「ラフレシアサーガ・リバース」において、ジルドア王国を舞台に空前絶後の活躍をした伝説のギルド「ラフレシア」の参加メンバーの記録です。


ジルドア王歴1012年~


エル


現ラフレシアメンバーのリーダーで、北欧に存在するエルフたちの住む森「エルモア」出身。
本名はミア・ナルルース。殆どが金髪であるエルフの中では希少な赤髪を持つ。145歳。

この髪の色ゆえにミアは生まれた時から不吉な忌み子として扱われ、
迷信深いエルフ社会はおろか家族にすら差別を受けてきた。
彼女はエルフたちの信頼・・いや愛情だったかもしれない。それを得ようと必死に
精霊魔法の修練に打ち込むが、それを省る者はいなかった。
そして16歳の時に皮肉な事件が起こった。森で起こった火災の原因を
エルフたちは、自分たちを恨んでいるであろう彼女の仕業と決めつけ、
一方的に追放したのである。

行くあてのないミアは森近くの人間の村へ身を寄せた。この時から「エル」と
名乗るようになり、過去と名前を封印した。村人たちは皆暖かい気質で、
異種族である彼女を疎むことなく村の成員として迎え、宿場の手伝いを
職として与えてやり、いたって平穏な日々が続いた。

そんなある日のこと、冒険者たちが村へやってきた。
宿場で彼らを迎えたエルは外の世界の話にいたく興味をそそられた。
広大な世界には途方もない数の人間が住み、巨大な社会を形作っていること、
そしてそんな人間ですら力の及ばない大自然、未知の領域、数多の謎。
自分の目で見てみたい!エルが同行を申し出ると、冒険者たちは最初難色を示したが、
彼女が高い魔力を持ち火の魔法を操れることを知ると承諾した。

そうしてエルは村人たちに別れを告げ、冒険者として歩み始めた。
だが、単純な憧れから安易に踏み出した冒険者の道は厳しかった。時には仲間の
死を目にし、自らも何度も命を落としかけた。それでも互いに背中を預け合った
大切な仲間がいる、同じ種族にも関わらず自分を拒絶したエルフたちとは違う
本当の仲間、家族・・・。しかしここで彼女は種族の壁を思い知ることになる。

人間の数倍に及ぶ寿命の長さからエルは若さを保っていられたが、仲間たちは
皆、年老い死んでいった。村を飛び出してから50年あまり後、彼女は再び一人になった。
「わかっていたはずじゃない・・・こうなることは・・・」

暗い面持ちで町を歩いていると看板が目に入った。”ここより先ラフレシア”
普段なら一瞥して通り過ぎていただろう。しかしエルは呼び込まれたように
路地に入り、宿の扉を開けていた。

中には主人が一人。
「おや、エルフのお客とは珍しい。それにどうしました?半べそかいて」
その一言を聞いた途端、エルは泣き崩れた。どこから湧いてくるのか、激情が
こみあげてくるまま堰を切ったようにこれまでのことを主人に話し続けた。
主人はずっと黙って話を聞いていた。そして最後にこう言った。
「寿命の長さに関係なくね、誰にでも出会いと別れはあるものです。
だから人生は面白い。今度はあなたが新しい出会いを作ればいいんじゃないですか、
新しい家族をね・・・」

その後ジルドアにその名を響かせることになる「ギルド・ラフレシア」が
誕生した瞬間だった。この日からおよそ70年あまり・・・多くの冒険者が
エルとの出会いと別れを繰り返し、今のラフレシアがある。

魔族との決戦後、エルは国内の脅威となり得る戦力を育てていた罪
「ジルドア破防法違反」および、それらを魔力で誘導、主導した疑いによって
「魔女罪」として起訴された。すぐ宿にやってきた白騎士団を皆で一時的に退けたあと、
エルはメンバー全員を集め、ギルド・ラフレシアの解散を宣言した。

そしてメンバーたちに、身分を隠してミレーヌやゲルマニアへの亡命、それらが都合悪い者には
自由の国カルタゴに脱出すること、そして東方から来たメンバーには、
アデン経由で東方諸国へ渡るほうが良いことを話した。

そして今まで自分についてきてくれたことを感謝する旨をひとりひとりに伝えていった。
この夜、ジルドア王国を救った英雄たちのギルドは消滅した。

赤毛の忌み子としてエルフの里に生まれ、血族にすら排斥されて人里に下りてから、
流れ流れてギルド・ラフレシアを作り、嫌疑をかけられて単身で国外逃亡したエルの
その後の消息は誰も知らない。ギルドの長にも関わらず、彼女は一人でどこかに旅立っていった。

