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運転開始見通せず 大間原発工事再開から1年
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大間原発の建設工事現場。工事再開から1年、現在はコンクリートの打設などの作業が進められている。写真はタービン建屋付近=9月27日 |
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電源開発(Jパワー)が大間町に建設を進めている大間原発は1日、工事再開から1年を迎えた。工事休止中、作業員の数はピーク時の1700人から約350人まで落ち込んだが、現在は約千人まで回復。一方、7月に施行された原発の新規制基準に適合するには、追加対策や耐震工事などを行う必要があり、大幅な設計変更は避けられない見通し。新基準適合に向けた同社の模索は続いており、現時点で運転開始時期は見通せていない。
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2008年5月に着工した大間原発は、東日本大震災や東京電力福島第1原発事故の影響で1年半余り工事を中断。昨年10月1日、同社の北村雅良社長が大間町と隣接の佐井、風間浦両村を訪れ、工事再開を表明した。
現在は、原子炉建屋やタービン建屋など主要建屋のコンクリート打設などを実施中。取水・放水設備の工事現場を見ると、配管の一部が既に覆われており、震災前から工事がだいぶ進んだ場所もある。
工事進捗(しんちょく)率は震災前と同じ37.6%だが、同社の担当者は「新規制基準の影響を受けない範囲で工事を進めている」と説明。休止中は重機の音がやみ、不気味な静寂さを漂わせた工事現場に、活気が戻りつつある。
だが、同社によると、約千人まで回復し、地元の活性化に寄与してきた作業員の数は今後、再び落ち込む見通しだ。担当者は「現在は許認可に関わらない部分の工事が中心。今後は許認可が必要な工事もあり、年度末まで千人を維持するのは難しい状況」と話す。
作業員の維持、増加には、原発事故を踏まえ、過酷事故や地震、津波対策が大幅に強化された新規制基準に適合させるのが近道。同社は、新基準が求める過酷事故時の原子炉建屋への放水設備整備、火災防護対策の強化、竜巻といった自然災害の影響評価─などの対応に加え、中央制御室から離れた場所でも原発を操作できる第2制御室や非常用電源などを備えた「特定安全施設」など猶予期間が求められているものについても、運転開始までに配備する方針だ。
ただ、その多くは震災前の設計にはなかったもの。新基準対応の詳細については「検討中」としており、具体的な道筋は描けていない。
さらに、世界の商用炉で初めて、使用済み核燃料を再処理して製造するプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料を全炉心で使用することから、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「フルMOXは経験がなく、一般論として、今の日本が世界でやったことがないことをやるのはなかなか難しい」と発言。一部識者が敷地周辺に活断層の存在を指摘するなど、運転開始に向けた道のりは平たんではない。
同社は来春以降、新基準適合に向けた安全対策工事の許可を申請する方針。しかし、新基準の影響を受ける部分が多岐にわたり、外的要因も多く「少なくとも来春の申請は難しいのでは」(県幹部)との見方も多い。申請したとしても、現在未定としている運転開始時期(震災前は14年11月に設定)を具体的に示せるかは不透明だ。
原発事故以降、地元からは不安の声も出ている。同社の担当者は「福島の事故以前のような安心感でないのは確か」としつつ、「当社も30年近く地元で対話を続けており、信頼関係は築けている。建設中である強みを生かして、後戻りがないよう、着実に工事を進めたい」と強調した。
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