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  エデン 作者:川津 流一
17.エレメンタルソウル
 練武場で『真バルド流剣術』の動きを一通り確かめた俺は、奥の屋敷へと向かった。
 『真バルド流剣術』入門中に意識を失ってしまい、アシュレイ=バルドがどうなったのかが気になったのだ。
 西洋風の建築様式。チュートリアルでプレイヤーが集まる事を予定されていた為か、巨大な館だ。
 両開きの大きな扉を開け、中へと進む。
 果たしてそこにはマスターNPCであるアシュレイ=バルドが居たのだが、その佇まいに既視感を覚える。話しかけてみるとやはりというか、「今はお前に何も教える事はない。精進せよ」としか言わない。
 かつて気が遠くなる程聞き慣れたその台詞。
 どうやら『真バルド流剣術』入門は無事に為されたようだが、更に先へのステップはまだ進めないらしい。

 『真バルド流剣術』奥義の壱【神脚】。

 俺は既にこれを獲得している。だが、気になるのはこれが奥義の“壱”という事だ。
 『バルド流剣術』奥義【心眼】獲得の際、【心眼】は【神眼】へと至る通過点に過ぎないと聞いた。
 つまり、『真バルド流剣術』の奥義は【神眼】であったはずなのだ。
 それが奥義の“壱”は【神脚】となると、奥義の弐、奥義の参が存在する可能性が……。

 

 ――――――今を駆ける【神脚】、過…………る【神腕】、そして……来を……す【神眼】。

 

 ……なんだろう。何かとても大切な事を忘れている気がする。
 喉下まで出掛かっているのに出てこないもどかしさ。

 くそ、いつから俺はこんなに物忘れが酷くなったんだ。

 思わず頭を掻き毟る。
 だが、思い出そうとすればするほど記憶の残滓は手から零れていく。
 しばらく悪戦苦闘を続けたが、諦める事にした。

 このまま無理に思い出そうとしても出てこなさそうだ。それに意外と何かの拍子で簡単に思い出すかもしれない。
 今日はまだまだやる事が残っているので、とりあえずそれを先に片付けよう。

 そう結論付けた俺は、練武場を後にした。向かう先はダラスの鍛冶系プレイヤーが集まる職人街。
 姐さんと最後に会ってから既に一ヵ月程経ってしまっている。
 きっと姐さんは俺の事を非常に心配してるはずだ。こんな事ならダラス出発前に姐さんに一声かけてから行けば良かったと後悔するも、今更の話だ。
 早く行って無事を報告し、安心してもらおう。

 

 

 

 
 昼過ぎということで非常に混雑する大通りを抜け、職人街へと足を動かす。
 やはりこの時間帯はプレイヤーが多い。
 道々ではプレイヤー達が露店を開き、自分の商品を宣伝する声が響く。

「高品質の『シャープエッジ』がなんと200K! お買い得だよ!」

「『カラコスの銀槍』300K~。『魔狼の胸当て』250K~」

「ランクAのレア『金剛鬼刀』1M! 早い者勝ち!」

 以前のディスプレイ越しのゲームでも全体チャット等を使って宣伝するプレイヤーはいたが、『エデン』ではそんな機能はない。それぞれの露店で品物を列記した看板等を掲げているが、プレイヤー達の注目を引く為にはやはり声をかけるのが一番だ。
 その掛け声も昔ながらのMMORPGの風習を引きずっているのが面白い。Kが千ルビー、Mが百万ルビーを意味しており、初めて耳にするプレイヤーにとっては意味不明の単語に聞こえるかもしれない。だが、慣れてくるとこれはこれで取引が楽になるものだ。
 そういったプレイヤー達の掛け声を横目にいつもなら気にせず素通りする風景なのだが、今日は違った。

「ヴァリトール討伐についての情報を求む! もしくはヴァリトールの素材らしき物を売買したプレイヤーの情報でも良い!」

 大声を張り上げ、そう叫ぶプレイヤー。思わず立ち止まって彼を見てしまった。
 だが、すぐに自分の行動の迂闊さに気付いて慌てて視線を逸らす。
 幸い、叫ぶ事に夢中の彼はすぐに視線を逸らした俺に気付くことは無かったのでホッと胸を撫で下ろした。そのまま視線を合わさないまま【心眼】で様子を眺める。
 中肉中背で何かの獣の皮をなめした鎧を身に纏い、腰には二本の長剣。
 その胸元には黒い十字架を模したマークが存在を誇示していた。
 その有名なマークを見れば、彼がどこの所属かは一目瞭然だ。

