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【政治】

「秘密保護法案」秘密肥大化 意のまま 田島 泰彦教授に聞く

 安倍政権は「特定秘密」に指定した情報を漏らしたり、取得したりした場合、最高懲役10年とする「特定秘密保護法案」の原案をまとめた。臨時国会に法案を提出し、成立させることを目指している。ただ、過度な厳罰化と「秘密」の定義の拡大によって、国民の「知る権利」が脅かされかねない。情報の公開と規制の問題に詳しい上智大の田島泰彦教授に問題点を聞いた。 (聞き手・金杉貴雄)

 −法案では、情報漏えいに罰則を科すのは防衛や外交など四分野の「特定秘密」に限るとしているが。

 限定的に聞こえるが、実際はすごく広範に指定できる。例えば、原発や放射能などの情報は、スパイやテロ活動の防止にあたるかもしれない。環太平洋連携協定(TPP)も外交に関連し、指定されてもおかしくない。指定は政府側が随意に、誰にもチェックされず決めることができる。

 −厳罰化の影響は。

 情報を得る方も最高懲役十年だ。共謀や教唆だけで罰則が適用される。記者のほか、情報公開を求め、調査活動をする市民や研究者まで厳罰の対象になり、国民全体に大きな影響がある。

 −政府は「外国と情報共有のため厳罰化が必要だ」と主張するが、国民の「知る権利」との関係は。

 各国は情報公開や表現の自由への取り組みの上に、情報保護の法律がある。日本は今でさえ、本来なら国民が知るべき情報が出てこない。原発事故で(放射性物質の拡散状況をコンピューターで予測する)「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」や被ばくに関する正確な情報が伝えられなかったのがその表れだ。(法案が成立すれば)身近で必要な情報が一層隠される。

 −法案は「知る権利」に抵触するのでは。

 政府が何をしているのか情報がなければ、市民は是非を判断できず、民主主義は機能しない。「知る権利」は表現の自由や国民主権のための基本的人権の一つという考えが主流だ。

 情報公開や知る権利を前提にして、国家の「秘密」をできる限り少なくするのが、むしろ民主主義国の大きな流れだ。秘密を肥大化させていくのは、世界と時代に逆行する。

<特定秘密保護法案> 政府原案では、国の安全保障に著しい支障を与える恐れがある情報を「特定秘密」に指定。(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動の防止(スパイ行為などを指す)(4)テロの防止−に関する事項が対象で、行政機関の長が指定する。漏えいは最高懲役10年で、従来の国家公務員法の守秘義務違反(懲役1年)、自衛隊法の防衛秘密漏えい(懲役5年)と比べ大幅に厳しくなる。不正に取得した場合も懲役10年、共謀やそそのかし、扇動も懲役5年とする。特定秘密の取り扱いは、適性評価による調査をクリアしたものに限定する。

<たじま・やすひこ> 専門は憲法、メディア法で、表現の自由や国民の「知る権利」に詳しい。神奈川大短期大学部教授を経て1999年から現職。著書に「共通番号制度のカラクリ」「秘密保全法批判」(ともに編著)など。61歳。

 

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