火力発電所、非鉄金属の生産工程で、全排出源の72%を占める。半分がアジアで、特に中国が多い。

 これらは大気から川や土壌を経て海へと移動する。そして、食物連鎖でクジラや魚に蓄積されていく。UNEPは「水銀は分解されずに全世界を循環している」と危惧する。

 日本でも水俣病が終わったわけではない。

 水俣病発生地域の周辺に未確認の患者がどれだけいるのか、政府が実態を調べたことは一度もない。4月の最高裁判決が指摘した認定制度の運用不備、それに伴う現行の救済制度の見直しなども、手つかずの状態が続いている。

 なのに安倍晋三首相は、外交会議へのメッセージで「水銀による被害と、その克服を経た我々」と発言した。水俣病患者から、「まだ克服できていない」と批判が相次いだ。

 国内で残る問題にきちんと向き合ってこそ、世界の手本になれる。克服したと世界に胸を張るのは早過ぎる。

検索フォーム

原発防災訓練―事後検証に力を入れよ

 原発事故を想定した総合防災訓練がきょうから、鹿児島県の九州電力川内(せんだい)原発で2日間にわたり実施される。

 国や電力会社、地元の自治体や住民が参加する大規模な訓練は福島第一原発の事故以来、初めてだ。訓練のもつ意味合いは事故前とはまったく異なる。

 国主体の原発防災訓練は震災以前からあった。08年には福島第一でも行われている。だが、「大事故は起きない」ことが大前提の体制では、形式的な催しというのが実態だった。

 こうした反省に立ち、今回からは、できるだけ実際の事故に近い状況をつくっての「実時間実働」型の訓練に変える。

 原発が立地する薩摩川内市だけでなく、新たに防災対策を講じる対象となった周囲30キロ圏内の自治体も参加する。

 地震で原子炉が自動停止、電源や冷却機能が失われ、炉心が損傷して放射能が敷地外に漏れるという想定だ。詳細を知るのは一部のスタッフだけで、訓練に参加する多くの人は変化する状況の中で対応を迫られる。

 もう二度と福島のような事故を起こすわけにはいかない。本来なら、できるだけ早く原発をなくすことが望ましい。

 ただ、稼働をやめても廃炉が完了するまで放射能が拡散するリスクはゼロにならないし、安倍政権は一定の原発を維持する姿勢だ。であればなおのこと、実践的な訓練を重ね、問題点を洗い出す作業が欠かせない。

 訓練となると、失敗せずにやり遂げることが目標になりがちだ。しかし、私たちはすでに現実の事故がいかに過酷で、想定外の事象が次々に起きるかを知っている。むしろ、ひとつもミスのないような訓練はシナリオが甘すぎるとみるべきだろう。

 訓練の眼目は、事後の検証にある。できなかったことをあげつらい減点評価するのではなく、「なぜそうなったか」に焦点をあて、改善策を防災計画に反映することが大切だ。

 各地では新基準に基づく地域防災計画を策定中だが、事故の経験が十分に反映されているとは言い難いものもある。

 評価の過程では、東京電力や福島の被災自治体にも意見を聞くべきだ。訓練では補いきれない経験知も含めての「気づき」を、全国の関係自治体と分かち合う場にしてもらいたい。

 人口が密集していたり、避難路が未整備だったりして、住民が逃げる計画そのものに無理のある地域も出てくるだろう。そうした原発は再稼働の対象としない。現実を見据えてこその防災訓練である。

検索フォーム

PR情報

注目コンテンツ

  • ショッピングiPhoneでTVを見る

    バッテリー搭載型チューナー

  • ブック・アサヒ・コムピース又吉の自伝的エッセー

    母と行けなかった東京タワー

  • 【&M】大人のそばの楽しみ方

    「卵がふわっふわっ」のイケ麺

  • 【&w】マス向けではヒット生まれず

    ハタラクをデザインする

  • 【&C】保険はギャンブルなのか!?

    リスクの優先順位づけが重要

  • Astandスケーターとしての「礼儀」

    ドイツで安藤美姫が示したこと

  • 朝日転職情報

  • 就活朝日2014