エルと関わった人物は後にこう述懐している。

「多弁で饒舌なエルフだったが、その瞳は常に虚ろで寂しげだった」
「エルフにも人間にも受け入れられなかった、いや自ら拒絶していた。そんな印象を受けた」

キリ


本名は牡丹・霧島。大人の雰囲気を醸しだすも冒険中は何もしないことが多い謎の魔法戦士。
働く日とそうでない日を決めている。が、ほとんど働いていない。いつも酒を隠し持っている。
よくどうでもいい嘘をつく。不意打ちを身上とし、正面からは戦おうとしない。
魔法は風。下の名前で呼ぶと怒る。24歳。
ラフレシア解散後は、トラシュの故郷に連れて行かれ農作業に従事しているらしい。

メアリ=クレンチェル


両親の仕事の都合で教会(孤児院)で育った僧侶。双子の妹がおり、姉妹揃って素行が悪い。
その素行の悪さであまり信じてもらえないが信仰心自体はそれなりに持っており収入の大半を
育った孤児院に寄付している。ラフレシア解散後は小さな教会の経営する孤児院に戻り、人々の為に働く。

シェリア=クラムス


最近首都に出てきた水の魔法剣士。真面目な性格をエルに買われ、リーダーに指名されること
が多い。キルクとは喧嘩友達のようで、一緒に居る時は面白いかけあいが見られる。
母は幼いころに流行りの病でなくし、騎士だった父もモンスターによって命を落とす。
持っているミスリルレイピアは父の形見であり商売道具。
首都に出てくるまではレイピアの素早い突きで氷を削り氷像を作る見せ物でお金を稼いでいた。
ただ、その素早い突きが戦闘に生かされているかというと・・・16歳。
ラフレシア解散後は帰郷して父同様に村を守る頼れる騎士になった。

黒鮫・雨鬼


柄に鎖が付いている特殊なカタナを扱う戦士。キリとはある意味気が合うらしく、互いに夫婦漫才さながらの
口喧嘩をしつつ、まんざらでもなさそうである。一緒にいることが多い。酒瓶をたまに武器として使う事がある。
ラフレシアに入った理由は 彼の師匠(紅)が甘党で大好物のジルドア饅頭を買い出しに行き、
帰ろうとしたところで鎖国政策のあおりをうけ、東方に戻れなくなった。
仕方なくジルドアをふらふらしているとラフレシアのメンバー募集広告が目にとまり、金稼ぎの為に入った。
カタナしか使わない理由は紅が東方出身の為 黒鮫にとってカタナ以外の武器を使う事は
紅の名誉を汚すことらしい。貧弱な体系と素早く動くために防具を装備していないため、
ひ弱、ひ弱と皆から言われている。何故かいつも酒が染みった包帯を持ち歩いている18歳。
ラフレシア解散後は「一生分働いた気がする」と言い残して東方諸国へ渡った…ジルドア饅頭を持って。

キルク・バスタード


キルクは地方の農村の生まれであった。
彼にはこの村での生活がまるでカラクリ人形のように決まった通りに畑仕事をするだけの退屈な毎日と写っていた。そこでキルクは悪戯をして村人達を笑わせようとした、しかし村の大人の反応は冷たい物であった。さらに、その村の教会の神父はキルクを目の敵にするかのように、悪戯をする度に厳しい仕置きを行った。

そんな彼の心の支えだったのが、村の作物を買いにくる商人の娘であった。買付の日には村の外れの森の中の開けた場所に行き、彼女から魔法を教わったり他の村の様子を聞き心を踊らせたりして過ごした。

しかしそんなある日、キルクは彼女とともに森の奥に入ったところ魔物と遭遇してしまい、彼女は怪我をしてしまった。
そして、キルクは娘が怪我した事に怒った商人とお得意様の商人を怒らせたことに怒った村人達によって追放されてしまう。身ぐるみ一つで追い出されたキルクは失意の中、意味もなくいつもの森の広場へ行った。すると、武器や食料等の旅をするのに必要な物と彼女の手紙が置かれていた。キルクは手紙を読むと、荷物を持ち一人旅立った。17歳。ラフレシア解散後は行方不明。


メイ・エーデルワイス


戦いにおいて熟達した感のある火の魔法戦士。22歳。

メイ・エーデルワイスは偽名であり、本名をアリサ・ロン・オヴェリスと言う。
アリサはカルタゴ王国の土着言語で「かけがえのないもの」と、言う意味らしい。
名門貴族オヴェリス家の息女だが、実の父親はジルドア国王カルロス三世。
つまりメイはジルドア王家のご落胤である。
当時、継承争いにしのぎを削っていた王族各位にとって同じ血筋を持つ彼女の存在は
非常に目障りだった。それぞれの貴族をバックにつけていた彼らはオヴェリス家の台頭
を怖れていたのだ。

彼女自身、自分は普通の家とは違う環境に生まれたという事は幼い頃から自覚していた。
しかし、両親の深い愛情の前でそんなものは無意味で自分自身も深くは考えずただこんな日々が
ずっと続けばと思っていた。

