青息吐息のグリー
大量リストラでも解決しない「病巣」
ソーシャルゲーム大手のグリーが喘いでいる。10月2日に約200人の希望退職実施を公表、株価は年初来安値を更新した。2011年6月末に592人だった従業員数は今年6月末に2364人まで急増したが、相反して本業が低迷した結果、創業以来初となる本格的なリストラに追い込まれた。
これに先だってグリーは今夏以降、海外拠点を半減、英国や中国などから撤退を余儀なくされている。国内でも大阪の拠点を閉鎖し、責任者だった吉田大成氏は取締役を辞任した。9月末の株主総会で新たな取締役4人を選任、経営の立て直しを急いでいる。
しかし、これごときで問題は解決しない。リストラはあくまで対症療法に過ぎず、今後は未だ手をつけられていない病巣と戦うことになる。
最大の課題は優秀な技術者やクリエイターの確保。今回の希望退職は管理部門や間接部門が対象で、ゲーム開発を担う人員は対象外だ。開発部門では逆に人員確保に窮している。初夏にグリーを去ったある技術者はこう証言する。
「業績悪化が決定的となった6月以降、デキる開発者の流出が急増し、今のスマートフォン向けゲーム市場で必要な人材も入ってこない。転職市場で売れない人材が残るが、新規開発を止めるわけにもいかないのでリストラできないジレンマに陥っている」
もう1つの病はテレビCMへの依存だ。今年6月期の広告宣伝費は前年度比19%増の約220億円。人件費を遥かに超える。一般の企業であれば真っ先に削る対象だが、7月以降も抑制されていない。
「グリーはCMで大量のユーザーを集め、一部のハマったユーザーから高額の課金収入を得る手法で稼いできた。CMをやめるとビジネスモデルの根源が崩れ、売上高が激減しかねない」(大手紙記者)
CM依存から脱却するには、大ヒットしているスマホ向けゲーム「パズドラ」のように口コミで広がる本当に面白いゲームを作るしかないが、開発部門は人材不足。負のスパイラルとはこのことだ。
かつて意気揚々と「インターネットで世界をより良くする」と語っていた田中良和社長も「『コンプガチャ』騒動以降、取材に応じなくなり、公の場に出る機会も減った」(同前)。はたして復活はあるのだろうか。
※この記事の公開期間は、2016年10月08日までです。
この記事の掲載号
関連ワード
グリー | 田中 良和 | コンプガチャ | ソーシャルゲーム追求キャンペーン