特集ワイド:カノジョは面倒?「草食男子」ここまで 「セックスに無関心、嫌悪」25% 「性体験なくても平気」
毎日新聞 2013年10月10日 東京夕刊
「セックス嫌いな若者たち」などの著書がある産婦人科医、北村邦夫さん(62)は、02年から2年ごとに「男女の生活と意識に関する調査」をしている。20〜24歳の男性でセックスに「関心がない」「嫌悪している」と回答した割合は、08年の11・8%から10年には21・5%に急増した。最新の12年も24・6%と増加傾向だ。女性は30%前後だが、「性欲は男性ホルモンの支配下にあり、女性ホルモンが優位の若い女性は仕方がない。問題は、男性ホルモンが一番多く分泌されているはずの20代男性がセックスに関心が向かなくなり、敵視する人まで現れていることだ」と指摘する。セックス以外の異性との関わりを「面倒」「嫌悪している」とした人も20〜24歳で27・7%、25〜29歳で29・4%と上下の年代に比べて高い。
コラムニストの北原みのりさん(42)は、20代の男性たちに「性欲はあるのにロリコン化が進んだ。性欲もあり、言いたいことを言う大人の女性と向き合う体力、知性がなくなってしまった」と手厳しい。雑誌などを分析すると、80年代は大人の男女に憧れる風潮があったが、いつの間にか少女っぽさがもてはやされるようになった。「お子様文化が進み、若い男性も『子どもでいさせてほしい』と思っている。それならセックスなんて必要なくなってしまいます」
北村さんは「セックスは、コミュニケーションのいわば最終形。その入り口である会話などの能力が低下した男性たちが、セックスをうっとうしく思ってしまうのは当たり前なのかもしれません」と話す。
調査では、セックスに関心がなく、異性と関わるのが面倒だという20代男性は、そうでない男性と比べて中学生時代に両親が不仲であるなど家庭が楽しくなく、子どもも欲しくない割合が高い。取材に来た海外メディアから口々に「このままだと日本は滅びますね」と驚かれた。北村さんは「人と関わることで人生が楽しくなることや打てば響く会話のおもしろさを幼い頃から教えていかなければ、本当に滅亡してしまう」と危機感をあらわにする。
彼らを「ふがいない」と批判するのは簡単だ。でも、それだけでは何も変わるまい。
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