イエレン氏について知っておくべき5項目

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  • VICTORIA MCGRANE

 オバマ米大統領は次期連邦準備制度理事会(FRB)議長に、ジャネット・イエレン副議長を指名する見通しとなった。イエレン副議長について知っておくべき5項目を説明したい。

 1. イエレン氏は景気を押し上げるため、アグレッシブな新政策を採用するよう連邦準備制度理事会(FRB)に働きかけてきた。学問の世界において研究活動のほとんどを失業のコストと原因に充ててきた同氏は、高失業率の問題に精力的に対処するよう一貫してFRBに求めている。同氏は、現在のように脆弱な経済状況においては、インフレが問題になる公算は小さいと主張している―これまでのところ、それは当たっている。今年2月の米労働総同盟産別会議(AFL-CIO)の会合での講演では、「これらのことは私にとっては単なる統計ではない。われわれは長期の失業が労働者とその家族に打撃を与えていることを知っている」と述べた。

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イエレンFRB副議長

 2. イエレン氏はこれまで過度なインフレに懸念を示してきた。同氏の公の発言や過去の行動は、彼女が低インフレの維持に熱意を注いでいることを示している。同氏は2011年の講演で、FRBは「加速するインフレに十分強力に対応しなかった1960年代末と70年代の経験を決して繰り返さないと決意している」と語った。

 イエレン氏は以前から、2%のインフレ目標を採用するよう提案しており、12年にFRBがその目標を採用した決定に深く関与した。FRB理事だった96年、インフレの適正な水準について当時のグリーンスパンFRB議長と議論し、あまりに低いインフレ率は高すぎるインフレと同じように経済に害を与える恐れがあると主張した。この見解は現在ではFRBで広く受け入れられているが、当時はそうではなかった。イエレン氏は同年、その議論のあと、好景気が過度のインフレにつながる恐れがあるとして、短期金利の引き上げをグリーンスパン議長に求めた。しかし、ローレンス・マイヤー元理事によると、議長はこれを退けたという。

 3. イエレン氏は正確に景気を予測する能力を持っている。FRBは経済成長率、インフレ率、失業率を予想して政策を決定しなければならない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の分析によれば、同氏は09―13年の経済について、現在のFRB当局者の誰よりも正確に予測していた。

 4. イエレン氏は金融危機を経て、より厳格な金融規制が必要だとの考えに至った。同氏は、サンフランシスコ連銀総裁だった時に起きた08年の金融危機によって、いくらか「おとなしい」地域の銀行規制当局者から、遠くに見えだしたトラブルに対処するのを規制当局に任せておくよりも厳しい規則の方が効果的だと考えるようになった、と述べた。

 同氏は10年、議会の金融危機調査委員会に対して、「私は危機の経験を経て、今回のような事態が起きた際に自動的に発動される、一段と厳しい基準と組み込まれた規則を強く信奉するようになった」と述べた。また、FRBやその他の規制当局が新しい規則を議論し、策定するまでに時間がかかったことにフラストレーションを感じたとしている。

 同氏は今年6月の講演で、FRBは米国の最も大きく最も複雑な銀行の損失に備えた資本クッションを、国際規制当局が設定した新たな基準よりももっと厚くするよう要求する必要があるかもしれないと発言。これに対して米国の大手銀行は強く反対している。

 5. イエレン氏は透明性が重要だと考えており、コミュニケーションを取るのがうまいと市場から評価されている。バーナンキ議長は2010年、イエレン氏にFRB内部のコミュニケーション委員会の委員長を務めるよう要請。同委員会は、FRBがその目標と政策プランを国民にはっきり伝えられるようないくつかの新機軸を打ち出した。これには、金融政策の先行き見通しを示す、いわゆるフォワード・ガイダンスが含まれており、これは失業率やインフレ率に関する基準設定、議長の定期記者会見、12年1月に公表された長期的目標・金融政策戦略文書に発展した。この文書で初めて、FRBが使命を満たす上で適切と判断されるインフレ率と失業率が示された。

 イエレン氏は今年4月のジャーナリストの会合で講演し、「金融政策の効果は今後数カ月、数年間にどんな政策が行われるのかというメッセージを国民が受け取れるかどうかに大きく左右される」と述べた。また、「『決して説明しない、決して弁明しない』という日々は永遠に消え去ったことを願っている」と語った。

 市場参加者は、イエレン氏がFRBの考えをうまく説明していると考えている。昨年行われた2つの調査では、FRBと直接取引をするプライマリーディーラーの担当者らは、FRBのコミュニケーションに関する質問に対し、イエレン氏の講演が特に役立つと答えている。

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