福島第1原発事故:野生キノコ出荷規制、品種別に 風評払拭目指す 国、福島県方針
2013年10月05日
福島第1原発事故の影響で福島県内の野生キノコの出荷が規制されている問題で、県と林野庁は、食用49種すべてを一括規制する現行制度から、放射性物質の吸着率の低い品種を調べた上で解除する個別規制に改める方針を固めた。野生キノコは東京電力の賠償対象から除外されるケースが多く、今年もシーズンを迎えた業者は経営難に陥っている。品種ごとの吸着率調査はこれからだが、県は個別規制の導入で風評を払拭(ふっしょく)し、「安全なキノコ」を流通させたい考えだ。【栗田慎一】
野生キノコは現在、食用49種のうち1種でも基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えると、採取された市町村で全種が出荷できなくなる仕組み。県は2011年4月から野生キノコを対象にした放射性物質モニタリング調査をしているが、規制対象となる市町村は増え続け、4日現在、会津地方西部の8町村を除く51市町村で国が出荷を規制している。
県林業振興課によると、県内の空間放射線量が低減傾向にあるのに、野生キノコの出荷規制が広がっている背景には、風雨の影響がある。樹木の幹や枝葉に付着した原発由来の放射性物質は、風や雨によって次第に地面に降下。土壌の汚染が進み、地面に生える野生キノコからの検出値が高くなっている。
一方で、2年余にわたるモニタリング調査の集積データから、品種ごとに検出値に差があることも判明。一括規制は「科学的でない」との考えが県と林野庁の間で共有され始めた。
ただ、「山を除染しない限り、土壌に吸着しやすいセシウムは山から消えない」(同課)ことに変わりなく、野生キノコの生育環境はある時期まで悪化する恐れがある。
25年前の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で一部の野生キノコの中には今も高濃度のセシウムが検出されているが、県内品種と異なるため参考にできなかった。
品種ごとの吸着率特定は、こうした土壌汚染の進行具合との兼ね合いもあり、長期間かかる見通しだ。
◇「キノコ銀座」客足激減−−猪苗代
吾妻連峰から猪苗代町の市街地へ縦走する国道115号。秋口になると、通り沿いに建つ販売所でマツタケなど野生キノコを買う関東地方からの観光客でにぎわった「キノコ銀座」だったが、原発事故で客足は激減している。