JR北:腐った枕木 本線にも 社員「新品現場に来ず」
毎日新聞 2013年10月07日 07時00分(最終更新 10月07日 10時28分)
JR北海道のレール異常放置が発覚して2週間が過ぎた。「木製の枕木が腐り、レールを固定する犬くぎが手で抜けるほど傷んだ場所がある」。北海道のJR関係者を訪ね歩くと、深刻な設備の老朽化に対応できない保線現場の現状が浮かび上がってきた。
10月上旬、北海道七飯町のJR大沼駅。問題発覚のきっかけとなった貨物列車脱線事故の現場だ。列車が待避する「副本線」の木製枕木に穴が開いている。特急を含めて多くの旅客列車が走る「本線」に比べ、手入れが行き届いていないのが一目瞭然だ。大沼駅を管轄する大沼保線管理室は、レール約80キロの保線を担う。重機を使う補修は外部委託され、社員19人が比較的簡易な補修と、検査を担当する。
貨物列車はレールの異常が放置されていた副本線から、本線に入る手前で脱線した。JR北海道では、副本線を中心に全体の54%で木製枕木が使われている。JR旅客6社で最多の割合だ。コンクリート製より安いが劣化も早い。各地のJR関係者は、犬くぎが抜けるほど傷んだ枕木が、副本線だけでなく本線にもあると証言する。
保線関係者によると、1987年の民営化直前、「当分予算が厳しくなるから」と、駆け込み的に北海道全域の木製枕木が大幅に更新された。「寿命は15〜20年。ちょうどそれくらいたって一斉にダメになっているのかもしれない」。検査車両を走らせると、一つの保線管理室の管内だけで異常が疑われる場所が一度に20〜30カ所見つかることもあるという。
一方で、各地の保線管理室は1週間の半分程度を線路を歩きながら異常がないか調べる「徒歩巡回」に充てている。他にも法令や内規で定められた検査をこなす必要があり、補修に回せるのは週2、3日。「検査に追われて修理ができない。本末転倒だ」。内規に従い基準超過を15日以内に補修しようにも手が回らない。「2〜3ミリ幅が広がっても脱線しない」。そう考えて、補修を後回しにしてきたのが実態だ。
JR北海道は異常放置が見つかった場所の犬くぎを打ち直したりして、数日で全て補修した。だが、枕木が傷んでいれば、レール幅はすぐまた広がる。補修の翌年に同じ場所で異常が見つかることもある。