日銀の黒田総裁が135兆円のお札を印刷してインフレターゲット2%というから、物価が2%上がる。安倍首相が消費税を3%上げるというから、物価はほぼ3%上がる。
それに電力会社は経営判断を失敗して原発の不稼働に陥り、その責任を転嫁して電気料金を上げようとしている。国民の所得が上がらない中で、5%も物価が上がる、いったい、政治というのは何をしているのだろうか?
消費税の3%あげで6兆円の税収があると計算される。買え控えがないとしての計算だが、安倍首相は5兆円を景気対策にあてるという。そうすると残るのは1兆円で、これに対して国の借金は1000兆円だから、増税しても借金を返して健全な財政になるのに1000年ということになる。
実際には、所得が増えないのに5%だけ物価が上がると、購買量は必然的に5%減る。政府は「どのような計算で増税が財政と社会保障の立て直し」をするのかを数字で示していない。
「増税によって子どもにツケを残すな」というのは実に奇妙な論理で、だいたい、今の政府の借金の債権者(お金を貸している方)は国民なのだから、子どもはツケが残るのではなく、財産が残るのだ。
ところで、アメリカの借金増額に関する議会の了解が得られず、一部の公共施設が運営できなくなったが、アメリカはまだ民主主義が機能していて、「政府が使うお金は国民の代表である議会の承認がいる」ということになっている。
これに対して、日本の場合、「赤字国債の発行」は誰がやっているのだろうか? そして国鉄処理、郵政処理など数10兆円にのぼる税金などの補填の責任も明確ではない。
「国民のお金はどうにでも使える」という現在のシステムを大きく変えなければならない時期であろう。
(平成25年10月3日)
武田邦彦
« 被曝と健康、医療をもう一度、考える 4. 現実の状態と倫理的問題 |
| 被曝と健康、医療をもう一度、考える 5.事故時に許される被曝限度 »