アングル:日銀総裁発言が波紋、時間軸強化の思惑浮上
[東京 8日 ロイター] - 黒田東彦・日銀総裁が「異次元緩和」の時間軸強化に向け、事前準備を始めたのではないかとの思惑がBOJウォッチャーの一部で浮上している。
会見の中で2%の物価目標達成が2年を超えるとも受け取れる表現を使ったほか、需給ギャップがゼロという好景気前の段階での目標達成にも言及。2年よりも長期間での目標達成を意識していると識者に思わせているためだ。市場の一部では、この発言が長期金利の低下を促す要因になるとの声も出ている。
<黒田発言、2年よりも2%達成優先か>
多くの金融関係者に「おやっ」と思わせる発言が最初に飛び出したのは9月20日の都内での講演会だった。
総裁は「安定的に2%の物価上昇率を実現するためには、景気が普通の状態の時に2%になるような経済・物価の関係を作る必要がある」と指摘。景気拡大期に仮に達成しても、その後の景気変動で再び低下しかねないという点を説明した。総裁は「普通の景気、つまり需給ギャップがゼロのとき」にこれを達成すべきとした。
しかし、BOJウォッチャーらが現実的だと想定していたのは「2%程度のプラスの需給ギャップ下での達成」(JPモルガン証券・チーフエコノミスト・菅野雅明氏)だった。
より厳しい条件を持ち出した総裁発言について、BOJウォッチャーのもとには投資家からの問い合わせが相次いだという。
「普通の景気」下での2%達成には、長い時間がかかるとみられている。BOJウォッチャーの間でも「黒田総裁の時間軸政策は、やや強まったという印象」(井上哲也・野村総研・金融ITイノベーション研究部長)との見方が浮上した。 続く...