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竹中平蔵氏が考える、投資家のとるべき行動

「日本経済余命3年」から考える、投資家のとるべき行動とは?

2012.09.11

キャピタルフライトは自然な行為

---海外の資産に日本の個人投資家のおカネが行ってしまうと、日本の銀行に預けるおカネが減って、その結果国債を買えなくなる。財務省はこれを嫌がり、個人投資家の海外投資を規制したいのではないかという意見もありますが。

今は静かなキャピタルフライトが起き始めていると言える状況。 そういうことに危機感を持っている人は、財務当局の中にいると思う。

しかし、だからといって、いくらなんでもそれを規制することはできない。海外投資に規制がかかると心配する人がいるかもしれないが、そういう意味での危機感をもつ必要はないと思う。資産の健全な運用ということを考えると、海外の資産におカネが流れるのは自然な行為だ。

アルバート・ハーシュマンという開発経済学の権威が、おもしろいことを言っている。「世の中を変える力はつねに2つある。それはVoice(声を上げる)とExit(出口)だ」。まず、「今の政策じゃダメだぞ!」と声を上げる。しかし、ずっと声を上げ続けても政治は変わらない。であるならばExitから出ていく、出口から出ていくという意味だ。

たとえば今、日本の企業が空洞化で海外に移転しているのも、実はもうVoiceでは空しくて、Voiceではダメで、Exitに少しずつ向かいつつあるという状況なのだと思う。 個人のキャピタルフライトも同様。

日本全体からみると情けない話だが、しかし、ひとつひとつの企業、ひとりひとりの個人はもうそんなことを言っていられない。今、日本ではそういう行動が目立ち始めているということではないか。

---個人のおカネが海外に出て優良資産に投資をした結果、利子・配当という形で日本に帰って来ると、貿易黒字が減る見通しの中で、逆に日本の経常収支にとっていいという考え方もありますが?

おっしゃる通りで、それが一つの成熟した国際収支のパターン。実はこの10年くらい、日本の商社はすでにそういう行動をとっている。資源等々に積極的に開発投資をして、そのリターンはすでに数兆円規模に達している。その結果、日本の貿易黒字は減っているが、所得収支の黒字は増えている。所得収支で稼ぐのが成熟した経済のパターンであり、日本もその姿に近づいている。

---リスクをとって海外投資をしようとしている個人投資家の方々にアドバイスを。

自分が持っている資産総額の関係で、どれくらいのリスクがとれるかを明確に判断することが必要。

一つの通貨やリスクの大きい資産にたくさんの資産を回すのは、賢い投資家のやり方ではない。

しっかり手元の流動性を確保し、自国の通貨もある程度はキープする必要がある。

しかし、しっかりとリターンを稼げるように、ある程度のリスクはとることも大切だ。そして、ローリスク、ミディアムリスク、ハイリスクのバランスをしっかりと考えるべき。 自分の将来の所得計画をちゃんともって、自分がどれくらいの資産を運用できるのかを明確に判断することが必要だ。


竹中平蔵(たけなか・へいぞう)慶応義塾大学教授・
  グローバルセキュリティ研究所所長

1951年生まれ。一橋大学卒業後、日本開発銀行を経て、ハーバード大学客員研究員。87年大阪大学経済学部助教授、90年慶応義塾大学総合政策学部助教授。98年「経済戦略会議」メンバー、2001年経済財政政策担当大臣、02年金融担当大臣。04年参議院議員当選、経済財政政策・郵政民営化担当大臣

高岡壮一郎(たかおか・そういちろう)
  アブラハム・プライベートバンク代表取締役社長

1974年生まれ。東京大学卒業後、三井物産を経て、アブラハム・グループ・ホールディングスを起業。日本最大の富裕層向けプライベートクラブYUCASEE(ゆかし)および、ヘッジファンド等、海外投資に強みを持つ投資助言会社アブラハム・プライベートバンク株式会社(関東財務局金商532号)を経営。http://abraham-bank.co.jp/
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