 ギルド『ブラッククロス』。『シルバーナイツ』と双璧を成す『エデン』最大のトップギルドだ。

 だが、問題なのは叫んでいるのが彼だけではないこと。
 他に何名ものプレイヤーが似たような事を叫び、ヴァリトールについての情報を求めていた。それぞれが『エデン』内ではよく知られる有名ギルドのマークや特徴を備えている。
 『シルバーナイツ』のサブマスター、ミラが言っていた通りどのギルドでも真相を追うことに必死になっているようだ。
 ヴァリトール討伐を成し遂げた俺が言うのもどうかと思うが、そうまでしても知りたいと言う気持ちはわからないでもないと思う。

 ヴァリトールは、それ程規格外の化け物だったのだ。

 強いと有名なパーティやギルドがいくつも挑んでは散っていった。他地域のユニークモンスターであるフェニキス雪原の氷狼フェニキス等は遭遇しても生き残って離脱できるパーティが多く、情報も集まってきている為いずれ討伐が可能だろうとは言われている。
 だが、巨龍ヴァリトールだけは遭遇して帰って来れた者はほぼいない。
 今だからこそ言えるが、あの時の俺はなんと無謀な事をしたのだと思う。レオンに敗北し、何かに急かされる様に焦っていたとはいえ、あれに勝つつもりだったのは思い上がりも甚だしい。
 事実、【神脚】がなければ俺はなす術も無く敗北し殺されていた。

 そんな化け物を倒したプレイヤー。
 確かに戦力補充を求める有名ギルドからすれば喉から手が出るほど欲しい存在かもしれない。
 だが、俺はどこかのギルドに所属するつもりは全く無い。
 日陰者だった筈の俺が一転して有名ギルドが争奪戦を繰り広げる存在になる……今まで馬鹿にされ続けたせいで卑屈になっているのかもしれないが、どうも心が受け付けないのだ。
 一人で戦い続けたせいで、孤独に慣れてしまったせいもあるかもしれない。
 ただ……今は誰かの思惑に乗せられる事無く自分の道を行きたい。

 ……だけど、こんな状況じゃヴァリトールの素材売買は勿論、ヴァリトール素材製の武具も持ち歩けないな。

 ヴァリトールの武具を纏った俺がプレイヤー達にもみくちゃにされる姿を想像し、苦笑しながら俺は大通りを進んで行った。

 

 

 姐さんの店に到着したのは昼を大きく過ぎた時間帯だった。大通りが非常に混み合っていた為に思ったより時間がかかってしまったのだ。
 約一ヵ月ぶりの姐さんの店。かつてほぼ毎日通っていた為に、一ヵ月でも時間を空けると随分久しぶりに感じる。

 さて、姐さんはいるだろうか……。

 何か懐かしい感じがする素朴な木の扉を開け、中へ。剣や鎧が陳列された棚の先、カウンターには見慣れた赤色が見えた。僅かに顔を綻ばせながらカウンターへと進む。
 そこには相変わらず眠そうに湯気の立つティーカップを傾けている女性が一人。NPCの街娘もよく着ているようなワンピースと胸元が窮屈そうなコルセット。そのままでは炉を前にハンマーを振る一流の鍛冶職人にはとても見えない。
 そんな彼女はコクリ、コクリと頭が上下してる所を見ると、今は夢の世界にいる様子。
 俺の記憶と変わらないその姿に、安堵にも似た気持ちを抱きながら声をかけた。

「姐さん」

 姉さんの瞼がピクリと動く。だが、すぐに動かなくなる。
 苦笑しながら俺はもっと近づき、耳元でボソリと呟いた。

「姐さん!」

「っ!? は、は~い!」

 俺の声に驚いて手を上げながら仰け反る姐さん。その勢いで豊かな双丘がブルリと揺れた。思わずその神秘を凝視してしまう俺だったが、ある事に気付いてハッとなる。

 姐さんの手にさっきまで持っていたティーカップが見当たらない。

 いや、正確には姉さんの真上に飛翔中だった。その中身が今にも零れそうになっているのに気付き、慌てて俺はスキル【思考加速】を起動。時間の流れが急激に遅くなる世界の中で、俺の手が宙を舞うカップを掴む。そのままカップを上下左右に傾け、なんとか中身が零れ出そうとするのを阻止。カップ内の液面の揺れが収まったのを確認した所でスキル【思考加速】を解除した。
 姐さんに熱いお茶がかかるのを防いでホッと一息つく俺だったが、姐さんは今の一連の動きをまるで認識してなかったようだ。
 声をかけたのが俺だと気付いたようで、いつもは眠そうで閉じかけている瞳を大きく開き、ワナワナと震えている。この大きな瞳を見ると、やはり姐さんは美人だよなと俺は変に納得したりしていた。
 だがやがてその瞳に涙が染み出してくると、のほほんと構えていた俺もさすがに慌てる。
 俺が何かを言おうと口を開いた所で、姐さんがカウンター越しに俺へと飛びついて来た。
 いつもの姐さんらしくない俊敏さと胸元から腹にかけて感じる恐ろしく柔らかな二つの感触に思わず俺は硬直。
 なんとか未だ手に持っていたカップをカウンターに置き、涙ぐんで鼻水を啜る姐さんの肩に手をかけた。