そして、メイが14歳のある日、両親が恐れていた事態が起こってしまった。
王族は彼女の存在を排除すべき脅威と見なし、言いがかりも同然の理由でナイドバルド率いる白騎士団を派遣し、
オヴェリス家の屋敷を包囲したのだ。気まぐれな情事により、この惨事を作りだしたカルロス三世も
今は実権を失いつつあり、これを黙殺するしかなかった。
オヴェリス家に仕える騎士たちと白騎士団の間で数時間の激しい戦闘があった後、屋敷は業火に包まれ、
彼女自身も死を覚悟していた。恐怖はなかった。むしろ両親と運命を共にできるといったある種の
幸福感にも似た感覚を抱いていた。そんな彼女に母のカステリーナはこう言った。
「いい?アリサ、あなたは生きるのよ・・・決して振り返らずに前だけを見て、何より自分らしく。
これまでの過去はすべて忘れなさい、もうあなたは自由なのですから」
そう言い終えると転送用の魔方陣が展開される。カステリーナとオヴェリス公はメイをその
中に立たせると、別れの接吻をした。そして突入してきた騎士たちのほうへ目をやり、
堂々とした足取りで彼らのもとへ歩いていった。
メイが転送される最中、その目に映ったのは、白騎士団に捕縛され、まるで罪人のように斬首される両親の姿だった。
こうしてジルドアにかつてのその名を響かせた名門オヴェリス家は歴史上から姿を消した。

次にメイが目を覚ましたのは見知らぬ森の中であった。
目を覚ました瞬間彼女は全てを把握しそして泣いた。泣き続けた。

どれほどの時間が経っただろう。
メイの目の前には一人の男が立っていた。彼は、この森の近くに住んでおり名をマーリンといった。
マーリンは何も聞かずに彼女に今の名前を与え自分の家にメイを住まわせてくれた。
彼女も最初は家の隅で震えているだけだったが次第に心を開いていきしばらくするとマーリンとは
本当の家族のようになっていった。彼は昔、傭兵として世界を回っていたらしくメイに様々な国の話をしてくれ、
彼女もその話を聞くのがとても好きだった。
ある日、彼は再び旅に出ると言ったので彼女も自分を連れていってくれと頼んだ。
彼の話を聞くうちにメイ自身もその光景を見てみたいと思ったのである。
彼は最初断ったがメイの一歩も引かない態度を見て最後には根負けして同行を許可した。
メイはマーリンとの旅でたくさんの物を見た。笑い合う人々、言葉を失うほどの美しい景色、
救いの無い戦場、戦いに負け生きるために奪うしかない光景…美しいものもあったがその殆どが
目を覆いたくなるような悲しいものだった。

そんなある日別れが突然やってきた、マーリンが倒れたのである。不治の病であった。
話を聞くとメイと出会ったときにはすでに手の付けられない状態だったらしい。
彼はメイにこう言った。
「君と出会うまで私は死んでいた。こんな世界の惨状を目にして悲しむ顔を目にしてすっかり疲れてしまっていた。
自分が不治の病だと知ったときにはある種の安堵を感じたよ、これ以上、醜い世界を見ずにすむと・・・。
だから喜んで運命を受け入れようと思った・・・だが、君と出会って私は変われた。君は私に光をくれた。
私は君に救われたんだ・・・だからお願いだ、その力で私のように哀しみ泣いてる者を救ってくれないか?
君ならばきっとそれができると思うから・・・。」

メイがしばらく黙った後「分かった、約束する」と言うと彼は笑いながら息を引き取った。

それから数年後、彼女は傭兵や騎士団を転々としながら流浪の身となっていた。
あれから助けられたものもあればそうでなかったものもあった。
そんな日々を思い出しながらふと横を見るとあるチラシが目に入った
~ギルドラフレシア 団員募集中~
ギルド・・・か。そう呟くと彼との思い出が蘇り少し微笑むと同時に何か決意したようにラフレシアのドアを叩いた。

ラフレシア解体後は騎士団からの誘いを蹴り放浪の旅へと出、消息を絶つ。

そのしばらく後になり、ジルドア国内において窮地にある人々を救い続ける「黒い天使」の噂が流れ始めたが
それがメイであるという噂も・・・。

トラシュ・ジェラス


厳格なイシュタル教徒の両親の間に生まれた。ジルドア辺境の地で、四方を山に囲まれ
世間から隔離されているといっても過言ではないくらいのド田舎だった。
一人っ子で愛情を一身に受けて育ったトラシュは、好奇心旺盛でわからないことは
わかるまで調べる、おてんば娘に成長していった。

