悲惨な引退試合になるところだった。七回終了時で0-3とリードを許し、今季22度目の完封負けがチラつく拙攻モード。「5番・右翼」で先発していた主役の桧山も八回からベンチへと下がってしまった。
このまま送り出すことはできない。必死の思いを逆転勝ちへとつなげた。いつもクールなキャプテン、鳥谷も「最後に勝つことができてよかったです。ひー(桧山)さんの引退試合だったので、勝ててよかったです」と胸をなで下ろした。
虎戦士誰もが「勝ってよかった」と安堵の表情を見せた。桧山にウイニングボールを手渡したのは、志願登板した東洋大の後輩・福原だった。「『引っ張ってやってくれ』と言われました。僕が(阪神に)入ってから15年間、投手と野手で違いますが、勉強させてもらった。寂しい。みんなでがんばって(日本一を達成)できたらいい」と感謝の気持ちを口にした。
涙はまだ見せない。桧山の忘れ物、『悲願の日本一』を全員で取りに行く。 (西垣戸 理大)
(紙面から)