「あ、姐さん……あの……」

「師範代さ~ん! 良かった~! ちゃんと帰って来てくれた~! うぅ~……」

 姐さんの涙ながらの声に俺は自分がどれだけ心配をかけていたかを悟った。力を求め、自分の事しか考えていなかった先程までの俺を酷く反省する。

「姐さん、すいません。ご心配をおかけしました」

「ほんとですよ~。あの後師範代さんがお店に来てくれなくなったですし~、私のせいであんな事になったから落ち込んでるんだって思っちゃって~。でも、あまりにお店に来ないから心配になって~、他の常連さんとかに訊いたら街の外に出かけたのは見たけど街の中では見たことが無いって言うんですよ~。てっきり私、師範代さんが無理して死んじゃったのかもって~……うぅ~」

 姐さんの涙ながらの独白に胸が痛い。そういえばレオンとの試合は姐さんがきっかけだった。姐さんの性格を考えればこうなることは目に見えていたのだから、やはり自分のプライドは捨てて姐さんに一言言ってから出発するべきだっただろう。

「本当にすいません。ダラスからちょっと離れた場所に行ってたんですけど、一声かけてから出発するべきでした」

 姐さんが俺の胸元から顔を上げる。

「……ううん、いいんです~。元はと言えば私が悪いんですから~。……でも、今度はちゃんと言って下さいね~」

 姐さんが涙で瞳を滲ませながら微笑む。俺はその顔を見つめながらしっかりと頷いた。
 それを見て姐さんがさらに顔を綻ばせる。

「良かった~。約束ですよ~? ……ところでこんなに長い間どこに行ってたんですか~? それに、いつも鎧を着てるのに今日は普通の服ですし~、持ってる剣も違いませんか~?」

 涙を拭きながら姐さんが尋ねてくる。

「話せば長くなるんですけど……とりあえず『バルド流剣術』の奥義をついに獲得したんです」

「えぇ~!? ほんとですか~!? 師範代さんずっと頑張ってましたもんね~、良かったです~!」

 自分の事のように喜んでくれる姐さん。やっと姐さんに報告できて俺も肩の荷が下りた気がする。

「その後、派生流派入門クエストが始まったんです。そのクリア条件の為にヴァリトール山へ行く必要があったので、しばらくダラスから離れてたんですよ」

 うんうんと頷きながら俺の話を聞いていた姐さんだったが、ヴァリトール山という単語にピクリと反応した。

「……ヴァリトール山と言えば~、最近ダラスで騒がれているある事を知ってますか~?」

 姐さんが上目使いで訊いてくる。
 やはり姐さんの耳にも入っていたか。そこで俺がヴァリトール山に行ってたなんて言えば気になるよな。

「巨龍ヴァリトールが討伐された事ですよね」

「あ、知ってたんだ~。……あれって、もしかして~……師範代さんがやったんですか~?」

 半ば確信めいた姐さんの視線。この後の装備製作依頼も含めてヴァリトール討伐の話は話そうとは思っていたが、まさかいきなりそう来るとは思わなかった。
 あまりに核心を突いた言葉に思わず面食らう。

「……よくわかりましたね。確かにヴァリトールを倒したのは俺です」

 俺の言葉を聞いて、やっぱりとでも言うかのように大きな胸を張る姐さん。

「でも、普通に考えれば荒唐無稽な話ですよ? 姐さんはそんな話を信じれるんですか?」

 姐さんの顔が不思議そうな表情を浮かべる。そんなに変な事を言ったか、俺?

「師範代さんならきっとなんとかしちゃうって思えるんですよ~。……ほんとは私、前線に出ないので~、ヴァリトールってモンスターの強さはよく判らないんですけどね~」

 テヘッと舌を出す姐さん。それを見て俺は苦笑する。知らないが故の先程の一言か……でも、それだけ姐さんが信じてくれているのは嬉しい限りだ。

「判りました。そこまで信じてもらえるのは正直嬉しいです。……話を戻しますけど、今までの装備はヴァリトールとの戦いで全て失いました。でも、何とかヴァリトールを倒せた俺は帰り道でリンさん達に拾われたんです。先日戦ったレオンとその仲間達も一緒だったんですが……実は帰路の途中で彼らが強盗プレイヤーの一味だったという事が判明したんです。罠に嵌められて危険な状況だったんですが、それもなんとか撃退して辿り着いたのが今朝なんです。ちなみにこの剣はその時の戦利品です」

