平成25年3月27日
日中韓、FTA交渉開始−東アジア経済圏目指す
日中韓自由貿易協定(FTA)の第1回交渉会合に臨む日本の鶴岡公二外務審議官(右)ら=26日午前、ソウル(時事)
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【ソウル時事】日本と中国、韓国3カ国間の自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉の第1回会合が26日午前、3日間の日程でソウルで始まった。3カ国間のFTAが実現すれば、国内総生産(GDP)で世界全体の約2割を占める巨大な経済圏が東アジアに誕生する。
沖縄県・尖閣諸島や島根県・竹島をめぐる問題で、日本と中韓両国との関係はぎくしゃくしている。ただ、中国が日本の最大の輸出先となるなど3カ国は貿易、投資などで相互依存関係を深めており、経済面の対話は継続し、今後の関係正常化への道を探る。
日中韓3カ国はFTA交渉に明確な期限を設けないが、早期の妥結を目指す方針では一致しており、精力的に取り組む方向だ。第1回会合では交渉の進め方のほか、知的財産の保護や環境など貿易・投資以外にどのような分野を交渉対象とするかを議論。日本側首席交渉官の鶴岡公二外務審議官は席上「日中韓の経済統合は東アジアや世界にとって重要であり、3国の産業、経済、国民に実り多い結果をもたらすだろう」と述べた。
日本から中国への輸出では、自動車や機械、化学品など全貿易品目の約7割に関税が残り、韓国向けでも約6割の品目に関税が課されている。日本はできる限り多くの品目で関税の撤廃や引き下げを求め、日本経済再生に向けた輸出拡大につなげたい考え。また投資やサービス貿易に関する交渉で日本は韓国と連携、中国に市場開放などを迫る。
一方、日本が高関税で保護するコメをはじめとする農産品では、中国と韓国が大幅な市場開放を求める公算が大きく、交渉の難航も予想される。
【解説】 日 中 韓 F T A
日本、中国、韓国が3カ国間で締結を目指している自由貿易協定(FTA)。日本の輸出相手国として中国は1位、韓国は3位を占めるなど、3カ国間の経済関係は緊密なため、FTAを通じて関税や非関税障壁の削減が進めば貿易・投資がさらに活発化し、大きな経済効果がもたらされるとみられている。関税の撤廃・削減では、例外品目の設定などで各国の事情が配慮される見通し。2012年11月に日中韓の貿易担当相が会談し、交渉開始を宣言していた。
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【解説】 日本、中国と初のFTA交渉−韓国と連携模索も
【ソウル時事】日本政府は締結交渉を26日スタートさせた日中韓3カ国の自由貿易協定(FTA)を「FTAの本丸で、極めて重要」(外交関係者)と位置付ける。日本の2国間貿易額で中国は最大、韓国は第3位の相手国だからだ。3カ国の枠組みとはいえ、日中両国がFTA締結を前提に交渉するのは初めて。日本側は交渉前進に向け韓国との連携も模索する。
ただ、日本と中韓両国は領土や歴史認識をめぐり対立が続く。3カ国は「特定国家間で関係がぎくしゃくしている状況とは関係なく、FTAは3国にいいこと」(韓国外務省)と政経分離を強調するが、経済連携だけを先行させられるかは不確かだ。
FTA交渉で日本は中韓両国の工業品の関税引き下げを狙う。中国の関税率は乗用車25%、液晶部品5〜12%、工作機械9・7%などで、韓国は板ガラスや自動車部品に8%の関税を課している。中国での知的財産権の保護強化や、行政手続きの透明性向上も課題だ。
一方、日本は中韓両国からの輸入品目の約3割に関税を課している。農林水産品のほか、中国からの衣料品や履物、韓国からの化学工業製品などが主な対象だ。農業大国の中国からの輸入増大には韓国も警戒しており、日本の通商関係者は「農林水産品の守りでは日韓連携も可能」とみている。
しかし、韓国については2012年5月に始めた中国との2国間FTA交渉を優先し、「対中貿易で日本より優位に立つ」(別の通商関係者)戦略との見方もある。3カ国の交渉の前進は、韓国の思惑にも左右される。
26日の首席交渉官会合を終えた鶴岡公二外務審議官は「日中韓で意味のあるFTAを実現するには数々の課題はあるが、今後の進展に向けた土台をつくれた」と語った。3カ国は今後、課題に応じ作業部会を設け、関税撤廃の例外扱いなどについて具体的な協議を進める。
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