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【政治】政府・自民 公約転換へ TPP聖域5項目 譲歩も2013年10月8日 07時09分 【ヌサドゥア(インドネシア・バリ島)=城島建治】安倍晋三首相は八日、バリ島で環太平洋連携協定(TPP)交渉の首脳会合に臨む。首相は年内妥結に向けた「大筋合意」に意欲を見せるが、政府・自民党は自分たちが関税を撤廃させない「聖域」としたコメや乳製品など重要五項目で、唐突に譲歩する姿勢を見せ始めた。撤廃となれば政府方針の大転換で、明らかな公約違反だが、首相は国民に説明しないまま突き進もうとしている。 自民党は昨年の衆院選で「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対と明記。七月の参院選でも政策集に「重要五項目の聖域を確保する」と掲げた。いずれも党総裁は安倍首相で、繰り返し国民に五項目を守ると約束した。 しかし、バリ島入りしている西川公也(こうや)・党TPP対策委員長は六日、五項目に含まれる関税分類上の計五百八十六品目に関し「(関税撤廃を)検討させてもらう」と明言した。 五百八十六品目の中には、関税を撤廃しても影響が小さいといわれる加工品や、ほとんど貿易で扱われていない品目もあり、石破茂幹事長も「細目の中で検討するものがあればする」と撤廃の可能性を示唆。党内には項目全体でなく、品目ごとなら譲歩もやむを得ないとの空気が広がり始めている。 転換の背景には、日本を取り巻く厳しい交渉環境がある。 仮に五項目を死守すれば、関税の自由化率は93・5%になるが、今回の議長国ニュージーランドは100%の自由化を主張。次回の議長国になる見通しのシンガポールも100%派で、日本への撤廃圧力は確実に強まる。 参加国の中で最も発言力が強い米国も、95%程度を求めているとされる。日本の聖域に踏み込まなければ実現しない数字だ。 そもそもTPPは高い自由化率を目指す交渉。自民党内の慎重派には交渉前から「聖域すべてを守るのは不可能」(中堅議員)との声は多かった。 石破氏は「細目の中で(撤廃を)検討するのは公約変更ではない」と強弁するが、TPPを成長戦略の裏付けにしたい首相が妥結を急ぐほど、日本は譲歩を迫られることになりそうだ。 (東京新聞) PR情報
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