日本郵政:「3社同時上場」を検討 民業圧迫批判かわす
毎日新聞 2013年09月19日 07時01分
日本郵政が2015年春を目指す株式上場時に、傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の金融2社も同時上場させることを検討していることが18日、分かった。日本郵政はグループの収益力を向上させるためにも早期上場が不可欠と判断した。親会社と子会社の同時上場は異例だが、金融子会社2社も一体で上場することで、郵政改革を進める姿勢をアピールする考えだ。早期上場により、米政府や金融機関などから「民業圧迫」批判をかわす狙いもある。
日本郵政グループは、政府が日本郵政の全株を保有し、日本郵政が金融2社と日本郵便の株式をそれぞれ100%保有している。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉の日米事前協議では、日本政府が日本郵政の全株を保有していることに対し、米国が「暗黙の政府保証があり、公平な競争環境が確保されない」との懸念を伝え、政府が株式を持ち続ける間は金融2社の業務拡大に反対している。日本郵政は、親会社の早期上場で、金融子会社の新規事業に対する米国の反対をかわし、収益基盤を強化する考えだ。
金融2社の上場については、昨年施行された改正郵政民営化法で、できるだけ早期に全株を処分するとの努力規定となり、小泉政権時の民営化路線からは後退していた。昨年10月に公表された日本郵政の上場計画では、日本郵政株を半分以上売却した後に、2社の株式売却を検討する方針だった。安倍政権発足後の今年6月に就任した西室泰三社長は、金融子会社も一体で上場させることで、郵政民営化を進める姿勢をより強くアピールできると判断、見直しを指示した模様だ。
日本郵政の13年3月期の連結純資産は12兆4482億円。政府保有株の3分の2を売却した場合、約7兆円が国庫に入る計算となり、NTTなどと並ぶ政府系企業の大型上場となる。
一方、同時期に金融2社も上場すれば、投資家の需要が分散するなどして株価が抑えられるなどの懸念もある。親子上場に対しては、親会社の意向で上場子会社の経営戦略が左右されれば、少数株主の利益を損なうとの批判もある。日本郵政は来年2月までに新たな上場計画を策定する予定で、金融庁や財務省との調整を急ぐ。【大久保陽一】