ある日、隣家の出稼ぎに出ていた男が帰ってきたという話が町に広がった。なにせ
田舎町、噂が広まるのも早ければ野次馬も多かった。
トラシュもそんな野次馬の中にまぎれて男の話を聞きに言った。男は体中傷だらけで、
見たことも聞いたこともない「戦争」というものの話をしてみせた。
その戦争というものの中では、多くの人が血を流して戦い、殺し合い、敵を殲滅する
まで剣を振るうのだと男は話した。しかもあろうことか、その男は何人敵を殺しただの
どこまで攻め込んだだのという話を自慢げにしだした。野次馬は盛り上がって酒を
取り出したり、手当たりしだいに殴り合いを始めたりしたが、その中でトラシュは
ただ不服そうな顔をして突っ立っていた。

その日家に帰ったトラシュは、今日思ったことをすべて両親に話してみた。どうして
戦争がおこるのか、どうして人々はいがみあうのか、疑問に思ったことすべてを納得する
答えが出るまで問い続けた。これには両親もほとほと困り果て、トラシュの性格を忘れて
つい言ってしまった。

「お前の知らないことが、世界にはたくさんあるんだよ」

その夜からトラシュはその言葉が気になって仕方なくなった。世界にはどんな不思議が
あるのだろう。戦争は誰が何のために起こすのだろう。人を殺すのがなぜ罪に問われない
のだろう。いつしか自分の知らないことがあることが、我慢ならなくなっていった。
ついにトラシュは家の壁かけからレイピアをひとつ盗み出して、家出を決行した。
トラシュはじめての反抗期と言ってもいい。

しかし、所詮は世界をまったく知らない子供。首都まで出てきたところで所持金(お小遣い)
も尽き、帰る道筋も忘れてしまい、当初の目的も忘れて途方に暮れていた。
とりあえず働き先を…と考えているときに、ある酒屋の前を通り過ぎた。
「古い樽に入ったウイスキーの匂い…お母さんの手づくりのボンボンショコラ、また
食べたいなぁ…」
そんな気持ちに駆られ、思わず酒屋のドアを開けると、カウンターで会計を済ませた男が
振り返る瞬間だった。
長く黒い髪を持つその男に一瞥されたトラシュは、その場に硬直した。目を真ん丸くして、
息をするのも忘れてその男に見入る。

これがどうしようもないダメ人間だとは、この時知る由もなかったのだ。
上の空なまま男にふらふらとついていくと、とある建物にたどり着いた。
何の考えもなくドアを開けると、中にいた女性に話しかけられる。
「あら、もしかして入団希望かしら、おちびちゃん?」
いきなり話しかけられたトラシュは、咄嗟に大きな声で言ってしまった。
「はいっ、そうです!」

それがギルド・ラフレシアとの出会いだった。

ラフレシア解散後、「行くあてがない」と言っていた霧島を「男手が足りないから」などと言って
半ば無理やり村に連れ帰り、畑の手伝いをさせる。帰ってきたとき開口一番に、
「調べきれるほど世界は狭くなかった」と言った。

コン・ダリス


狩猟を中心にして生活を営む原始的な村からやってきた戦士の少年。 実は母親がエルフであるため人とエルフの混血である。その母を早くに亡くしており、エルにその面影を見出している。 普段は好奇心旺盛で甘えたがりだが、正義感が強く、他人のために自らの身を投げ打つことも多い。人間と他種族との間の壁に強い違和感を抱いている。戦闘時には野生児らしい素早い動きでの格闘戦を使用、特に足技を得意とする。14歳。ラフレシア解散後は行方不明。


ライラ・キャロ


ライラ・キャロはジルドアの中流家庭出身の19歳。
両親は宮廷魔術師であり、ライラは真面目で一本気な父ウォレスによって厳格に育てられた。
一見、円満な家庭のように見えるキャロ家であったが、母のグレースは
父とは対照的な性格で奔放で大雑把なため、教育方針などで衝突し、夫婦の溝は深まっていった。

ライラには5つ離れた弟ティムがいた。父に似てさめているライラに対して、母に似て
活発で元気なティムは、よくライラの手を焼かせていたが、喧嘩の絶えない両親をよそに
天真爛漫に振舞う弟はライラにとってかえがえのない存在だった。

ライラは幼少の頃より本を読むのが好きで、その素質を見出した母親は魔術書を読ませ、
彼は8歳でいくつかの初歩の魔法を習得した。悪用すれば危険な凶器となる学問「魔導」
は、ジルドア魔術学院がその権威となってその一切を厳しく管理している。子供に魔術を
教えることなどもちろん許されていない。発覚すれば魔術師の資格をはく奪されるだけでは
済まない重い罰を課されるであろう犯罪行為だった。妻が息子に魔術を伝授した
ことを知るとウォレスは激怒し、その日、激しく彼女を打ち据えた。
そしてその日を境に妻に不信感を持ったウォレスはグレースにことあるごとに手を挙げるようになった。
もはや夫婦の絆のようなものは崩壊していた。その背景を知るよしもないライラは
父を深く憎むようになった。

