海外ネット配信:課税へ 負担格差是正へ具体策検討
毎日新聞 2013年10月08日 05時30分
政府税制調査会(会長・中里実東大教授)は7日、海外からインターネットで電子書籍や音楽などを日本に配信するサービスに対し、消費税を課税する方向で具体策を検討する方針を固めた。現行では、国内からの配信だけに消費税が課税されており、国内事業者から「不公平だ」との不満が出ていた。消費増税で内外事業者間の税負担格差が一段と広がりかねないため、対策が必要と判断した。
消費税は国内の取引とモノの輸入が対象。国内のサーバーから電子書籍や音楽などのデータを配信する場合は「国内取引」として課税されるが、海外のサーバーから配信する場合は、「国外取引」と見なされて課税されない。同じ商品でも、国内事業者から買うか、海外事業者から買うかにより、消費税分だけ価格差が生じることになる。
例えば米アマゾンは、米国のサーバーから配信している。消費税を納める必要がない分、日本の事業者より安い価格で売ることが可能だ。消費税率が引き上げられれば、内外事業者の格差がさらに広がり、国内事業者も海外にサーバーを置いて課税を回避する事態も想定される。
財務省は昨年7月、海外からの配信への課税を検討する有識者研究会を設置したが、政権交代で議論が中断。来年4月に消費税率が8%に引き上げられることが正式に決まったことを受け、政府税調が引き継ぐ。
課題は、海外事業者の納税額を把握できるかだ。消費税は、消費者がいったん事業者に払ったものを、事業者がまとめて納税する仕組み。海外事業者に課税する場合、日本向けの配信額を正確に把握する必要がある。欧州連合(EU)では2003年から、海外からのネット配信に付加価値税(消費税に相当)を課している。海外事業者に配信先の国への登録を義務付けて情報を得ており、日本も参考にする方向だ。ただ、来年4月の増税には間に合いそうもなく、政府税調はとりあえず方向性を示す。
日本のヤフーや紀伊国屋書店など国内のネット事業者は8月、「日本企業は消費税相当額だけ、海外企業との価格競争上、不利な立場に立たされている」として、海外事業者への課税に向けた法改正などを求める声明を出していた。政府税調は、公平な競争環境の整備に取り組む姿勢を示し、増税への理解を得る考えだ。【葛西大博】