 姐さんが俺の話を聞いて目を丸くする。こうして説明してみるとよく判るが、波乱万丈の旅だった。これまでの三年間に比べると随分濃密な一ヶ月間だ。

「え~、あのレオンさんが~? 信じられないです~」

 呆然とする姐さん。確かレオンも姐さんの事を知っていたので、常連だった可能性が高い。それにまさかトップギルドの『シルバーナイツ』内に裏切り者がいるとは思わないだろう。
 俺も正直レオン達に良い感情は持っていなかったが、それでも『シルバーナイツ』のメンバーが悪事に手を染めているとは考え付かなかった。
 それ程トップギルドの看板は重いものなのだ。
 果たして『シルバーナイツ』の看板を汚した側のゲイス達と汚された側の他のメンバーはどう行動するのか。
 多少なりとも関係した身としては経過を知りたいものだ。

「信じられないのも判りますが事実です。今頃『シルバーナイツ』のギルドハウスでは大騒ぎだと思いますよ」

「そうだったんですか~。リンさん達は無事だったんですか~? それに……レオンさん達は~?」

 姐さんが心配そうな表情を覗かせて俺に問い掛ける。
 やはり姐さんとしてそこは気になるところだろう。

「かなり危ない状況でしたけど、リンさん達は無事です。そしてレオン達は……俺が殺しました」

 俺の語った内容に大きく瞳を開いて驚く姐さん。
 いつかは言わなくてはならない事だったし、ここで言わなかったとしてもリン達を通じて知る事になる。
 プレイヤーを、レオン達を殺した事を全く後悔していないと言えば嘘になる。PKプレイヤーキラーに現状ペナルティがないからだとか、システム上許可されているからだとか、ゲームの世界なのだから殺しても現実には影響がない可能性があるだとか、そんな理由をつけて自分の行為を正当化できるかもしれない。
 だが、彼らを殺さないで済む方法もあったかもしれないのだ。それをあえて殺すという方法に走ったのは俺自身。だからこそ、それに対する非難は背負うべきだろう。

 もしかしたら姐さんの反応次第では、二度とここに来る事は出来なくなるかもしれないな……。

 じっと姐さんの反応を待つ。
 だが、姐さんの視線にこちらを非難する色合いは全く見えなかった。

「それで……師範代さんは大丈夫ですか~? 苦しんだりしてませんか~?」

 むしろ俺を気遣うその様子。それに俺は戸惑う。

「え……プレイヤーを、人を殺したんですよ? なんで、そんな……」

 困惑する俺に姐さんが微笑みかけた。
 予想外の展開に呆然とする俺。

「あら~、非難するとでも思いました~? だって、師範代さんの事ですもの~、きっとリンさん達を助ける為だったんでしょう~? 非難なんてするわけないですよ~。……ここだけの話ですけど~、リンさん達が初めて強盗プレイヤー相手にPKした時はうちに来て泣いていたんですよ~」

 そう言って笑う姐さん。その姿には俺を忌避する様子は全く見受けられない。

「……もしかして、師範代さんも泣きに来たのかな~? 皆甘えん坊ですね~」

 姐さんが俺の顔を下から覗き込んできた。悪戯っぽい眼差しが俺を見つめる。
 姐さんの言葉、そして覗き込んできた姐さんの胸元から見える深い谷間に俺は慌てる。

「い、いや、そんなわけないですよ!」

「うふふ、じゃあそういう事にしておきましょうか~」

 そんな俺の様子が可笑しかったのか、楽しそうに笑う姐さん。
 なんだか神妙に悩んでいた俺が馬鹿みたいだ。
 ふと、突然姐さんの表情に真剣さが混じる。

「大丈夫ですよ、師範代さん。プレイヤーを殺す事が正しい事かはわからないですけど、あなたの為した行為で確かに救われた人もいるんです。だから、今の気持ちを忘れずに戦ってくださいね。泣きたくなれば私が受け止めてあげますから」

 姐さんが語った言葉がするりと俺の心に入り込んできた。
 何か憑き物が落ちたかのように俺の気持ちが楽になる。
 レオン達を斬り殺す瞬間、俺に抵抗は無かった。リン達を救う事で頭が一杯だった反面、冷静にレオン達の動きを観察する自分もいた。今でも再び同じ状況になれば同じ選択肢を取るだろうという奇妙な予感がある。
 だが、心のどこかで悲鳴をあげている自分がいたのかもしれない。
 それを姐さんは判っていたのか……やはり姐さんには頭が上がらないな。
 そこまで考えて苦笑する俺。
 そこでふと気付いた。

 あれ、今の言葉に姐さん特有の間延びした口調が無かったような……。

 俺が疑問を抱いた所で姐さんの拍手が響く。おかげで俺の思考が途切れて霧散した。

「さあ~! 装備が無くなっちゃったなら新調しなきゃですよね~。何か希望はありますか~?」

 鍛冶屋としての性か、装備の話題になって活き活きとしだす姐さん。
 そういえば姐さんへの報告がてら装備を新調しに来たのだった。
 だが、その前にやる事がある。
 俺は懐よりレオン達から得た戦利品のアイテムカードを取り出し、腰の剣と一緒にカウンターへと置いた。