そしてライラが11歳のある日、悲劇は起こった。いつものように父が母を殴っていた
時、たまらなくなった弟が泣いてすがりついたのを、激昂していた父は彼の小さな頭を掴むと力任せに
壁に強く打ちつけたのだ。弟は体をぐったりさせその場で眠るように崩れ落ちた。
その光景はライラの理性を奪うのに十分すぎた。

ライラはあらん限りの声で絶叫すると奥底から噴き出る激情のまま、父に火の魔法を
撃ち続けた。何発も何発も・・・。

我に返ったライラが次に見た光景は、燃え盛る自分の家、慌てふためく人々、自分を見る奇異の目。
出火元が台所と判断されたのが好転して、その場でライラが罪に問われることはなかったが、
家族全員が丸こげの遺体で発見されたにも関わらず火傷程度で見つかったライラは
村人たちに疑いの目で見られるようになった。そんなある日、家族の墓へ祈りに行くと村人たちに取り囲まれた。
「この人殺し!お前がやったことはわかっているんだ!」「ウォレスも浮かばれねえぜ、
おまえを自慢の息子だと言ってたのに・・・」「親殺しは絶対に許せねえ、縛り首だ!」
弾けるようにライラは走りだした。追いかけてくる罵声を背中に受けながら必死に走り村を出た。
やっと罵声が聞こえなくなったのは、日がとっぷり暮れてから。恐る恐る振り返り、村の灯を見た
とたんに涙があふれてきた。父や母、弟の顔や声が脳裏に途切れることなく浮かんでくる。
ライラは誰もいない山道で夜通し、ただひたすらに泣き続けた。

夜が明け、途方に暮れたライラは大きな町に出て教会へ立ち寄った。
初老の牧師が彼を迎えた。覚悟を決めたライラは今まであったことを話した。
「母なるイシュタルは人の子が犯したいかなる罪も許してくださいます。神に祈り、教えを請いなさい。
あなたの救いはその中にあります。生き続け、祈り続ければ罪は償なわれるでしょう」
そう言うとその牧師はライラを家に迎えて養ってくれた。
ライラは毎日のように懺悔の祈りをし、毎週日曜日には説教を受けた。
神との対話は続く。しかし2年経ち、3年経っても彼の心を縛る罪悪感が取れることはなかった。
そして、「祈れば罪は許される」としか言わない牧師や周りの人たちに嫌気が差し、経典の話には
文句ばかりをつけるようになった。祈りで救われなかった彼の心は荒んでいったのだ。
そんなライラを牧師は疎く思うようになり、半ば強いる形で神を信じさせようとしてきた。
ライラは神父を怒鳴りつけると教会を飛び出していった。後ろから神父の声が聞こえてきた。
「神をも足蹴にした人殺し!ライラ、お前は悪魔の子だよ!その汚れた魂は地獄へ堕ちるだろう!」

どうしたらこの罪を償える?いや、このまま苦しみを背負うことが償い・・・なのか?
「神なんて嘘っぱちだ。救いなんてないのかもしれない・・・もうどうでもよくなってきた・・・」
そうして自ら住処を失ってしまったライラは、手配書を恐れてスラム街を転々として流される
ままの生活を送っていたが、市民証の類を持っていないため、スラム街から他の街へ移り住むことも
できなかった。「このままこの街で終わるのか?オレは・・・それでいいのか・・・?」
もともとは魔術士の中流家庭育ちのライラは、スラムの人々と同列と見られるのが嫌だったし、
一緒に住んでいても彼らと打ち解け合うことはなかった。いつまでもここにはいられない。どうしようか。
スラムから抜けて一番に目に付いたのは、ひとつのチラシだった。
「ギルド・ラフレシア 団員募集中」
ギルドといえば命がけの危険な仕事も請け負うなんでも屋だ。行き場のない食い詰め者が
体を張り、命を預ける場所だと父から聞いたことがある。なるほど、今のオレにふさわしい仕事かもしれない。
どんな内容でもいい、とりあえず働ければいい、この自分を苦しめ続ける咎から少しでも逃れられるなら。
そんな気持ちでライラはラフレシアの戸を叩いたのだった。

ラフレシア解散後はラグナらと共にカルタゴ王国で活動、その後はアデン帝国へ渡ったと言う。

風樽


18歳の魔法戦士。かなりの面倒臭がり屋で依頼に行ってもそこらへんに寝転がっている。剣術はとても優れているのだがそれをまったく生かそうと戦おうともしない。理由は面倒だからと言っているが実の理由は、昔。まだ12歳のころその日は真面目に剣術を習っていた。が、アデンの騎士団の攻撃を受けた、そして風樽も攻撃に応戦するが歯が立たたなかった。とすると風樽の両親が風樽を引っ張って逃げようとしたがその時両親は風樽の目の前で殺された。この出来事であまりのショックを受け戦いを蝕む様になった。が、ある日、突然風樽は剣術の稽古をしていた。理由は両親の仇を取るためだった。そして17歳になったある日、ギルド「ラフレシア」についての情報を目の当たりにする。(ここでなら剣術を学べる)と重いラフレシアへ行く事を決心した。そして依頼では寝転がっているがギルドのメンバーたちの戦い方を見て、みな目の当たらないところでいつも剣術を稽古している。この事を知っているのはエルだけである。
ラフレシア解散後は行方不明。

