ヘイトスピーチに対抗する「カウンター」って何?

 今年2月頃から、韓国・朝鮮人が多く住む東京の新大久保や大阪の鶴橋などで、人種や民族、宗教などをおとしめたり、それらへの差別をあおったりするヘイトスピーチ(憎悪表現)と呼ばれるデモが頻繁に行われています。一方、そうしたデモに対抗するカウンター(対抗)行動の勢力も増大してきて、両者の対立が激化しています。

 ヘイトスピーチのデモは、在日韓国・朝鮮人の永住権などを許さないと主張する「在日特権を許さない市民の会」(在特会)を中心に行われています。「朝鮮人を殺せ」「ガス室にたたき込め」といった過激な罵倒や挑発の言葉を繰り返し、デモや集会の様子はネットの動画で発信され、差別感情をあおり立てています。

 諸外国には、こうしたヘイトスピーチや差別に対する法規制がありますが、日本では事実上、野放し状態にあります。そのため、市民の間から湧き上がる形でカウンター行動が出てきたのです。

差別反対で「東京大行進」

 たとえば、在特会による新大久保デモに対して、社会人や大学生がネット上でヘイトスピーチ反対を訴えました。これに呼応して行われたデモの参加者は、今年2月にはヘイトスピーチを展開するレイシスト(人種差別主義者)と呼ばれるデモの150人規模に対して30人ほどでしたが、3月31日には400人へと増加し、レイシストのデモ隊側を圧倒的に数で凌駕するようになりました。

 9月22日には、「差別撤廃 東京大行進」という大規模なデモ行進が東京・新宿で行われ、約2000人が「差別をやめよう 一緒に生きよう」と声を上げ、約4キロを練り歩きました。

 また、「レイシストをしばき隊」という組織は、公道のヘイトスピーチ自体を街頭からの声と音でかき消して、ネトウヨ(ネット右翼)が「娯楽」として楽しめないようにするカウンターを行っています。

 両者の対立は次第に激しさを増し、6月16日にはデモ隊の衝突で在特会の会長ら8人が暴行容疑で警視庁に逮捕され、9月29日には、「しばき隊」と行動を共にしていたカウンター側からも逮捕者が出る事態となりました。

 公道での罵詈雑言の応酬について、「しばき隊」を主宰する野間易通氏は、朝日新聞(9/24日付)のインタビューに対し、「僕らは彼らを罵倒し続けることで、精神的にへこませ、デモに行く気を失わせようとしている」と答えています。

有識者らが市民団体を結成

 一方で知識人たちも動き始めています。ヘイトスピーチに反対する市民団体「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」(のりこえねっと)が結成され、その発足会見が9月25日、東京・新大久保で行われました。共同代表には、村山富市元首相、和田春樹・東京大学教授、宇都宮健児・日本弁護士連合会前会長、右翼団体「一水会」の鈴木邦男顧問、辛淑玉(シン・スゴ)人材育成技術研究所長ら21人が名を連ねています。