「実は今文無し状態なんですよ……それで、これを売って装備の新調代に当てたいんですけど、どうせなので姐さんの所で引き取ってもらえませんか? 相場より安めに見積もって貰って大丈夫ですから」

 本来なら自分で販売用の露店を開いて売り捌き、現金を手に入れてくるのが筋なのだが、初心者流派で馬鹿にされている俺が高級品の数々を販売していたら間違いなく不審に思われる。

 一瞬不思議そうな顔をした姐さんだったが、カウンターに置かれた品々を手に取った。

「結構アイテムランク高そうですね~。……そっか~、それで~。わかりました~。ちょっと待ってくださいね~」

 どうやら事情を察してくれたらしい。
 姐さんはそう言うと、アイテムカードを次々と具現化させ、現れた武具をジッと眺め始めた。
 俺が見てもそれらはただの武具で、せいぜいアイテムランクが高めの高級品だろうなという程度しか判らない。
 だが、姐さんの視界では恐らく違う。

 生産系流派には共通して【鑑定】という流派スキルが存在する。対象のアイテムランクや性能、耐久度等を視界内に表示するスキルだ。
 熟練度が低いと高ランクアイテムに対して【鑑定】は行えないが、奥義を取得してる程の高レベルプレイヤーである姐さんならば【鑑定】できないアイテムはほぼ無いと言って良いだろう。

 しばらく武具を【鑑定】し続ける姐さんを眺めていると、作業を終えたらしい姐さんが顔を上げてこちらを見た。

「耐久度の減りと今の相場を考慮して……全部で大体9Mくらいですね~。でも、本当に良いんですか~? アイテムランクAの装備ばかりですから、上手く売ればもっと高値でも売れるかもしれませんよ~?」

 やはり裏切ったとはいえ、『シルバーナイツ』に在籍できた精鋭だけあってアイテムランクが高い。

 アイテムランクはSを筆頭に最下級でFとなる。武具を始めとして『エデン』内のあらゆるアイテムに設定されているアイテムランクは、そのアイテムの価値を表している。
  俺のかつての愛剣である『スチールロングソード』等はアイテムランクEだ。現在のトッププレイヤーの装備アイテムランクがほぼAと言われている。アイテムランクSともなると『エデン』では数える程しか発見されていない。有名所だと、ギルド『ブラッククロス』マスターが持つ大剣『轟剣グラムスレイヴ』が有名だ。

 と、そこで姐さんは俺が愛剣の代用品としてしばらく使用していた長剣を手に取る。相変わらずその剣身に刻まれた紋章のような柄は溜息をつく程美しい。

「それに~、この長剣なんかはアイテムランクAのユニークアイテムですよ~。銘は『迅剣テュルウィンド』、効果は敏捷度の増加です~。装備の新調代としては他のアイテムの代金で十分ですから、せめてこれだけでも持っていたらどうですか~?」

 姐さんに教えられた事実に驚く。
 まさかユニークアイテムまであるとは思わなかった。

 ユニークアイテムとは、その名の通り『エデン』内で二つと存在しない武具の事だ。アイテムランクA以上でのみ確認されているそれらの武具は、一般的に同ランクの武具とは一線を画する性能を持っており、加えて特殊能力を付与されている事が多い。
 入手方法はボスモンスターからのドロップや、高レベルダンジョンの宝箱、特殊アイテムを材料とした製造等が挙げられるが、どの方法でも滅多な事ではお目にかかる事もできない。
 そんなユニークアイテムは『エデン』内で現在100種類程確認されており、どれもプレイヤー垂涎の的だと言えるだろう。ちなみにランクSの武具系アイテムはその多くがユニークアイテムである。

 予備としての装備も全て失ってしまったし、ユニークアイテム程の貴重なアイテムを手放すのは確かに惜しいかもしれない。姐さんの言う通りこれだけは持っておこう。

「判りました。じゃあ、その剣だけ売らずに持っておきます。他は姐さんの方で好きに処分してもらって結構です。どうせ俺では処分するのもかなり手間になりますから……それで新しい装備についての相談なんですけど、これを材料として製造してもらいたいんです」

 姐さんから『迅剣テュルウィンド』を受け取った俺は、懐からさらにアイテムカードの束を取り出して姐さんに渡す。
姐さんは受け取ったアイテムカードの一枚を具現化。白くて細長な姐さんの指先で具現化の光が輝いた。現れたのは不思議な光沢を持つ漆黒の大きな鱗。それをジッと眺めながら姐さんが口を開く。

「『巨龍の龍鱗』、素材アイテムですね~、アイテムランクは……S~!? ……他のも全てランクSの素材アイテムみたいです~! ランクSの素材アイテムなんて初めて見ましたよ~! これ、本当に私に任せて貰えるんですか~!?」