ヨハン・マクスウェル


かなり偏った思想を持っていてそれ関係の裏の顔を持っている。また僧侶にもかかわらず布教活動をろくにせず常に金の事を考えている。しかし悪人というわけではなくたまに情に流される時がある。25歳。武器はサンタマリア。ラフレシア解体後は、教会へと戻り禁忌を犯した者を断罪する異端狩りの仕事に従事し「白い死神」と呼ばれて恐れられた。

ラグナ・ライトマン


各地を旅していて、最近ジルドアに戻ってきた戦士。25歳。
元々ラフレシアに所属してはいたが、2年程前にいきなり旅に出た。理由は「誰かが俺に旅に出ろと告げた気がするから」。最近所属した人は知らない人が殆どである。一応、エルに向けて一方的に手紙をこまめに送っていたらしい。旅での知識が豊富で各地で色んなことを学んできた。メモ帳とペンを常に所持し、話を聞きながらメモを取るというクセがある。愛国心自体は低く、自身の信じる正義に従って動く。自分で使う武器や防具は自分で作るというこだわりを持つ。性能は他と変わらないが、バルディッシュも一応自分で製作している。その分、自分好みのアレンジなどを加えていたりする。バルディッシュと千夜灰桜を使い分けて戦う。

ラフレシア解散後、ラフレシアの仲間を引き連れ放浪の旅に出る。5年後にはカーミラも仲間に加え、カルタゴ王国に落ち着く。この頃から「ユウム」と名乗るようになり、そこでいくつもの伝説を残す。

ジルドアにおける戦いの日々で得た強力な武器をいくつも背負い、美しい吸血鬼を従えた彼は英雄ハンニバルをも凌ぐ歴代最強のモンスターハンターとして名を馳せた。

モンスターハンターとして活躍したラグナにはいくつもの武勇伝が存在する。その内の幾つかを紹介しよう。

「ある時、彼は白く輝く槍を持ち、魔獣の群れを退けた」
「ある時、彼は不思議な形状をした片手剣と美しきロングソードを構え、街を襲うアンデットと吸血鬼を打ち倒した」
「ある時、彼は自身の身の丈の3倍もあろうかという一つ目の巨人をたった一振りの剣で一刀両断にした」
「ある時、彼は巨大なワイバーンを一本の両手剣を使いたった一人で斬り殺した」

「不老不死は誰もが願うことだ。だが、それを自分だけが手に入れてしまったらどうする? 自分を置いて、中のよかった友人や愛する家族が先に死んでいくんだ。自分もあの世で皆と会いたいと願うのに、自分は死ぬことが出来ないからずっと生き続けるだけだ。それこそ、人間が絶滅してしまうまで。俺ならば、死ねないという辛さの中でずっと生きていくのだろう」
                        ――――ある吸血鬼へと向けた言葉

カルタゴで7年間活動したあと、仲間たちを連れてアデンに住む友人を頼ってアデン帝国圏へ旅立っていった。その後は不明。

ロム・モノク


ジルドアの街を拠点とし、物を売り歩く雑貨商を営む盗賊。年齢不詳。
過去の経歴については謎でありまた自身から話したがらない。その正体は何百人をも殺したを殺人犯だとか、各地の秘宝を盗んでいく大泥棒だとか、戦争で英雄的な働きをしたという伝説の傭兵などの噂が流れているが、どれも根も葉もない噂だったりする。ラグナが何かしら知っているらしいが……。

名乗っている名前は偽名であり、とある地方の言葉で「相対する者」という意味がある。
ラグナとは古い友人であり、ラフレシアへと加入したのも同時期である。だが、ラグナが旅に出たのと同時に姿を消し、ギルドへも殆ど姿を現さなくなってしまう。これまたラグナが旅から戻ってきたと同時にギルドへ姿を現す。

薬を作るのが趣味であり、商品にも薬品が多く並ぶ。また自分で何かしらの発明をするのも趣味であり、時折製作しては店頭に並べるが中々売れない様子。

ラフレシア解散後はラグナに誘われ、仲間たちと共にカルタゴへ渡る。そこで「ユリン」と名前を変えてこれまで貯めた財産を使って家を建て、雑貨商を営んだ。それから7年後に仲間たちとアデン帝国へ渡る。なお、実はこのロム・モノクという人物、男装をしていた女盗賊であったというのはまた別の話である。

