まさおっちの眼

生きている「今」をどう見るか。まさおっちの発言集です。

青春哲学の道(8)

2008-09-23 | 自叙伝「青春哲学の道」
(前編をお読みでない方は左下のカテゴリーの「小説」をクリックすると収録されています)

さて、経済雑誌業界というものはどういうものか。筆頭に立つのが、昭和31年総理大臣になった石橋湛山を輩出した週刊「東洋経済」。これは経済誌の中でも別格で、広告や金でペンを折らない唯一の経済誌といってもいい。それから週刊「ダイヤモンド」、「実業の日本」「フォーブス」「プレジデント」などが出版社としてある。しかし経済誌は売れないので東洋経済やダイヤモンドでも発行部数6万部前後だ。これらに次ぐ経済誌は「トリ屋」的なところが殆どだ。「トリ屋」というのは、企業に食い込み、広告を取るということだ。もともと昭和30年代、小学館の週刊ポストや講談社の週刊現代が発刊され、広告スポンサーを得るため、梶山秀之などトップ屋を使って企業のスキャンダルやスクープ記事を書かせた。そこに雑誌に企業が金を出す下地が出来て、この30年代に経済誌の創刊が相次いだ。三鬼陽之助の「財界」、それまで議員会館の廊下トンビで「フェイス」を発行していた佐藤正忠が改題した「経済界」、財界の編集長をしていた飯塚が3万人のための情報誌として独立した「選択」、同じく財界出身の針木の「経営塾」(のちBOSSに改題)、若林の「インテリジェンス」、インテリジェンスの副社長をしていた渡辺の「リベラルタイム」、鳥飼の「財界展望」、油井の「実業界」、久保の「ジャパンポスト」、大河原の「実業往来」、そこの編集長をしていた荒川の「実業公論」、そして実業公論の営業をしていた高橋の「財界にっぽん」などが市販されていた。市販と言っても書店に並んでいるという広告を取るための口実だけで、実売部数は殆ど1万部を切っていた。しかし、雑誌コードを得て市販しているのはまだいい方で、雑誌コードのない経済誌がそのほか多数あった。経済誌で成功するのは、声が大きいこと、厚顔無恥であること、金に執着すること、権力欲を持っていることなどが上げられる。ジャーナリストとは程遠い世界だった。そういう主幹、あるいは社長が、ペンを武器に、財界人に食い込み、広告やPR代と称して金をせびるのである。なかでも「経済界」の佐藤正忠はその典型だった。ステッキを編集者の机に打ち続け「銭の取れる記事を書け」と叱咤した。銭の取れる記事というのは、広告を取るための企業スキャンダルのことである。それらは企業を脅す材料にも使われる。「経済界」はそうやって年商80億円にもなり、ある財界人に「所詮トリ屋が80億もとっちゃあいかん」と嘆かせた。経済小説家の高杉良が週刊朝日で佐藤正忠の娘婿に聞いた同人をモデルとした「濁流」という小説を連載、単行本にもなった。新日鉄の永野重雄から土地を譲り受けたり、ミサワホームの三沢社長に脅しをかけたり、一字だけ変えてあり小説とは言っていながら、それらはすべて事実だった。佐藤正忠はこの小説に激怒し、朝日新聞社を名誉毀損で訴えた。そうすると、どう和解したのか定かでないが、それ以降朝日新聞に「経済界」の広告が載るようになった。また商社のイトマンの河村社長にも脅しをかけ、一億円をせしめた。また、鳥飼の「財界展望」と油井の「実業界」は、タタキ記事とちょうちん記事ばかりだった。広告をくれない企業をタタキいて見せしめにし、広告を取る政策に徹底していた。企業は広告では目立つので、記事広告と称し、有料の記事広告、いわゆるちょうちん記事を載せるようになった。「ジャパンポスト」の久保は事件屋というタイプだった。久保は児玉誉士夫と一緒に大陸に渡った仲で、恐喝事件で四度も逮捕されている。特に東京ガスには食い込んだ。というのも、東京ガスの安西浩会長が副社長の時、社長の座を10年も禅定されず、児玉誉士夫を使って、前社長を追い出し、社長の座を射止めたのである。それを知っている久保は東京ガスと関連企業から多額の広告料をせしめていた。また、「財界にっぽん」の高橋社長に話しを聞いたことがあるが、企業の担当者の接待や、高価な壷を担当者にやって広告をとったり、そちらのほうが忙しいので、自分の雑誌など何が書かれているのか見たことがないと言っていた。経済誌では編集者の地位は低かった。それは領収書代わりの雑誌さえつくればよかったのである。それから最近「リベラルタイム」が公明党の矢野元委員長を連載で叩いているが、これも創価学会とのバーター記事である。創価学会の広報部長が、金を積んで書かせているのである。これらから見ると、実業公論は可愛いほうだった。もともと経済誌は営業に強くなければ成り立たない業界だが、荒川社長は編集出身だから「報道は社会の公器」と真面目だった。しかしその反面、広告はとれず、社内はいつも火の車だったのである。
ジャンル:
文化
キーワード
児玉誉士夫 ちょうちん 雑誌コード レジデント 週刊ポスト 朝日新聞社 ミサワホーム フォーブス
コメント (1) |  トラックバック (0) |  この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加 mixiチェック
« ある男 | トップ | 青春哲学の道(9) »

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
制度悪用情報収集術 (永野)
2010-04-01 00:31:54
技術士(金属)の答案回答は各社のノウハウが把握できて楽しいとある鉄鋼大手関係の先生が言ってた。

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL

あわせて読む