 やはりユニークモンスターからのドロップ品だけはある。ここに並ぶ全てのカードがアイテムランクSだと思うと錚々たる品々だ。
心なしか姐さんの瞳がギラギラと輝いている気がする。極上の素材を前に鍛冶屋としての血が騒ぐのだろうか。
姐さんから立ち上る異様なオーラに圧されながら俺はなんとか問いに答えた。

「え、えぇ。これを手に入れた時から姐さんに作ってもらおうって決めてましたからね。……アイテムランクSって言ってましたけど、扱えますよね?」

 生産系流派についてはそこまでよく知っているわけではないので、一応確認の為に訊いてみた。
 すると姐さんの瞳がキラリと光る。

「もちろんです~! 『バルモンド流鍛冶術』奥義獲得者としての腕を見せてあげますからね~!」

 そう言って胸を張る姐さん。おかげでその豊か過ぎる双丘が強調されて目のやり場に困る。
胸元から覗く白い肌が強烈な誘惑を放つが鋼鉄の意志で凌いだ。

天然なのか、わざとなのか、姐さんはこういう所があるから困る……いや、本当は困っていないのだけど。

俺が悶々としている前で、いつの間にかヴァリトールの素材を手にあれこれ思案してた姐さんが俺へと問い掛けた。

「製作する武具は長剣と……全身鎧なんてどうですか? 見た目に反してかなり軽い素材ですから全身鎧でもそれほど動くのに負担にならないと思いますし~、何より防御力が段違いですよ~」

 姐さんの提案を吟味する。 
『バルド流剣術』のスタンスは守りに重点を置いた迎撃スタイル。回避をせず、受ける攻撃の全てを撃ち落とすのが基本の動きだ。それを考慮すると多少動きづらくなっても全身鎧を装備して防御力の増大を図るのは流派として理に叶っていると言えよう。
今までは強化用宝石で装備を育てる事に腐心していたので、他の装備に換えるつもりはなかった。
だがその装備も失った今、思い切って換えてみるのも良いだろう。

「では、姐さんの提案通り長剣と全身鎧でお願いします。……と、そうだ。もう一つ姐さんにお願いがありまして……ヴァリトールを倒した時に奇妙なアイテムを手に入れたんですよ。一度姐さんに見てもらいたいんです」

 そう語りながら、俺は懐から一枚のアイテムカードを抜き出す。表面に描かれているのは光り輝く宝石の様な絵柄。

 『エレメンタルソウル』……俺の愛剣から生まれた謎のアイテムだ。

 その出所から考えて姐さんなら何か知っているのではないかと思ったのだが、果たしてどうだろうか。

「は~い、何でしょうか~……ぇ」

 差し出されたアイテムカードを見た姐さんの動きが止まる。やはり知っていたのだろうか。俺の中で期待が高まる。
 そのまま姐さんの続きの言葉を待つも一向に変化がなく、その場には店外から微かに聞こえる金床を叩く金属音だけがしばらく響いた。
 不審に思いながら凍り付く姐さんの顔を覗き込む。

「姐さん?」

「っ! 師範代さん~!」

「は、はい!」

 突然振り向いた姐さんに驚く。
 姐さんの瞳が先程に増してギラギラしている。と、そこで姐さんの腕が突如猛烈な速度で翻り、俺の肩を掴んだ。
 そのあまりの速度に反応できず、そのまま拘束されてしまう俺。

 あれ、なんだ今の……ぉぉぉお!?

 姐さんの俊敏さに驚愕していた所で、俺の肩から激痛と共にミシミシと何かが軋む音が鳴る。
 見れば、姐さんの手が奇妙な程俺の肩に食い込んでいた。

「あ、姐さん! 手、手ぇ!」

「あれをどこで手に入れたんですか~! どうやって~!? 教えてください~!」

 酷くなる痛みに俺は悲鳴をあげるが、姐さんの耳には全く入ってない様子。

「判りました! 判りましたから、手を!」

「あ……」

 そこでようやく姐さんの拘束から解放される。
 さすがは『バルモンド流鍛冶術』を極めた姐さん。
 前々から筋力パラメーターは高いだろうと思っていたけど、これ程とは。
 肩がどうなっているのか見るのがちょっと怖い。

 冷静さを取り戻した姐さんは、心配そうな顔で俺を見つめた。

「ごめんなさい~。興奮しちゃいました~。肩、大丈夫ですか~?」

 自分の凶行に心を痛めている様子。
 ここは痛くても痛くないと言うのが男だろう。

「大丈夫ですよ。これくらいどうってことないです。……やっぱりそのアイテム知ってましたか?」

 あまり突っ込まれるのも嫌なので話を戻す。
 すると、意気消沈していた姐さんの瞳に炎が灯った。

「そ、そうです~! これ本当にどこで手に入れたんですか~!?」

 また突っかかって来そうな勢いだったので、若干身を引きながら答える。

「ヴァリトールの止めを刺した時に俺の『スチールロングソード+10』が折れちゃったんですよ。普通なら破壊状態になったのでそこで消える筈が、何故か柄だけ残ったんです。不思議に思いながらその柄をカード化したら……『エレメンタルソウル』なんて謎のアイテムに変わったわけです」

