解説:ヘイトスピーチ違法性認定…法規制議論に一石
毎日新聞 2013年10月07日 13時53分(最終更新 10月07日 16時22分)
京都朝鮮第一初級学校(京都市)校門前での「在日特権を許さない市民の会(在特会)」による街宣活動を7日の京都地裁判決は「人種差別に当たる」と明確に認定した。
大阪・鶴橋や東京・新大久保など多くの在日コリアンが暮らす地域で、「殺せ」「出て行け」などとコリアン排斥を呼び掛ける街頭宣伝活動が「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」として社会問題になっている。そうした中、今回の判決は画期的だ。
日本も加入する人種差別撤廃条約の第1条は、人種や民族に基づく区別や排除などを「人種差別」と定義。第4条では人種差別の根絶や、差別を扇動する宣伝活動などの処罰を加入国に求めている。日本では4条を「留保」し、この条約に基づく国内法は未整備だが、欧州を中心とした多くの国では規制法が整備され、その対象犯罪は「ヘイトクライム」「ヘイトスピーチ」と呼ばれている。
今回の判決は在特会の行為を「ヘイトスピーチ」とは表現しなかったが、「著しく侮辱的、差別的な多数の発言を伴う」として条約が禁止する人種差別と認定。公益目的も否定し違法性が阻却される余地はないと断じた。実質的にヘイトスピーチの違法性を認定したといえ、今後、国内の法規制議論が活発化することが予想される。
一方、戦前・戦中の経験から、「表現の自由」の規制に慎重な意見は多く、当局による恣意(しい)的運用による言論への萎縮を懸念した消極論も根強い。ただ、街頭で公然と繰り広げられているヘイトスピーチを放置できないのは明らかだ。東京五輪も控え、人種的・民族的差別をなくす取り組みを速やかに進めるべきだ。【松井豊】