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【塩倉裕】原爆の歴史を伝える広島平和記念資料館(広島市中区)が、被爆者の姿を再現した人形を撤去する方針を打ち出し、論議を呼んでいる。遺品などの「実物」を重視する展示方針が採られた結果だ。歴史の継承に「作り物」が果たす役割をどう評価すべきか。研究者と、現地を訪ねた。
がれきの山と化した暗い市街地を、母子らしき3体の人形がさまよう。火災をイメージさせるオレンジ色の明かりが、焼け焦げた衣服をぼうっと映し出す。
「資料館の中でも独特な雰囲気を持つ場所ですね」
篠田英朗・東京外国語大教授はそう語った。紛争地などでの平和構築に取り組む研究者だ。この春までの14年間、広島大にいた。
人形たちは両腕を前に出している。腕の先からは、やけどで皮膚が垂れ下がっていた。「皮膚が地面に付かないようにするために腕を持ち上げたのです」と篠田さんが言った。「最も一般的な被爆者イメージを表現した展示でしょう」
資料館は被爆者の遺品など実物の「資料」を主に展示する。作り物であるプラスチック人形とジオラマ模型は「フィクション」的で、確かに独特だ。