 俺の言葉を真剣に聞く姐さん。その顔にはいつもの眠そうな表情は無く、凛々しい美しさがあった。

「……そっか~、そういうことだったんだ~」

 聞き終えた姐さんが俯きながら何事か呟く。
 姐さんは今の俺の説明で何かわかったらしいが、正直俺はさっぱりだ。先程の姐さんの様子からかなり貴重なアイテムなのだろうという予測はついているのだが……。

「何かわかったんですか?」

 たまらず姐さんに問い掛ける。
 俺の声に顔を上げた姐さんは、そっと微笑んだ。

「はい~。師範代さんのおかげで、鍛冶系流派でずっと謎とされてきた事が判明しました~」

 鍛冶系流派でずっと謎とされてきた事?
 予想外に規模の大きい言葉が返ってきて面食らう。
 驚く俺にクスリと微笑みながら、姐さんの言葉は続いた。

「まずは本題に入る前に、『バルモンド流鍛冶術』の奥義からお話しますね~。『バルモンド流鍛冶術』の奥義は師範代さんもよくご存知の通り、製作武具の性能をある程度任意に設定できる【鍛冶神の手】です~。……でも実は、もう一つ奥義があるんです~。それが、【精霊武装製作】です~」

 【精霊武装製作】!?
 【鍛冶神の手】は名前こそ知らなかったが、効果については姐さんから聞き及んでいた。
 だが、【精霊武装製作】という奥義は初めて聞く。
 名前から考えるに特殊な武具を製作できる奥義のようだが……。

「別に隠してたわけじゃないんですよ~。実は【精霊武装製作】は『バルモンド流鍛冶術』だけの奥義じゃないんです~。他の鍛冶系流派でも二つ目の奥義として必ず【精霊武装製作】を獲得できるんですよ~」

 この情報も初耳だ。
 あまり生産系流派についての知識は積極的に仕入れてなかった上に奥義に関する情報は出回り難いとはいえ、鍛冶系流派共通の奥義とも言える状態なのでもっと情報が流れていても良いと思う。
 だが、俺は知らなかった。
 何か理由があるのか。
 段々と姐さんの話に引き込まれているのを自覚する。

「最初は皆興奮しました~。奥義の段階で製作可能になる装備って何だろうって~。でも、すぐに壁に当たっちゃいました~。【精霊武装製作】には必ずあるアイテムが必要となるんですが、それが全く発見出来なかったんです~。有名なギルドの方達にも協力して頂いたんですけど、やっぱり発見できなくて~。
ついにはまだアイテムが未実装で意味の無い奥義なんじゃないかって言われるようになっちゃったんですよ~」

 それを聞いた俺の視線が自然と手元のアイテムカードへと吸い寄せられる。
 姐さんの真剣な瞳も同じ場所へと向いていた。

「それが……」

「そうです~。私達がずっと追い求めていたアイテム、『エレメンタルソウル』です~」

 

 

 

 

 
 長話になってお茶がすっかり冷めてしまったので、お茶を淹れなおしに姐さんは店の奥へと引っ込んだ。カウンター脇の椅子に座ってしばらくすると、良い香りを漂わせて自分と俺用の二つのティーカップを持った姐さんがやってくる。
 姐さんより礼を言いながらカップを受け取り、中身に口をつけると思った以上に喉が渇いていたらしい。思わずゴクリと大幅に飲み込んでしまった。
 熱湯だった為、途端に口腔を襲う灼熱感。俺は目を瞑って耐える。
 それを見ていた姉さんは可笑しそうに笑っていた。

