人民新聞オンライン

タイトル 人民新聞ロゴ 最新版 1部150円 購読料半年間3,000円 郵便振替口座 00950-4-88555┃購読申込・問合せはこちらまで┃人民新聞社┃TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441┃Mailto:people★jimmin.com (★をアットマークに)
HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

2012/11/16更新

橋下&維新の会を撃つ!

エスタブリッシュメントめざす橋下の「被差別部落」への近親憎悪

部落解放人権共闘会議/反差別統一戦線議長 松裏功三さんに聞く

「橋下徹のDNAをさかのぼり本性をあぶり出す」─こうアオリ文句が付けられた『週刊朝日』10月26日号が、「緊急連載」と銘打って「ハシシタ─救世主か衆愚の王か」という記事を掲載した。

この『週刊朝日』の記事を受けて、橋下市長は「血脈主義、身分制に通じる極めて恐ろしい考え方だ」と批判し、一時は朝日新聞や朝日放送からの取材拒否を表明した。

今や政界再編のキーマンとして連日マスコミをにぎわしている橋下だが、「同胞」である被差別部落の人々は、どういう思いを持っているのだろうか。「部落解放人権共闘会議/反差別統一戦線議長」の松裏功三さんにお話をうかがった。(編集部一ノ瀬)

──橋下の大阪府知事就任から4年半以上が経ちました。彼の施策によって、被差別部落への影響は出ていますか?

松裏…橋下は被差別部落や部落解放同盟に対して、徹底的な切り捨てを続けています。橋下は、府知事就任後の3月の府議会で、共産党議員の質問に「私はいわゆる同和地区で育ったが、同和問題は全く解決されていない」と答えています。部落差別反対の姿勢をハッキリ打ち出しているように思われていますが、橋下のやってきたことは、その正反対です。

2010年4月に、大阪府が大阪市浪速区にあった「大阪人権センター」(02年に「部落解放センター」から改称)を閉館・解体し、そこに入居していた解放同盟大阪府連が移転を余儀なくされました。当時府知事だった橋下は、財政再建策による賃貸料の減免の見直しと、耐震化工事などでかかる費用負担から、センターの閉館を決めたのです。

また、今年6月に橋下市長は、現在大阪市内に10カ所ある市民交流センター(旧・人権文化センター、青少年会館、地域老人福祉センター)を2014年に全廃する方針を打ち出しました。これらの施設は、市が同和対策事業で作ったもので、地域の解放運動の拠点となってきました。これを橋下は、「被差別部落の問題をひとつひとつ解決していこうと思えば、役割を終えたものはできる限りなくし、普通の地域にしていくのが僕の手法」と語っています。

本人が「差別意識があるからといって、特別な優遇措置を与えていいのかは別問題」(08年3月府議会)と言うように、被差別部落への視線は、差別者と同じです。

彼は、部落差別のえげつなさを実際に知っているからこそ、そこから這い上がり、成り上がるために、必死の努力をした。大阪有数の進学校である北野高校から早稲田大の政経学部と進んで、弁護士になったわけです。そうした努力で「出世」したタイプにはよくありがちですが、同胞であるはずの被差別部落の人間について、近親憎悪のような感情を持っています。

──『週刊朝日』の記事に対する橋下の反応を見て、どう思いましたか?

松裏…朝日のような大新聞社が、ゴシップ誌でもあるまいし、「橋下の出自を暴いてどうすんねん?!」というのはあります。あの記事は、差別を助長するひどい内容です。

ただ、それに対する橋下の反応には、まったく同感できません。「謝り方ひとつ知らないバカ集団だ」「人間じゃない。鬼畜、犬猫以下」「明らかにペンの力での家族抹殺だ。逆に僕は佐野を抹殺しに行かなければならない」…こんな言葉は、人権意識を持って問題に取り組むべき行政組織の長にふさわしい言葉ではありません。あの記事と同じレベルで罵倒合戦をやっても、意味がないのです。

──『週刊アサヒ芸能』11月8日号の「メディア村が報じない『ハシモトvs朝日』戦争の深層」の記事の中で、部落解放同盟中央執行委員長の組坂繁之さんが「私にしてみると、橋下市長も部落問題の本質を理解されているとは思えません」と語っています。

