「歴史認識」をめぐり、日本をおとしめようとする動きが収まらない。今月上旬にインドネシア・バリ島で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の場でも、中国や韓国は歴史問題を理由に日本との首脳会談を拒否した。日本が事なかれで対処してきた間に、中韓両国内だけでなく、国際世論に影響を与える米国を舞台に誤った歴史認識の“事実化”が進んでいる。
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雲一つない秋空が広がった9月14日午後、米カリフォルニア州サンフランシスコ郊外のソノマ州立大のキャンパス内にある湖のほとりで「太平洋戦争追悼碑」の除幕式が開かれた。石碑には英語と中国語で「太平洋戦争の犠牲者を追悼して」と刻まれていた。
「太平洋戦争とは『忘れられたアジアのホロコースト(大量虐殺)』なのです。約3500万人という犠牲者数は、現在の米国で人口の多い約25都市をあわせても及びません」
100人を超す出席者の前でこう訴えたのは同大教授のジーン・チャン。戦時中に中国・広東で幼少期を過ごしたというチャンの専門は数学だが、大学の社会人教育授業で、日本兵に銃口を突きつけられたという自分の体験を交えながら日中戦争について教えている。
全米主要都市にはユダヤ人大量虐殺に関する博物館があり、米国民がホロコーストを学ぶ機会も多い。チャンがまったく性質の異なるホロコーストと旧日本軍による行為を結びつけたのは、日本がナチス・ドイツと同様に「犯罪国家である」と印象付けるねらいがあるとみられる。
続いて演説したチャンの夫のピーター・スタネクも「われわれの目的は日本軍の歴史について理解を深めることだ。平和はいま存在しない」と語気を強めた。
「日本食は口にしない」(チャン)というスタネクは、米国において反日キャンペーンを展開する「世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)」の会長を務める。1994年に設立された抗日連合会で初の非中国系会長である。
同州に本部を置く抗日連合会は南京(虐殺)、捕虜虐待、731部隊、慰安婦などについて「日本に謝罪させ、賠償させる」ことを主目的としている。
戦犯裁判や対日講和条約での日本の責任受け入れを一切認めない点で明白な反日組織である。2007年に米下院で慰安婦決議を実現させるなど、全米でみられる反日運動の主導的役割を担う存在といえる。