ヘイトスピーチ賠償命令:「安心して学べる」保護者、安堵
毎日新聞 2013年10月07日 23時07分(最終更新 10月07日 23時13分)
ヘイトスピーチ(憎悪表現)を司法が初めて「人種差別で違法」と判断した。「在日特権を許さない市民の会(在特会)」に、京都の朝鮮学校への損害賠償と街宣活動禁止を京都地裁が命じた7日、原告側に「これで子供たちが安心して学べる」と安堵(あんど)が広がった。在特会のデモが繰り返される東京・新大久保と大阪・鶴橋も判決支持一色だが、法律による規制には慎重な声も聞かれた。【松井豊、寺岡俊、黒田阿紗子】
主文の内容が京都地裁前に詰めかけた原告の支援者や朝鮮学校の保護者に伝わると、大きな歓声が上がった。
原告側の京都朝鮮学園の孫智正(ソン・チジョン)理事長(56)は判決後、記者会見で「朝鮮学校に通う子供に向けられたヘイトスピーチの悪質性を認めた。日本社会に広がるヘイトスピーチ的な言動を抑止する点でも有効だ」と語った。
「判決を聞いて涙が止まらない。事件は朝鮮人として生きる私たちの日常を踏みにじった」。当時5年の長女を通学させていた母親(45)は会見で目を潤ませた。その後の集会でも「日本社会の中で私たちが胸を張って生きていける土壌があるのだと感じて胸が熱くなった。互いに手を取り合って未来ある子供たちを育てたい」と声を震わせた。
これに対し、在特会の八木康洋副会長は判決後、硬い表情で「我々の行為が正当と認められず非常に残念。控訴するかどうかは判決文を精査して考えたい」と語った。
【ことば】在日特権を許さない市民の会(在特会)
在日韓国・朝鮮人が特別永住資格などの特権(在日特権)を不当に得ていると主張し、その撤廃を目的に2007年ごろから活動を始めた。デモや集会などの街宣活動を展開し、活動の様子を撮影した動画を投稿サイトにアップし、支持を呼び掛けてきた。在特会のホームページによると、会員数は1万人を超えるという。
◇コリアンタウンで反応さまざま
在特会がデモを繰り返す新大久保。「朝鮮人をたたき殺せ、という汚い言葉に嫌悪感を抱いていた。街宣禁止命令は当然です」。40年以上も生花店を営む篠崎カツ子さん(71)はデモを思い出し、顔をしかめた。
韓国アイドルのファンで新大久保を訪れた東京都在住のアパレル店勤務の女性(25)は「このままでは海外で日本の印象が悪くなると心配だった」と判決を歓迎。「それでもなくならなければ法律で規制するしかない」