朝鮮学校近くで、差別的な言動を繰り返した団体や会員らに、京都地裁がきのう、計1200万円を超す損害賠償を命じた。学校周辺での今後の同様な活動も禁止した。判決は、団体側の[記事全文]
古い家の外壁ははがれ、庭の草木は伸び放題。過疎地だけでなく都市部でも、空き家の光景が目立つようになった。2008年の総務省調査では全国の空き家は757万戸。空き家率は1[記事全文]
朝鮮学校近くで、差別的な言動を繰り返した団体や会員らに、京都地裁がきのう、計1200万円を超す損害賠償を命じた。学校周辺での今後の同様な活動も禁止した。
判決は、団体側の言動が、学校の名誉を傷つける民法上の不法行為であるとともに、日本も18年前に加盟した人種差別撤廃条約が禁じる「人種差別」にあたる、と判断した。
条約が「効果的な救済措置」をとるよう裁判所に求めているとして、あえて高額な損害賠償額を算定した。
外国人らへの差別感情をあおるヘイトスピーチが社会問題化しているなか、裁判所が法に照らして、「人種差別」と断じた意義はきわめて大きい。各地でヘイトスピーチを展開している人たちには、司法からの強い戒めと受け止めてもらいたい。
朝鮮学校は以前、隣接する公園を京都市の許可なく占用していた。団体側はこれへの抗議という公益を図る目的があったとし、言動も憲法が保障する表現の自由の範囲内で違法性はない、と主張した。
だが判決は「公益目的とはとうてい認められず、免責される余地はない」と一蹴した。
社会の中の少数者を動物や虫とあざけり、「たたき出せ」などと連呼する言動は、聞く人の心情を傷つける。多様な人々が共生する現代社会の基盤を揺るがす。自由を最大限尊重するこの社会においても、許されていいはずがない。
ユダヤ人排斥を唱えたナチスの台頭が大量虐殺につながった記憶が鮮烈な欧州では、ヘイトスピーチそのものを処罰対象にした法規を持つ国が多い。
日本にはこうした規制はない。法制化の議論もあるが、「表現の自由が制約されかねない」という消極論も強い。
表現行為の規制は「どこまで許されるか」という線引きが難しい。恣意(しい)的な運用の恐れもあり、慎重に考えていくべきだ。
大事なのは、人種差別撤廃条約が持つ普遍的価値を尊重することだ。条約は1965年の国連総会で採択された。「すべての人間が法律の前に平等」で、いかなる場所でも「人種差別は正当化できない」とうたう。
人が人を差別する考え方が、いくたびも悲劇を繰り返してきたことへの反省を踏まえた、人類の到達点である。
「差別は絶対に許さない」という認識を社会全体で共有し、あおるような言動には厳しい姿勢でのぞむ。そういう積み重ねを通じ、憎悪の増幅を私たち自身で抑えていきたい。
古い家の外壁ははがれ、庭の草木は伸び放題。過疎地だけでなく都市部でも、空き家の光景が目立つようになった。
2008年の総務省調査では全国の空き家は757万戸。空き家率は13・1%、8戸に1戸になる。将来は4戸に1戸、3戸に1戸に増えるという試算もある。背景にあるのは人口減少や少子高齢化だ。
親が亡くなった後、空き家を売ったり貸したりしない所有者が多い。改修や解体の費用がない人もいる。遠くにいる相続人だと家の管理に目が届かない。
思い切った手を打たないと、防災や防犯、生活環境、まちづくりに悪い影響が出てくるだけでなく、地域社会の維持が難しくなる。国は本格的な対策を急ぐ必要がある。
これまでは自治体が中心に手を打ってきた。
3年前、埼玉県所沢市が「空き家条例」をつくり、所有者に適正な管理を求めた。市は実態を調べ、所有者に改善を指導や勧告、命令できる。命令に応じない場合、氏名を公表する。条例の施行後、所有者が空き家を解体した更地が増えている。
木造密集地域がある東京都足立区は、勧告によって解体する費用の半分を補助する。雪国の秋田県大仙市は行政代執行をこれまで3回実施し、危険な空き家を強制的に解体した。
空き家条例はすでに200を超える。まだまだ増えていきそうだが、課題は山積だ。
気持ちがあっても、空き家の管理や処分の手続きに困っている人は多い。
空き家を処分するとき、物件を求める人を紹介してくれる。遠くの所有者に代わり、定期的に窓を開けて室内に空気を入れ、郵便物を点検してくれる人をさがしてくれる。空き家のことなら、どんなことでも相談できる、ワンストップの窓口を自治体につくってはどうか。
早めに解体したり、賃貸したりする所有者には、税制上の優遇措置をとる。逆に放置すると税率を高めて、対応を後押しするなどの工夫も必要だろう。
空き家を解体した跡地は、緑地などに転用する。生かせる空き家は若い世代や転勤者の住宅、高齢者の居場所、若手芸術家の居住・制作・発表の場などとして活用を図る。負の遺産ではなく地域の資源と考え、空き家再生を支える仕組みを国と自治体が整えてほしい。
人口は減るのに住宅の新規供給は増えている。ここ半世紀余りの新築拡大路線を改め、中古住宅の活用へ切り替えることが不可欠な時代でもある。