ネル・エルウィン

性別・女
年齢・14
職業・魔術師(風・水)
性格・のんびり屋
武器・ソーサラーロッド

平和とのんびりとした生活が好きな平和主義者。簡単に命を奪う武器を嫌い、
魔法でしか戦おうとしない。逆に言うなら接近戦がまったくもってだめで戦いにならない。
他人を支えるのが好きでお手伝いやサポートを積極的に行う。
趣味はお昼寝と料理。

彼女は両親の愛をあまり受けずに育った。自覚があったころから親はケンカを繰り返していた。
彼女もその被害にあうことは1度や2度ではなかった。
両親の意思で彼女は魔術学院に通うことになった。
毎日があわただしく、忙しい日だった。
成績は優秀、だが忙しい日々は彼女の性格ではただ苦痛なだけだった。
そんなある日、平和と愛を語る男が彼女の目の前に現れた。
彼のことを簡単に言うと、イシュタル教徒である。
つまり彼が言ったのは聖書にでも載っていそうな「平和や愛」の言葉である。
しかし、彼女には効いた。
普段ケンカを見るのが多い彼女のこと、効果は抜群。
「力は傷つけるだけじゃなくて、人を救うこともできる!」
彼女は学校をやめ教徒になろうとしたが親が大反対。
結局、彼女はそのまま魔術学院に残った。
しかし少しして親が離婚してしまう。母が引き取ってくれたが
もともと学費を払うので精一杯だったのに単独で学校に行かせられるわけもなく、
結局は退学した。だが、彼女は平和をあきらめてはいなかった。
母から独立し自力で働こうとするが、性格が足を引っ張り上手く就職できなかった。
そんなある日、ふらふらと歩いていると楽しい笑い声が聞こえてきた。
声がしたのは、ギルド・ラフレシア、という場所だった。
窓からこっそりのぞく。そこから見えたのは笑いあいながら楽しそうに話す人々。
するとドアから誰かが出てきた。
だがネルは気づかずにただじーっと窓から中をのぞいている。
「あの・・・なにしてるのかしら?」
「にゅ・・・入団希望です!」
それがラフレシアとの出会いだった。
ラフレシア解散後は行方不明。


ヴェレダ・コルベル


土・水属性の女魔術師、23歳。

 両親が旅芸人一座のメンバーであり、彼女もまた必然的に幼い頃から芸を学ぶことになる。父は奇術、母は音楽、
彼女は舞の役割を任されていたが、ヴェレダ本人は見せ物として人前に出ることが好きではなく、仕事のない日は森や
河原などを探し自然と戯れ、人と離れて過ごしていた。

 14歳のある日、いつものように河原へと足を運ぶと、石を集める奇妙な赤毛の女に出会う。彼女の名はイルマといい、
占いを生業としている火と風の魔術師であった。ヴェレダは彼女の占いと話術に惹かれ、イルマの弟子になりたいと申し出る。
イルマは一度断ったが、旅をしながら人を観るのも悪くないと考え、一座と行動を共にするようになる。

 その後、ヴェレダ達が芸で集めた人々の中から占いに興味を示した者をイルマが客とする利害関係が産まれ、
ヴェレダもイルマから占いを教わり弟子として認められるようになり、そのうちに2人の仲は親密になっていった。
 だが、ヴェレダが23歳の誕生日を迎えようとした頃、イルマはヴェレダに一つの約束をして、一座を去る。
そしてヴェレダも、イルマとの約束を果たし再会すべく一座を離れ、ジルドアに女性のエルフがマスターを務めるギルド
があると聞き、ラフレシアを訪れる。ラフレシア解散後は行方不明。


ハンス


まれにジルドアに現れる戦士系の冒険者。
 ジルドアに定住していなかったが、ラフレシアの名簿には登記されておりジルドア滞在中には
 ラフレシアの冒険者として冒険に参加する事があった。
 装備はブロードソード、バックラー、チェーンメイル。

 ラフレシアでは『ハンス』としか名乗らず、自分のことも何も話さなかったが
 その正体はゲルマニアの貴族であり、オステンフェルト子爵家当代にして
 ミレーヌとの国境に位置する城塞シュネーブルグ(通称:白雪城)の太守。
 ゲルマニアにおける称号付のフルネームは
 ヨハネス=ペーター・オステンフェルト・ブルググラフ・フォン・シュネーブルグ。
 ゲルマニアとミレーヌの国境付近の山頂に位置し、かつては攻略の難所として
 ミレーヌ側に知られたものの、現在は停戦状態が長く続いたためほぼ廃城状態
 であり、太守の身でありながら比較的自由に動ける立場を手に入れたハンスは
 戦争によって与えられる領民や国の疲弊を憂い、諍いや争いの火種になりそうな
 情報をいち早く集め、できるならそれが大きくなる前に消し、そうでなければすぐに
 戦の備えができるようにするために、自らユウロぺ内を渡り歩き、そういった情報の
 集めやすい各地の冒険者ギルドに顔を出しては、冒険者として介入していた。

