米シェールガス革命が日本に波及! 既存の高価格LNGから脱却

2013.03.24


安倍首相(左)との会談でシェールガス輸出に前向きな姿勢を見せたオバマ米大統領(共同)【拡大】

 米国のシェールガス革命がいよいよ日本にも及んできた。2月の日米首脳会談でオバマ大統領がシェールガスの対日輸出に前向きな発言をしたことで、商社など民間が早くも動きだし、プロジェクトが立ち上がっている。これまで値段の高いLNG(液化天然ガス)輸入で貿易赤字を膨らませてきた改善策につながるかどうか。

 日本のLNG輸入は1970年代から一貫して増加してきた。天然ガスの大きな特徴は、熱量が高いにもかかわらず、二酸化炭素排出量が石油や石炭に比べて少ないことだ。発電コストも他の燃料に比べて安いため欧米や日本では積極的に使われてきた。ただ、欧州が産地(主にロシア)からパイプラインで運ぶのに対して、日本は産地で液化してLNGとして輸入するのでその分、コストがかかるというハンディがある。

 LNGの輸入が急増したのは、東日本大震災で福島第1原発事故が発生、続いて全国の原発が停止あるいは再稼働中止に追い込まれてからである。2011年度のLNG輸入量は、前年度から1262万トンも増加して8318万トンになった。12年度にはさらに輸入量は増えている。貿易統計でみると、12年は、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6兆9273億円と過去最大の赤字となった。LNGの輸入額は震災前の10年は約17兆4000億円だったが、12年には約24兆1000億円にまで膨らんだ。輸入額に占めるLNGの割合も28・6%(10年)から34・1%(12年)に拡大した。

 LNG輸入のもう1つの問題は、既存の輸入先の価格が高いことだ。輸入先国はマレーシア、カタール、豪州、インドネシア、ロシアなどだが、長年の取引慣習により、価格は原油価格に連動してきたからだ。安定供給に力点を置いた長期契約で、いわば日本は「売ってもらう」という姿勢が、売り手優位の状況をつくってきた。特に、震災後はLNG依存度を高めたことにより、いわば足下を見られる形になった。

 世界最大のLNG輸入国である日本は、100万BTU(英国熱量単位)当たり約17ドル(約1630円)という世界一高い値段で買わされ続けてきたのである。隣の韓国は運賃込みで10ドルで買っているのに。エネルギー輸入にいかに鷹揚(おうよう)であったがわかる。

 そこへシェールガスの輸入が実現する方向となった。なんといってもシェールガスは米国内では100万BTU当たり3ドル(約288円)だ。日本に持ってくるにしても、現地で液化して輸送費を含めても10〜13ドルと見積もられる。米国のシェールガスは、原油価格と連動などしておらず、あくまでも需給とコストで決まる。しかも埋蔵量はかなりある。

 米大統領の正式な輸出許可が下りれば今年後半からでも低価格の米産シェールガス(LNG)の輸入が始まる。そうすると、既存の輸入先との価格交渉は日本が優位に立って行うことができる。既存の輸入先に対して“切り札”を提示できるからだ。

 一方、天然ガスの輸出大国であるロシアは、シェールガスの欧州への波及を懸念して日本をはじめとするアジア市場へ販路拡大を意図しはじめた。日本への売り込み攻勢をかけてくると期待される。これもシェールガス効果といえるだろう。世界のエネルギー供給の地図が塗り替わってきたのを活用しない手はない。(産経新聞編集委員・小林隆太郎)

 

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