「師範代さん、熱くないんですか~?」

「あ、熱かったれす……」

「やっぱり~。気をつけなきゃ駄目ですよ~? うふふ」

 しばらく二人でお茶を飲んでいたが、余程先程の俺の顔が面白かったのか、時折姐さんの忍び笑いが店内に響く。
 俺としてはどうにも恥ずかしい。

 やがて落ち着いた姐さんが中身の減ったカップをカウンターに置く。

「さて、どの辺りまで話しましたっけ~」

「【精霊武装製作】に必須なアイテムが『エレメンタルソウル』だったって所です」

 俺の言葉にうんうんと頷く姐さん。頭に連動してその大きな胸も上下に揺れるのが面白い。

「そうそう~、そうでしたね~。だからさっき見せられた時は思わず我を忘れちゃったんですよ~」

 そう言って姐さんは可愛らしく舌を出す。見た目は天然系の巨乳美女。だが、見た目を豪快に裏切る怪力とあの時の肩が軋む音を俺はきっと忘れない。

「……姐さんのあの反応の意味は判りました。俺の説明で姐さんが判った事って何だったんですか?」

 姐さんの可愛らしいポーズをスルーして疑問を投げかける。
 姐さんは一瞬残念そうな顔をしたが、すぐに姿勢を正して答えてくれた。

「【精霊武装製作】獲得時に、マスターNPCがある事を教えてくれるんです~。『エレメンタルソウル』は長きに渡り積み重なった人の思いから生まれる物だって~。皆その意味がわからなくて悩んだんですよ~。でも、師範代さんの話でピーンと来ました~。つまり、+10まで育てた武具から変化するって意味だったんですよ~。+10まで育てるのに本当に時間かかりましたもんね~」

 姐さんがしみじみと語る。
 俺も姐さんに応えるように頷いた。

 確かに『スチールロングソード』を+10にするまで一体どれだけ苦労したことか……。

 今までの苦楽、そして相棒の最期が思い出されて少し切なくなる。
 だが、姐さんの話によると相棒の生まれ変わりとも言える剣を手に入れる事が出来るかもしれないのだ。それも『エデン』で初の『精霊武装』とやらで。
 俺の胸がじわじわと熱くなった。

「ちなみに『精霊武装』ってやつの情報はあるんですか?」

 姐さんが顎に人差指を当て、思案する。

「……まだ誰も製作に成功していないから何とも言えないですけど~。マスターNPCから聞ける話から推測すると、属性武具なんじゃないかって話が濃厚ですね~」

 属性武具!
 その言葉に俺の頭が強く反応する。

「それって、つまり……魔術のアドバンテージが崩れる可能性があるかもってことですか?」

「それは~、作ってみないとわからないですね~。でも、製作難度から言ってその可能性は十分有り得ますよ~」

 魔術攻撃のアドバンテージである属性攻撃。
 これを武器や防具で防ぐ事が可能になるのなら、俺が危惧する弱点を克服できるかもしれない。
 降って涌いた情報に俺の心が躍る。

「姐さん、是非とも『精霊武装』の剣を俺に作ってください」

 姐さんが大きく頷く。

「勿論ですよ~。私としても最高の剣の製作になりそうですからね~。気合入れて頑張ります~!」

 どうやら俺の相棒は最高の形で俺の下へと帰ってくるようだ。
 果たしてどんな姿になってくるのか今から楽しみでならない。

「じゃあ、今から準備にかかりますね~。色々と必要な材料も揃えないといけないし、完成するまで少し時間を下さい~」

 何かを数えるかのように指を折りながら姐さんが話す。その視線は鋭い。
 既に姐さんの中では戦闘モードに入っているようだ。
 本来ならここで邪魔をしないように帰る所だが、もう一つ伝えておかねばならないことがある。

「判りました。後日取りに来ますね。……話は変わるんですけど、今夜俺が拠点にしてる宿屋にリンさん達が遊びに来るんです。よかったら姐さんも同席しませんか?」

 俺の言葉に顔を上げてキョトンとする姐さん。

「リンさん達がですか~? 私も同席して良いのかしら~?」

「……実はかなり上等な食材を手に入れたのでブラートに頼んで調理して貰おうと思ってるんです。結構量もあるので是非姐さんにも来てもらいたいんですよ」

 そう言うと姉さんが興味深そうな表情を浮かべる。

「え~、ブラートさんですか~!? 最近会ってないんですよね~。お邪魔でなければ行きます~」

 良かった、仕事に熱中して断られるかと思ったが受け入れてもらえた。
 勿論上等な食材とは『巨龍の肉』である。
 どうせなら世話になった皆で消費してしまおうとダラスへの帰路の最中から考えていた事だ。
 問題はブラートが『巨龍の肉』を扱えるかどうかだが……行ってみればわかるか。
 そこまで考えると俺は席を立った。

「是非どうぞ! うちの拠点はダラスの外周南西部辺りにある宿屋『アイアンハンマー』です。看板に大きなハンマーが掲げられてるので見ればすぐわかりますよ」

 姐さんもうちの拠点には来た事がないので、場所は知らないのだ。
 よく考えればうちに来た事があるのはブラートと他『バルド流剣術』の同志数名だけな気がする……。
 いや、深く考えちゃ駄目だろう。

「判りました~。じゃあ今夜作業に区切りがついたらお邪魔しますね~」

 若干、自分の過去に引きずられそうになりながらも姐さんに笑顔を見せる。

「待ってます。じゃあ、また後で!」

「は~い!」

 そうして、俺は姐さんの店を出た。
 空を見上げれば太陽がやや西へと傾いている。
 意外と時間を食ってしまったようだ。

 次はブラートの所だけど、まだいつもの場所にいるのだろうか?



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