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原作作家
明海大学 経済学部
漫画原作作家
星井 博文 (ほしい ひろふみ)氏

2010年04月東進タイムズ掲載

夢をあきらめたときに生まれた夢  自分にしかできない表現を追究したい

原作作家と漫画家の二人三脚で生み出される名作品

 『週刊少年ジャンプ』誌上で連載中の漫画家を目指す少年を描いた『バクマン。』の人気も手伝ってか、漫画家に憧れる若者が増えている。とりわけ注目を集めているのが、ストーリーを担当する原作作家の存在だ。『バクマン。』『デスノート』を手がけた大場つぐみや、『金田一少年の事件簿』『探偵学園Q』の天樹征丸など、今やヒット作は彼ら原作作家と漫画家との二人三脚によって生み出されている場合が多い。

 「最近の漫画はジャンルも多岐に渡り、漫画家一人で専門知識をフォローするのは難しくなりつつあります」

 そう語るのは、「週刊ヤングジャンプ」で漫画原作作家として活躍している星井博文だ。週刊誌は発行サイクルも短く、漫画家が自身で取材をして作品を仕上げるというのはあまりにも負担が大きい。そうした経緯もあって、絵とシナリオとの分業制が増え、星井のような原作作家の存在が日本の漫画界を陰で支えているのだ。

 今や、日本が世界に誇る一大文化にまで成長した「漫画」。それだけに各出版社では新人賞を設置し、作品持ち込みを奨励するなどして、若き才能の発掘に余念がない。だが、そこからデビューを飾れる作家はほんのひと握りだ。星井はその厳しい現実を、身をもって体験してきた。

 「順調とは対極にありましたよ。まさに、波乱万丈でした」

『週刊少年ジャンプ』編集部のドアを叩いた高校時代

 初めて漫画を描いたのは小学生のとき。絵の上手なクラスメイトに触発されてのことだった。漫画がうまいとクラスでも人気者になれる。

 「漫画って、すごい…!」素直にそう思った。だから必死に、クラスメイトの真似をして描き続けた。ストーリーは、当時流行していた「ドラゴンボール」や「キン肉マン」のようなバトルものだ。真っ白な自由帳を1ページごとに細かくコマを割って、登場人物たちに思いっきりバトルをさせた。30ページなんて、あっという間だった。

 中学生になると、プロの漫画家を志すようになった。大学ノートにひたすら描き続ける日々。中学3年間で描いたノートを積 み重ねると、高さ1m50cmを超えていた。

 高校生になった星井は、『週刊少年ジャンプ』編集部への原稿持ち込みを計画する。執筆に半年をかけた力作を抱え、何のつてもないままに編集部のドアを叩いた。受付を通され、応接室で編集者と一対一になった。

 「自分が描いた漫画を、大人が読んでくれている・・・」

 そんな目の前の事実に、嬉しくて恥ずかしくてずっと下を向いていた。そして、原稿に目を通し終わった編集者の言葉に耳を疑った。

 「なかなか、おもしろいんじゃない?」

 あまりの興奮で舞い上がり、その後は何を話したのかはよく覚えていない。しかし、憧れのジャンプの編集者が自分の漫画を褒めてくれたことと、「担当者がつく」と伝えられたことは確かだ。集英社のビルを出た後、思わずガッツポーズが出た。

 だが、担当者がつくことのありがたさを当時の星井は理解できていなかった。初めての持ち込み、しかも現役高校生に担当者がつくことはほとんどあり得ない。「現役で東大に合格するぐらいにすごいことだ」と気がついたのは、ずっとあとのことだ。この時点で、漫画家になるという夢に対して安心してしまったのだ。

 「漫画家として成功するためにも、まずは大学受験を頑張ろう。そして社会人経験も積もう。本格的に漫画を描き始めるのはその後でも何とかなる」と割り切って、漫画からいったん距離を置いた。

門前払いされた渾身の作品 ようやくプロの入り口へ

 大学入学後、そして社会人になってからも漫画を描き続けた。しかし、中学校の頃からの夢をあきらめたくなかった星井は一念発起して会社を飛び出し、もう一度漫画家を目指して歩き始めようと決意する。

 だが事態は、高校時代のようにうまくは運ばなかった。退職後の3カ月を丸ごと費やして形にした60ページの大作を持って出版社を回る日々。1社、2社、3社・・・完全な門前払いが5社続いた。不安が星井を襲う。だが、職を手放して捨て身で飛び込んだ漫画家への道。あきらめて投げ出すわけにはいかない。どんな小さなヒントも大きなチャンスに変えていけばいい。そう思った星井は、原稿を突き返されるたびに、編集者たちのコメントを一言も聞き漏らさず、糧にしていった。

