「 従 軍 慰 安 婦 」

― 脚本・進行「朝日」 、 宣伝「NHK」 ―

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   「日本は永遠に負担を抱える」 ・・・ 韓国大統領が警告

 2011年12月17日、李 明博・韓国大統領が来日しました。韓国大統領の来日は2009年6月以来のことで、途絶えていた日韓両首脳による「シャトル外交」の一環でした。
日韓首脳会談ーテレビ朝日ニュースより  李大統領は来日するや、大阪市内で開かれた民団(在日本大韓民国民団)の会合に出席、慰安婦問題を解決しなければ「日本は永遠に負担を抱えることになる」 などと述べ、日韓首脳会談を前にして日本側に早期に解決するよう要求しました。
 翌18日の首脳会談冒頭、大統領は「慰安婦問題を優先的に解決しなければならない」と発言、慰安婦問題という「歴史カード」 を切ってきました。
 「韓国は日本にとって最も重要な隣国だ。経済、安全保障という順番で話をしたい」と語りかける野田首相に、「経済問題以前に歴史の懸案である慰安婦問題について話さなければならない」と大統領は一蹴、「日本政府が認識を変えればただちに解決できる。解決できなければ、両国間に大きな負担として残る」「真の勇気を持つことを望む」などと解決を迫りました。
 野田首相は「わが国の法的立場は決まっている」と反論、1965(昭和40)年の国交正常化のときに交わした請求権協定で解決されていると説明しました。

   (1)   「完全かつ最終的に解決」 されたはずの日韓請求権
   1965(昭和40)年6月22日、日韓国交正常化に伴う「日韓基本条約」協定が結ばれました。協定には請求権問題、在日韓国人の法的地位、文化協力、漁業の4協定が含まれています。
 請求権問題については、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」(日韓請求権並びに経済協力協定)が結ばれ、その第2条第1項は次のように定めています。
 〈 両締約国は、両締約国及びその国民(法人含む)の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題が、1951年9月8日にサン・フランシスコ市で署名された日本国との平和条約第4条(a)に規定されたものを含めて、完全かつ最終的に解決されたこととなることを確認する。 〉
 この協定締結にあたり、日本は韓国に対し3億ドル(当時の1、080億円。1ドル=360円)に相当する生産物などの無償供与、2億ドル(720億円)の長期低利貸付け、民間借款3億ドル以上を行う(第1条)ことが定められ、また日本は朝鮮に投資した資本、日本人の個別財産のすべてを放棄することになりました。当時の日本の国力からすれば、大きな負担ではあったのですが、日本は忠実に義務を果たしたのです。ですから、日韓間の請求権問題は存在しないとするわが国の主張は当たり前のことです。

   (2)   国連提起をテコに
 では、李大統領が日本に迫る「解決」とは具体的に何をいうのでしょう。
 2011年8月、韓国の憲法裁判所は元慰安婦支援団体などの日本政府に対する「補償要求」 に対し、解決に向けた努力をしない韓国政府は人権を侵害しているとの判断を下しました。これを受け、韓国は日本に協議開始を求める一方、国連総会第3委員会(人権)で加盟国すべてが解決(償い)に努力するよう求め、今回の日韓首脳会談に向けた有利な交渉へと足場固めに力を注いだのでした。
 2007年7月、アメリカ下院本会議が「 慰安婦制度は日本政府による軍用の強制的な売春で、20世紀最大の人身売買の一つ 」とした対日非難決議案 を圧倒的多数で採択したこと、またこの決議案を採択へと導いた国連人権委員会の2つの報告書、一つは慰安婦を「sex slave」と表現した「クマラスワミ報告書」、一つは「14万人以上が殺害された」などとする「マクドガル報告書」 の存在を踏まえ、国連に提起したのは間違いないでしょう。
 韓国のいう「解決」とは、元慰安婦に対する償い、つまり経済的補償と、日本政府のさらなる謝罪 ということなのです。
 大統領が日本に対して強い姿勢で出たのには、2012年12月の大統領選挙が苦戦になると観測されるなか、季大統領もまた歴代大統領と同様、当初明言していた「未来志向」から「反日」へと票目当てに舵を切ったとする指摘が的を射ているのかもしれません。なにせ「反日」は韓国人のお気に入りで、1種の娯楽だとも言われていますし一定の票は当てにできるといいますから。

   (3)  日本大使館前に「慰安婦像」
 李大統領の来日直前の2011年12月14日、ソウルの日本大使館前に慰安婦を象徴する「少女のブロンズ像」が韓国の反日団体によって建てられ、その序幕式が行われました。
日本大使館前の慰安婦像  なんでも日本大使館前で行われる恒例行事「水曜デモ」が1000回を迎えたとかで、これを記念して建てたのだそうです。像の隣にイスをしつらえ、少女像との記念写真がとれるという寸法です。
 日本政府は駐韓大使を通じて韓国の外交通商省に像の建立を許可しないよう申し入れ、また建立後には像の撤去を求めましたが、韓国政府はどこ吹く風とばかりに無視しました。
 よりによって日本大使館の前に反日記念像を建てるのは国際間の儀礼を欠いた行為であり、少女像の無許可設置を黙認した韓国政府の敵対行為ともいえるものです。
 建てたのは「韓国挺身隊問題対策協議会」(挺対協)という反日市民団体ですが、「挺身隊」 という名称が付けられていることにご注目ください。
 「挺身隊」と「慰安婦」は何の関係もない別物なのですが、挺身隊=慰安婦だと報じたのは朝日新聞 でした。挺身隊は慰安婦に非ずという数々の指摘に対して明確な訂正をせず、今日に至っていることも合わせてご記憶ください。
  