 ラフレシアの面々とも必要以上の接触を避けてきたハンスだったが、ある日、エル
 にその素性を問われる。エルの質問をはぐらかし、答えようとしないハンスだったが
 マスターとしてだけではなく、ハンスのことをもっと知りたいと言うエルの心に触れて
 次に話をする機会があれば、そのときはきっと話すと約束し、ジルドアを去る。

 しかしその後、白雪城から届いた魔物の大量発生の報を受け取り、白雪城を冠する
 ヴォルケンベルク(通称:曇り山)まで戻るも、その場で発生した白雪城軍とミレーヌ軍
 および魔物の群れとの三つ巴の諍いに遭う。その最中、体にミレーヌ国境警備隊の
 毒矢を体に受けて地に膝を着くが、最期は自らの助からない命を代償とする代わりに
 白雪城とミレーヌ両軍の兵士たちの余計な犠牲を出さずに魔物を一掃する策をミレーヌ軍
 の将校ミシェル・ド・アルクに提案。自分ひとりが犠牲になればいいのかと自己犠牲を
 厭い作戦を拒むミシェルに対し、自らの死への恐怖を告白しながらも、自己犠牲ではなく
 兵士や領民たちを守るのが貴族の務めであり誇りなのだと諭し、ミシェルを説得する。
 作戦は実行され、魔物と交戦する兵士たちが退却する中でひとり魔物の群れに向かう。
 毒に侵され足取りもままならない中、退却する兵士たちをすれ違っていく。
 入隊したばかりであろう、少年のような新兵たち。妻から贈られたのであろう、無事を祈る
 お守りを身に着けた青年の兵。負傷して自力では歩けない白雪城の兵士に肩を貸し
 ともに歩くミレーヌ兵士。
 足は止まらなかった。いますれ違った人々の命が、これで守れるのだから。
 目前には、おびただしい数の魔物の群れが広がっている。
 「我らが母なるイシュタルの御力、眩き聖なる光の雨よ・・・」
 背後からは嗚咽まじりのミシェルの詠唱が始まった。
 もはや、恐れは無かった。目の前の敵は、背後の『仲間』がすべて倒してくれる。
 ここで僕が倒れても、僕達は、敗けない。
 「彼の者らの罪を流し清め、楽園への道標となせ・・・」

 ふと、背後の声に誰かの声が重なった。
 それが誰のものなのかに思い当たったとき、ハンスの口元に小さな笑みが浮かんでいた。
 旅の中で出会った赤い髪のエルフ。そして、その『家族』たち。
 そういえば、後ろの金色の髪のエルフは、どことなく彼女に似ていた。
 幾多の冒険者ギルドを渡り歩いたハンスだったが、どこかぬくもりのあるあの場所が
 ハンスは好きだった。
 エルに怒鳴られ、両手で耳をふさいでいる霧島・・・
 ころころと表情を変えていくメアリ・・・
 そんなメアリに追い立てられて逃げまわるキルク・・・
 船上で灯台を眺めるメイ・・・
 満身創痍の霧島を抱きかかえて泣きじゃくるトラシュ・・・
 ・・・どこか寂しさを帯びた瞳を、それでもまっすぐこちらに向けて言葉を紡ぐエル・・・・・。
 さまざまな光景が頭をよぎっていく中で、そういえば、とハンスは思い出す。
 あのまっすぐな瞳に捉えられたとき、ふと自分の本当の名前を言いそうになった。
 どうにか心を落ち着け、その代わりに、それを次に持ち越す『約束』を交わした。
 その約束は、もはや果たすことは出来ない。
 それでも、きっとこれでよかったのだとハンスは思う。
 あの優しいエルフは、きっと、あんな僕の死でも心を痛めるのだろう。けれど、あのとき
 僕が何も話さなかったおかげで、彼女は僕の死を知ることは無いのだ。彼女を
 悲しませずに済むのだ。 ならば、これでよかったのだ。

 背後から強い光が放たれ、不意にハンスの最後の回想は終わった。
 目の前に広がる敵の群れを見据える。もう、目の前には敵しかいなかった。
 詠唱はもう終わる。魔物は僕が引き付けた。あとは、魔法が完成すれば、僕達の勝ちだ。
 折れそうになる膝に力を入れ
 背筋を伸ばし
 胸を張る。
 さあ、来い。
 魔物のひとつが咆哮を放ったのを合図に、一斉に襲い掛かってくる刹那。
 「アタランテェェェッ!!!」
 迫り来る魔物の咆哮をミシェルの泣き叫ぶような声が切り裂き、天上からの光の雨が降り注ぐ中で。

 ありがとう

 誰へ向けたものだったのか、その言葉だけを残して。
 ハンスは、光の中に溶けていった。