 「物語の運びに食い違いがある」

 「この場面で、過去のエピソードが入っていたらおもしろいのに」

 「このキャラクターがこんなセリフ、言わないだろう」

 厳しいように聞こえるコメントは、すべて正論だった。漫画の本質を見極めるプロフェッショナルたちの言葉は、大きな価値のある貴重なヒントだ。星井はそのヒントを得るごとに手直しをして、作品を徐々にブラッシュアップしていった。そして6社目、『週刊ヤングジャンプ』編集部にたどりついた。自分の今できる精一杯、いやそれ以上の作品だ。

 「これでダメならあきらめよう」

 その思いを託して、編集者に原稿を手渡した。編集者が原稿に目を通す。未だかつて味わったことのなかったような緊張感。気が遠くなるほどの時間が流れた気がした。沈黙の後、一番欲しかった一言が待っていた。

 「これは、いいですね」

 今度は、興奮して舞い上がるというよりも、大きな安堵に全身を包まれた。ようやく、漫画家としてやっていけるかもしれないと胸をなでおろした。

 だがそれも束の間。担当者はついたものの、まだデビューすらままならない星井を次なる試練が襲う。

  

 それは、「担当者に忘れられてしまう」ことへの恐怖だった。編集部には毎日のように新人が来る。だから星井は、自分の存在をアピールするために32ページ分のネーム*と呼ばれる企画を毎週のように編集部に提出した。そのたびに、担当者からは「ストーリーがおもしろくない」「キャラクターの行動に必然性がない」「こんな展開、都合が良すぎる」と容赦のないダメ出しを受ける。そんな日々が2年も続いた。だがそれが結果的に、漫画家としての成長を後押しした。

 そしてようやく、編集部主催の新人賞で奨励賞と佳作を受賞。プロへの第一歩を踏み出した。賞金70万円のうち、50万円を「迷惑をかけ続けた」両親に送った。

 だが、受賞してからが本当の苦労の始まりだった。何しろ、1年間に何人もの新人が、漫画家として世に出る。

 「そこから生き残りをかけて戦い続けなければならないので、不安でいっぱいでした」

 しかも、いざ星井の作品が掲載されるというときになって、編集長からストップがかかった。星井はまたも、厳しい現実を突きつけられることとなった。

 「この絵のクオリティでは掲載できない」

 *ネーム……漫画を描く際に、コマ割りや絵の下書き、セリフを書き込んだもの。漫画の設計図にあたる。

原作作家への転身 若手を育成することのやりがい

 編集長の言葉にあぜんとした。下積み時代、ストーリー作りと共に、絵を描くことを怠ったことはなかったはずだ。こんなに好きな漫画をあきらめなければならないのか。星井は決断を迫られた。もちろん漫画家を続けたいという思いはある。だが、絵の質が上がるまで待ってもらうことはできない。一方、2年間毎日ネームを書き続けてきたことで物語を作る力は十分についていた。悩む星井に、編集長からまたも声をかけられた。

 「原作者として頑張ってみないか?」

 物語を作る力は評価してもらえていた。その一言で、原作作家・星井博文が誕生した。

 しかし不安は尽きなかった。自分のネームに、はたしてプロの漫画家は納得してくれるのか。

 「この程度なら、原作などなくても自分で描ける」

 そう言われたら原作作家として失格だ。漫画家が認めないネームは出せない。心地よいプレッシャーと「素晴らしいものを提供してみせる」というプライドの、絶妙なバランスで取り組むこの仕事が楽しくてたまらない。

 今、星井は企業広告や専門学校の講師の仕事も手がけるようになり、フィールドも一気に広がった。学校では、生徒たちにかつての自分を重ねて叱咤激励し続ける。

 「どんなことにも怯まずにアタックしていって、砕けたらまたそこで頑張ればいい。評価してもらえるかどうかは、実際に行動してみないとわからないんだから」

 漫画はキャラクターが命である。だから星井の講義では、キャラクターの人物像をより深く形作り、読者にイメージさせるために、キャラクターの履歴書を作る課題を出すこともある。

 「人の成長を手助けできるというのは楽しい仕事です。漫画という自分の得意分野を教えるのですから、とりわけやりがいもある。さらに生徒たちがどんどんデビューしていくのを見るのは、たまらない喜び。そのうち、生徒たちに追い抜かれるんじゃないかな(笑)」

 後継者の育成にも力を注ぐ星井だが、自分自身の目標もしっかり見据えている。

 「『この内容だったら星井にしか書けない』と言われるような原作作家になりたいですね。漫画というものには完成形がない。それだけに難しいのですが、自分にしかできない表現や作品を追究していきたいと思っています。」

 星井の夢は、漫画のストーリーと同じく、どこまでも果てしなく広がっていく。

※文中敬称略

	
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