9月初旬、オリンピック招致を決するIOC総会で安倍総理が「アンダーコントロール」と語ったことによって「福島第一原発の汚染水問題」が改めて国内でクローズアップされることになった。総理のオリンピック招致に向けての覚悟は理解できるが、国際社会に対する発言が、過去の事実とこれからの対策の実効性と齟齬があってはならないことはいうまでもない。
国会は閉会中だったが、メディアもこぞって国会審議を求めた。そして、ようやく9月27日、30日の両日、経済産業委員会の閉会中審査が現実のものとなった。
筆者は経産委員会の委員としてその質疑に立つことになった。そもそも2年半前、福島第一原発事故対策担当の総理補佐官として、政府・東電統合対策本部(当時)の遮へいプロジェクトの責任者として、汚染水の海洋流出を防ぐための施策の検討・実施を行ってきた当事者でもある。
今回は、政府が改めて行おうとしている汚染水流出を防ぐための抜本対策に問題はないのか、また、今後の事故収束事業にひそむ国費投入の懸念事項などについて記していきたい。
汚染水問題に関する基本方針・対策概要について
9月3日、政府の原子力災害対策本部は、「東京電力福島第一原子力発電所における汚染水問題に関する基本方針」を決定した。その中で、「基本的考え方」として「従来のような逐次的な事後対応ではなく、想定されるリスクを広く洗い出し、予防的かつ重層的に、抜本的な対策を講じる」としている。
リスクを過小評価しないこと、さらに多重防御の必要性については、今年の通常国会における経済産業委員会で、私も繰り返し主張してきたところであり、政府側もそのことを強く認識した結果だと受け止めている。
汚染水対策の3つの基本方針は、①汚染源を「取り除く」、②汚染源に水を「近づけない」、③汚染水を「漏らさない」とされ、原子力災害対策本部で決定された基本方針においても、この3つの「基本方針の下、対策を講じていく」とされている。
また、対策を「緊急対策」と「抜本対策(今後1~2年)」という区分のもとに整理している。つまり、緊急対策は遅くとも「1年以内」に講じるものでなければならないのだ。
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