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【社説】

ヘイトスピーチ 「言論の自由」守るには

 「在日特権を許さない市民の会」(在特会)の街宣活動をめぐる京都地裁の判決は、在日コリアンへの侮蔑(ぶべつ)や排除をあおる人種差別だと判断した。結果的に表現の自由を守ったのではないか。

 特定の人種や民族を差別し、憎しみをあおる「ヘイトスピーチ」は在日コリアンが大勢住む東京や大阪などで深刻だ。在特会は「殺せ」「たたき出せ」と大音量で連呼する街宣活動を続けている。

 四年前に朝鮮学校の前に押しかけた街宣活動がどのように評価されるのか。注目された京都地裁の判断は国際条約を根拠にした。

 街宣活動やその映像をインターネットで公開した行為について、日本も批准する人種差別撤廃条約に照らし、「著しく侮蔑的。人種差別に当たる」と指摘し、原告の学校側の請求通り在特会に学校周辺での街宣活動を禁じた。学校運営に与えた損害賠償も「人種差別行為に対する効果的な保護および、救済措置となるような額」として、二〇〇九年十二月から三回の街宣に対し、約千二百万円の支払いを命じた。

 被告の在特会側は「公益目的」で、憲法が保障する「表現の自由」の範囲の正当な論評だと主張したが退けられ、不服に違いない。

 しかし、朝鮮学校の子どもたちは心無い言葉を長時間にわたって大音量で浴びせられた末、四年たった今も一人で学校に行けない子や、大きな音に怯(おび)える子、腹痛を起こす子など、心身に傷を負った。それらの結果は常識を外れた行動であることを示している。

 学校側は一連の発言をヘイトスピーチだと主張した。判決ではその言葉こそ使わなかったが、発言の違法性を認めた。その点で、人種差別はいけないと社会に知らしめた。また、一般にヘイトスピーチと受け取られるような行動に対し、抑止する効果を持つのではないか。

 在特会の街宣活動に対して、国連の委員会からも勧告が出され、ヨーロッパにあるようなヘイトスピーチそのものを禁じる法整備を求める声も出ている。しかしそれでは権力に頼ることになり、恣意(しい)的な取り締まりにもつながりかねず好ましくない。

 残酷な言葉を叫ぶヘイトスピーチに参加する人は常識に欠けるし、それを見逃している人も思いやりに欠けているとはいえないか。言論の自由を守り、差別的な行動を自らなくしていくために、もう一度考えたいことである。

 

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