「表現の自由」割れる賛否 ヘイトスピーチ規制
露骨な差別表現を浴びせる街頭宣伝は朝鮮学校を標的にした京都の事件後も続き、最近は在日コリアンが多く住む東京・新大久保や大阪・鶴橋で「朝鮮人をたたき出せ」などと叫ぶデモが社会問題化している。倫理的な側面から非難する声は強いが、「民族」といった抽象的集団へのヘイトスピーチを規制する是非は、表現の自由の観点などから意見が分かれる。
「人種的憎悪や民族差別をあおり立てる言動をなくすことに日本は真剣に取り組むべきだ」。相次ぐ在特会の街宣に対して日本弁護士会連合会は5月、反対声明を発表した。日本が加盟する人種差別撤廃条約は人種や民族集団への憎悪の表明や差別の扇動を禁止。国連の人種差別撤廃委員会は朝鮮学校への街宣に言及して日本に法規制を勧告している。
ヘイトスピーチ規制は、対象が特定の個人や団体の場合、刑法の侮辱罪や名誉毀損罪が該当し得る。一方、「○○人は劣等民族」といった、個人や団体を特定しない、集団へ向けた差別表現を禁じる法律はない。
法学者の間には、さまざまな意見がある。
京都大の毛利透教授(憲法学)は「個人への脅迫などが許されないのは当然だが、集団への差別表現は政治性を帯びるため、表現の自由を尊重すべきだ。政府が言論を押さえつける際に規制を乱用する恐れもある。非道徳的なことと規制は分けて考え、規制は最小限が望ましい」と話す。
一方、龍谷大法科大学院の石埼学教授(同)は「ヘイトスピーチは差別される側の地位をおとしめて排除し、黙らせる。表現の自由そのものを奪いかねない行為で民主主義をゆがめる」とし、「マイノリティーへの憎悪をかきたて、集団へ屈辱的ならく印を押しつける場合に限るなど、厳密な構成要件を設けた上で強度の規制を加えても憲法上許される」と提案する。
【 2013年10月07日 22時20分 】