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アングル:物価連動債5年ぶり発行、期待インフレ率2%へ道遠し

2013年 10月 8日 17:13 JST
 
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[東京 8日 ロイター] - 物価連動国債10年物の入札が5年ぶりに実施された。市場の期待インフレ率を把握しやすくなると政府関係者から期待されている。新発債から試算した期待インフレ率は消費増税の影響を除くと0.7%程度との結果もあり、政府・日銀が目指す2%への道のりは、なお遠い。

<黒田緩和の効果、政府は物価連動債の再開時期と判断>

物価連動債は、満期時に消費者物価指数(除く生鮮食品)に応じた元本を払い戻す仕組みで、物価が上がれば元本も受け取る利子も増える。

一般的な国債と違い、インフレ時に有利とされるが、これまでは物価が下落して元本を割り込む恐れがあり、2008年のリーマン・ショック以降は需c要が減り、同年8月を最後に発行していなかった

しかし、日銀が2%の物価目標政策を4月4日から導入した影響で、先行きの物価上昇期待が広がり、物価連動債の需要が見込めると財務省は判断し、再発行に踏み切った。また、物価が下がっても満期時の元本は購入時を下回らないよう政府が保証する仕組みに変更した。

<消費税引き上げ影響控除後のBEI、0.7%に低下の試算>

きょう8日の入札結果は、最高落札利回りがマイナス0.3520%。表面利率0.10%、発行価格104円65銭。応札倍率は3.74倍。発行日は10月10日。市場では「事前予想に比べてかなり強い結果」(外資系証券)との声が出ている。

通常の利付国債の利回りから物価連動債の利回りを引き算して求める期待インフレ率の指標、ブレーク・イーブ・インフレ(BEI)率は1.00%程度とみられる。

SMBC日興証券の山田聡シニアクオンツアナリストの試算によると、既発債は残存約5年でBEIが1.7%程度だった。2014年4月と15年10月の消費税引き上げが与える影響(14年4月に2%ポイント、15年10月に1.3%ポイント)を差し引くと実質BEIは1%程度。

これに対して今回の新発債から計算される実質BEIは0.7%。「先行きの期待インフレ率は下がる形」(同氏)が明らかになった。

日銀の黒田東彦総裁は、「普通の景気」つまり需給ギャップがゼロのときに2%の物価目標を達成すべきと指摘しているが、「債券市場では誰も実現できないとみている」(外資系証券)との声も聞かれる。

もっともBEIの期待インフレ率としての指標性には課題が多い。物価連動債の残高が2兆円程度と小さく、外資系証券を中心とした限られたプレーヤーの見方しか反映されていないとも言えるためだ。

今年5月にピークを付けた後は、日経平均.N225と連動する動きを見せており、投資家のリスク許容度を示しているとの見方も多い。このため日銀でもBEIは期待インフレ率を測定するいくつかの指標の一つとの位置づけだ。

ただ、安倍晋三政権の経済政策の中枢を担ってきた岩田規久男・日銀副総裁や本田悦朗内閣官房参与らは、BEIを重視してきた。物価連動債が再発行されることで市場に厚みが出て、指標としての有用性が高まると期待している。

(竹本 能文 編集;田巻 一彦)

 
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