ヘイトスピーチ賠償命令:「人種差別で具体的損害」
毎日新聞 2013年10月07日 22時16分(最終更新 10月07日 23時17分)
京都朝鮮第一初級学校(京都市)の校門前で行われた街頭宣伝などを人種差別と認定し、約1226万円の損害賠償を命じた7日の京都地裁判決は、「人種差別が具体的損害を生んだ場合に初めて賠償を命じられる」との判断枠組みを示した。その上で、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」による街宣によって、学校が混乱の対応に費やした時間や労力を損害と認定し、賠償額を算定した。いわゆるヘイトスピーチ(憎悪表現)に対し、違法性と人種差別を認めた司法判断は初めて。
在特会の街宣について、橋詰均裁判長は「著しく侮蔑的な発言を伴い、在日朝鮮人の人権を妨げる目的がある」と批判し、人種差別撤廃条約が禁じる人種差別に当たると指摘。ただ、「単に人種差別行為がされたというだけで賠償を命じることは、新たな立法なしにはできない」と述べた。
今回のケースは、業務妨害や名誉毀損(きそん)などの損害が発生しているとして、民法に基づき損害賠償を命じられると判断。賠償額については「人種差別に対する効果的な保護、救済となるよう定めなければならず、高額とならざるを得ない」と述べ、差別的行為に厳しい姿勢を示した。
在特会側は「街宣は公益性があり違法でない」と反論したが、判決は「実力行使を伴う威圧的な態様で、公益を図る目的の表現行為とは到底言えない。いわゆる悪口だ」と退けた。
また判決は、在特会側が街宣の様子を撮影した映像をインターネットで公開したことについても「差別意識を世間に訴える意図のもとに公開した」と述べ、不法行為に当たるとした。
訴訟は同校を運営する京都朝鮮学園が、在特会と元メンバーら9人を相手に、3000万円の賠償と半径200メートル以内での街宣禁止を求め、判決は街宣も禁じた。判決によると、メンバーらは2009年12月〜10年3月、「朝鮮学校を日本からたたき出せ」「何が子どもじゃ、スパイの子やんけ」などと拡声機で怒号を浴びせた。【石川淳一、松井豊】