朝鮮学校授業妨害:街宣損賠訴訟 ヘイトスピーチ「違法」 識者の話

毎日新聞 2013年10月08日 東京朝刊

 ◇動画公開違法を評価−−ジャーナリスト・安田浩一さん

 人種差別撤廃条約を根拠とする京都地裁の画期的判決で、示威行為とともに、その映像を公開する行為を違法とした点を評価したい。在特会は実際のデモより、その動画をネット上にアップすることに力を入れている。私の取材でも「動画に共感して参加した」という声が多い。動画を見た100人のうち嫌悪感を抱く99人から批判されても、1人は確実にシンパにできる−−という彼らのネット戦略にメスを入れた。

 ただ判決のヘイトスピーチ抑止効果には限界がある。今回は被害者が明確だが、東京・新大久保や大阪・鶴橋で不特定多数に、もっとひどい差別表現が投げつけられている。法規制も含め国民全体で議論を深めていくべきだ。

 ◇現行法で規制可能−−山田健太・専修大教授

 人種差別撤廃条約を適用し、ヘイトスピーチに対する損害賠償責任を認めた今回の判決は、行き過ぎた差別表現は現行法制によっても規制できることを示した。差別的な罵詈雑言(ばりぞうごん)も表現の自由だといった誤った認識が一部にはあったが、条約批准国として許されるはずがない。判決の積み重ねによって、差別表現の線引きが社会的に合意されていくことや、市民社会で自主的な規制が進むことをまずは期待したい。

 一方、法律による事前規制は、あいまいな定義によって広範囲の表現が対象になり、恣意(しい)的に規制される恐れがある。政府から独立した第三者機関が事後的に救済する仕組みは検討に値すると思う。

 ◇新法制定は危険も−−田島泰彦・上智大教授

 差別を放置していいとはもちろん考えていないが、新たな法規制は時の権力の運用次第で、さまざまな言論にその範囲を広げられる可能性があり、弊害が大きすぎる。恣意的な運用や、在特会とは逆の立場からの批判的な言論も処罰の対象になる恐れも出てくる。特に日本のように公権力が強い国では危険だ。

 平等や差別是正という価値に重きを置きすぎると、民主主義の根幹を成す表現の自由とのバランスが崩れかねない。基本は、メディアも含めた社会的な批判や世論という市民社会の中で解決していくべき話であり、現行法の中でどういう対応が可能かをもっと模索するしかない。どうしてもできない場合のみ、新しい規制に移るべきだ。

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