松裏…橋下市長の言動を見ていると、島崎藤村の『破戒』に出てくる主人公・丑松のように、彼自身の内部で「部落隠し」をしていると感じます。母子家庭で苦労してきたようですし、生い立ちを明らかにしないように母親からきつく言われて育ったのでしょう。

エスタブリッシュメントの仲間入りをしたい橋下は、部落出身=不利益だと思っています。橋下には、そうした暴露を「親がヤクザで自殺し、従兄弟が金属バット殺人、上等じゃないか」「二世議員のおぼっちゃまに任せられるのか」などと逆バネにするしたたかさはありますが、そこに被差別部落の同胞に対する情は一切ありません。

週刊朝日に対する批判の記者会見を延々とやっていましたが、私は、そうした橋下の突っ張りの裏にある「部落隠し」の気持ちが伝わってきて、泣ける思いがしました。

あの記者会見が、いわば彼にとっての『週刊朝日』糾弾会なのでしょう。しかし、これまで部落解放運動に携わってきた立場から言わせてもらえば、あれは自分の感情を吐き散らかしているだけ。やはり自分の中で被差別部落と一線を画し、解放運動を嫌悪してきた彼は、反差別の闘いの経験もなく、訓練も受けていません。

橋下自身の差別意識こそ批判すべき

松裏…それから、市職員に対する「入れ墨調査」が問題になりましたが、あれも形を変えた「解放同盟つぶし」です。現業労働者は、被差別部落の雇用対策の意味もあって採用されてきた、といういきさつがあります。入れ墨を入れているのは、若い時にやんちゃをやっていたということでしょうが、だからといって、業務命令で調査する必要があるとは思えません。現業労働者に対するマイナスのイメージをあおって「部落叩き」をし、解放同盟の影響を排除しようとしているのでしょう。

橋下のこれまでの発言をみれば、人権意識に欠けていることは一目瞭然です。また彼の「愛人騒動」や「日本軍『慰安婦』否定発言」の中で見られたように、女性に対しても彼はどう見ても差別者です。そうした橋下の差別意識こそを叩かなければなりません。

──府知事・市長としての橋下をどうご覧になりますか?

松裏…大きく言って、行政は住民に対して、@福祉、A医療、B教育、の3大責任があります。しかし、橋下はこのいずれについても責任を果たしていません。それどころか、切り捨てて、行政の責任を放棄しようとしています。

たとえば、彼が府知事時代に、人工透析患者への自己負担を増やそうとしたことがあります。患者の窓口負担は、年収600万円未満の場合、最大でも月10000円の上限が設けられています。それを3割に上げようとしたのです。しかも、患者がいったん全額を負担し、3カ月に1度、助成金を支払う形にしようとしました。

私も透析を受けていますが、もしそうなれば、透析患者にとって死活問題です。お金がなければ透析できないことになってしまえば、まさに命がけで治療している患者にとって、「死ね」といわれているのも同然です。結局、患者会などの申し入れなどで、この案は撤回されましたが…。

こういう住民の命に関わることについて、橋下は現場のことをまったく解っていないのです。大阪市の「地域密着型バス(赤バス)」廃止や、地下鉄・バスに無料乗車できる「敬老優待乗車証」(敬老パス)の一部有料化は、高齢者の移動を制限するものですし、学校の統廃合や教育格差の推進など、橋下は行政の3大義務をいずれも放棄しています。

行政のトップとして、彼は差別をなくす努力を続けるべき立場のはずです。今回の『週刊朝日』の記事にしたって、父親の情報が出された、というのは、どこかで行政が情報を出したからです。戸籍謄本を作って、出生に関する情報を出しているのは行政ではないのか。そうした意味で、彼は「糾弾される側」の人間でもあるのです。

 HOME社会原発問題反貧困編集一言政治海外情報投書コラムサイトについてリンク過去記事

人民新聞社 本社 〒552-0023 大阪市港区港晴3-3-18 2F
TEL (06) 6572-9440 FAX (06) 6572-9441 Mailto:people★jimmin.com (★をアットマークに)
Copyright Jimmin Shimbun. All Rights Reserved.