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TPPと日本―世界見すえた主張を

環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐるインドネシアでの会合が終わった。交渉を主導する米国のオバマ大統領は首脳会合を欠席し、「年内妥結」という目標の達成は一層厳しくなった[記事全文]

死刑判決破棄―慎重さを求めた判断

市民の裁判員と裁判官が決めた死刑の判決を、控訴審で裁判官が無期懲役に改める。そんなケースが最近、東京高裁で2件続いた。いずれも過去に死刑になった先例と比べて、「死刑がや[記事全文]

TPPと日本―世界見すえた主張を

 環太平洋経済連携協定(TPP)をめぐるインドネシアでの会合が終わった。

 交渉を主導する米国のオバマ大統領は首脳会合を欠席し、「年内妥結」という目標の達成は一層厳しくなった。一方、日本では関税の撤廃・引き下げへの議論が熱を帯びてきた。

 関税のあり方は主要テーマの一つであり、各国間の対立は激しい。と同時に、TPP交渉全体の行方は、難航している「新たなルール作り」の成否にもかかっている。

 具体的には、医薬品の特許強化の是非などが争点の「知的財産」、経済活動を優先するあまり自然破壊を招かないようにする「環境」、国有企業が民間より優遇されるのを改める「競争政策」などである。

 いずれも米国を中心とする先進国と、ベトナムやマレーシアなど新興国との利害が激しく対立している。今回とテーマは違うが、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドが頓挫したのと同じ構図だ。

 ここをどう乗り越えるか。その決着ぶりが今後、世界の通商交渉で基準になっていく可能性は小さくない。

 日本政府はこの点を自覚し、世界を意識した主張をしてほしい。2国間での関税撤廃交渉への効果を期待して米国に追従するだけなら、情けない。

 たとえば、新薬の特許をめぐる問題である。

 米国政府は、自国の有力製薬会社の要求を受けて特許期間やデータ保護期間の延長を求めているが、新興国の反発は強い。特許などが切れてから作る後発薬が減りかねないためだ。

 貧しい人たちも十分な医療を受けられるようにするには、安い後発薬の普及がカギとなる。米国をたしなめることが日本の役回りだろう。米国内でも貧困支援のNPOなどには、製薬会社への批判が根強い。

 「環境」や「競争政策」では、先進国としての日本の立場は米国と共通する。

 かたや、新興国にとっては、一気に先進国並みの環境保護を求められたり、数多い国有企業の手足を急にしばられたりすると、混乱が大きい。

 激変を避けつつ、確かな道筋をつけられるかどうかが問われよう。日本は公害という負の歴史を抱え、公社などを民営化した経験も豊富である。アジアの一員としても、橋渡し役としての出番は多いはずだ。

 国内では、TPPへの関心が農産物の関税問題に偏りがちだが、政府はルール作りにもしっかりと向き合ってほしい。

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死刑判決破棄―慎重さを求めた判断

 市民の裁判員と裁判官が決めた死刑の判決を、控訴審で裁判官が無期懲役に改める。

 そんなケースが最近、東京高裁で2件続いた。いずれも過去に死刑になった先例と比べて、「死刑がやむを得ないとはいえない」との判断だった。

 裁判員と裁判官は悩み抜いたうえで死刑の結論を出したはずだ。裁判員制度がめざした、市民の感覚、社会常識の裁判への反映といえる。

 それでも、国家が人の命を奪う究極の刑の選択については、先例をふまえた慎重な検討が重ねられなければならない。

 裁判員制度が始まってから、4年がたつ。昨年の最高裁のまとめでは、開始以降、性犯罪などの厳罰化が進んだ。

 裁判に市民の参加を求めながら、控訴審で結果を次々否定するようでは、制度の意味に疑問符がつく。導入に伴い、控訴審の役割は、裁判員裁判の結果に、不合理な点がないかどうかの事後的審査にとどまると考えられてきた。

 最高裁は昨年、一審の裁判員裁判で無罪、高裁が有罪と判断した覚醒剤密輸事件で無罪判決を出した。量刑についても補足意見で「許容範囲の幅を認めない判断を求めるのは無理を強いることだ」とし、裁判員裁判の量刑にある程度のばらつきが出ることを認めた。

 しかし、死刑の選択については、とりわけ慎重な扱いが必要であろう。懲役刑の中で適切な刑期を決める選択とはまったく質が違う。生きて社会に戻る可能性がある無期刑と死刑とでは相当の隔たりがある。

 どんな事情なら、死刑の選択がやむをえないのか。ここに理論的な答えはなく、市民にも裁判官にも難しい問題である。

 裁判員裁判の量刑について、最高裁司法研修所が昨年、論文を出した。事件の重大性の評価は、死刑にすべきかどうかが問題になった過去の例と比較して初めて、可能になると指摘している。

 こうした先例は、裁判員制度が導入される以前に、裁判官だけが積み上げた裁判の基準でしかない。だとしても、日本の死刑制度と社会がどう向き合ってきたかを示す集大成といえ、参考にすべき蓄積である。裁判によって結論があまりに違うようでは、裁判員裁判を含む司法制度への信頼も揺らいでしまう。

 死刑の存廃にはさまざまな議論がある。執行されては取り返しのつかない刑であり、先例に照らせばそれ以外の選択肢がある事件で死刑が選択されることには慎重でなければいけない。

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