◇コカ・コーラ東海クラシック<最終日>
コカ・コーラ東海クラシックを初制覇し、ガッツポーズで喜ぶ片山晋呉(布藤哲矢撮影)喜=三好CCで
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▽6日、愛知県みよし市、三好CC西C(7315ヤード、パー72)▽晴れ、気温28・8度、風速1・3メートル▽賞金総額1億2000万円、優勝2400万円▽69選手(うちアマ1人)▽観衆8210人
かつての賞金王が鮮やかによみがえった。首位と4打差の7位タイからスタートした片山晋呉(40)が1イーグル、5バーディー、2ボギーの67をマーク。通算7アンダーで並んだ星野英正(36)、冨山聡(35)=SMGインターナショナル=と三つどもえのプレーオフを制し、どうしても勝てなかったこの大会で初優勝、2008年三井住友VISA太平洋マスターズ以来となる通算27勝目を挙げた。4位にはこの日2イーグルをマークした地元の上井邦浩(30)=三好CC=が入り、首位スタートの武藤俊憲(35)=赤城CC=は5位タイ、2位から出た宮里優作(33)は13位タイに終わった。
5年分の思いを込めたウイニングパットが決まると、片山は天を仰いだ。「自分が一番待っていた。本当にうれしいです。どえりゃーいっぱいのファンが勇気をくれました」。三好を埋め尽くしたギャラリーにもリップサービス。劇的な、久しぶりの、そして因縁を克服する、さまざまな気持ちが詰まった優勝に喜びを爆発させた。
同じ組で回った星野と、抜きつ抜かれつのつばぜり合いを楽しんだ。「ヒデがすごくいいゴルフをしていたから、目の前の相手に集中できた」。ハイライトは17番。1打リードしていた星野がロングパットを沈め、バーディーを奪った。
だが、片山もひるまない。負けじとバーディーで応酬。最終18番で並ぶと「勝率がいいし、好き」というプレーオフに。星野がティーショットをラフに入れ、冨山が第2打を池ポチャする中「会心だった」というティーショットをフェアウエーど真ん中に落とし、勝負を決めた。
長かった。苦しんだ時もあった。2009年のマスターズで日本人最高の4位に入ってから燃え尽き症候群に陥った。「どうしたらいいか分からなかった。練習もしたくなかった」。思い悩んだとき、同じ永久シードの大先輩に教えを請うた。一緒に練習ラウンドした中嶋常幸に「ゴルフが嫌になったことはありますか」と思い切って聞いた。返ってきた答えは「おまえは炭でいろ。灰になっちゃいけない。炭はどんなに小さくても、いつか火がつく時があるから準備だけはしておけ」。胸に刻み、心に小さな種火をともし続けた。ラウンドでのあらゆる状況をデータ化し、克服するために地道な練習を繰り返してその時を待った。
この大会は昨年まで15回出場してベスト10に12回入るなど、相性はいいが不思議と勝てなかった。昨年もプレーオフの末惜敗し「悔しい帰り道だった」と振り返る。そんな因縁もついに払拭(ふっしょく)した。
片山はこの優勝を「復活」ではなく「新生」と位置付ける。「下からまくって勝つのはあまり経験がなかったし、またできそうな雰囲気も出た。次は日本オープンだなと欲も出た」。2週間後には地元茨城で日本オープン。それだけではない。「10回チャンスがあるので1回は」という40代賞金王、そしてマスターズ。通算27勝目はその第一歩だ。 (川村庸介)
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