    虚報を流しつづけたのは朝日じゃないか ・・・ 韓国に理解を示す朝日

 こうした韓国側の要求に朝日新聞はどう応えたのでしょう。
2011−12−19日付け朝日社説  「人道的打開策を探ろう」とした2011年12月19日付け社説は、李大統領が、〈 「日本政府が認識を変えれば直ちに解決できる」と訴え、「誠意ある温かい心」に基づく対応を求めた。なぜそうするのか、歴史的にわからないではない。 〉 とまず、大統領の言い分に理解を示します。
 そして、日本政府が1965年の国交正常化の協定で完全解決したとの立場を一貫してとり、野田首相もそう主張したと説明、「けれども」と以下のようにつづけます。

 〈 けれども、正常化交渉の当時に想定していなかった問題が後になって出てきた。
元慰安婦はその典型的な例だ。 〉

 この部分を読んだ人の多くはとくに違和感を持つこともなく読み過ごし、なんとなくもっともだと思ったのではないでしょうか。ですがこの文章、欺瞞に満ちています。
 慰安婦の存在は日韓正常化当時はもとより、戦時中から公然のことであって日韓間の問題になることはありませんでした。問題となったのは、慰安婦たちが日本官憲の手で強制的に連行 され、日本軍将兵に供せられたと報じられたために始まったのです。
 強制連行が日本官憲によって行われていたとなれば、確かに問題でしょうし、朝日社説がいうように「想定していなかった問題」という位置づけも説得力を持ちえるでしょう。ですが慰安婦問題は、強制連行を事実だとし、それに伴う日本軍の非道な行為を断罪する報道を朝日新聞が主導した結果、起こったことなのです。

   (1)  強制連行の証拠なし
 ですから慰安婦問題というのは、慰安婦が強制連行されたかどうかという1点にかかっているのです。もちろん、慰安婦の存在が好ましいわけはありませんし、苦しんだ女性が数多くいたことは間違いないでしょう。しかし、そういう時代であったことも事実なのです。日本において売春防止法が成立し、公布されたのが1956(昭和31)年のこと、それまでは公認だったわけで、何も当時の日本が例外的に公娼制を認めていたわけではありません。現在でもドイツなどでは公認されています。
 ですから、慰安婦の強制連行が事実かどうかがこの問題の判断基準になってこなければなりません。ところが、強制連行の事実を立証する証拠はなかったのです。それどころか、なかったにもかかわらず、朝日新聞が「あった、あった」と騒ぎたてるや、他のメディア、学者や文化人らが声をそろえた日本非難の合唱となり、これに驚いた政府がろくに調べもせず、政治上の判断とやらで、強制連行を事実上、認めてしまったのです。それがもとで今日も事あるごとに日本は非難にさらされるのです。元をただせば朝日の虚報が今日の問題の根源、なんとも愚かしいかぎりです。
 朝日社説はこう締めくくります。

 〈 野田首相は李大統領との会談で「人道主義的な見地から知恵を絞っていこう」と語った。
 問題を打開する糸口はここにあるのではないか。65年協定で解決したかしないかではなく、人道的に着地点を見いだしていく。
 それは行政ではなく、日韓の政治がともに探る。そういう時期にきている。 〉

 この社説、強制連行の有無については一言も触れていません。「人道的に着地点を見出していく」といいますが、要するにさらなる謝罪と慰安婦救済のための賠償をということでしょうが、読売社説の〈 仮に「人道的な見地」から中途半端な措置を取っても、韓国側を満足させることは困難で、問題を複雑化するだけだろう。 〉とする見方が当たっていることは過去の経緯から考えれば間違いないでしょう。
 参考のため、朝日社説(全文)と天声人語および同日付けの読売新聞社説をご覧ください (⇒ 朝日、読売社説ほか ) 。

   (2)  事実関係はそっちのけ
 「従軍慰安婦」問題も他の問題と同様、事実関係をそっちのけにしたまま、よってたかって日本の名誉を貶めた実例といえます。
 よってたかって糾弾したのは、またしても「朝日新聞」、「NHK」 を代表とする日本の報道機関、それに大学教授を中心とする「学 者」、ここぞとばかり裁判に持ち込む弁護士 、活動家、また受身ではありながらも付和雷同した私たち一般国民も加えなければならないでしょう。
 さらに自国の名誉を守るべき日本政府の対応の弱々しさ、不甲斐なさ。声をあげるべき歴史専攻の学者らの沈黙。まったくもってわが国が「ひよわな花」であることを得心させられます。
 事実関係を知れば、慰安婦問題は「 日本は国家の体をなしているのか」という問いを、私たち国民に鋭く突きつけているのだとも思えます。
 こう書きますと、何やら「右翼の物言い」 ではないかと眉をひそめる向きもあるでしょうが、決してそうではありません。事実関係を知れば、ごく普通の日本人なら、同様の感想を持つに違いないと思いますし、思えなければお先真っ暗とあきらめなくてはならないとも思います。
 とにかく、事実関係を中心に、今日まで慰安婦問題をめぐって何があったのか、要点をまとめていきますが、ここでも主導的役割を果たした「朝日新聞」 の存在に行きあたります。
 そして、朝日新聞を中心とするメディアの論調に引きずられ、国家の名誉を守るべき日本政府は腰が引けてしまい、時流におもねるだけの無策ぶり、偽善ぶりを露呈してしまいました。


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