シェアハウス:寄宿舎基準適用 「丸投げ」自治体困惑
毎日新聞 2013年09月29日 10時58分(最終更新 09月29日 12時10分)
◇「提訴されたら敗訴も」
他人同士が一つの家に集まって住む「シェアハウス」などの事実上の規制に国土交通省が乗り出したことを受け、自治体の担当者の間で「現場に一律適用するのは無理がある」などと困惑の声が広がっている。通知を厳格に適用すれば、全国の数千棟を是正指導する必要が生じ、多数の運営業者の廃業や入居者の「追い出し」につながる可能性もある。「国からやれと言われればやるが、それが社会正義なのか」。責任の「丸投げ」とも取れる通知に対応を決めかねている自治体は多い。
「まさか、このような内容で本当に出るとは……」。東京23区内のある担当課長は驚きを隠さない。今月6日に同省が「技術的助言」の名目で出した通知は「事業者が入居者を募集し、自ら管理する物件に住まわせるものは建築基準法上の寄宿舎」とした。
これに東京都建築安全条例を当てはめると、狭く危険な「脱法ハウス」だけでなく、「4LDKの一軒家を4人でシェアする」など一般的なシェアハウスでも、敷地内に避難用の十分な空き地(窓先空地)がない場合などは違反となり得る。「一戸建てを転用したシェアハウスの大半には窓先空地などないし、作れと言うのも酷だろう」
別の区の幹部は、これまでこうした物件が寄宿舎の基準を満たしていなくても特に改修などを求めてこなかったことを明かし、「気の合った仲間で構成する『疑似家族』と血縁のある家族とで、住まい方はどう違うのか。明確な線引きなどできない。法令にシェアハウスの定義がないのが最大の問題だ」と指摘した。
業界団体によると、他の多くの自治体もほぼ同様の対応をしてきたため、一般住宅の基準しか満たしていないシェアハウスがほとんどだという。幹部は「火災時に逃げ遅れるような危険施設こそ規制すべきで、『業者が介在するか否か』などというのは、何か話が別の方向に行ってしまっている気がする」と首をかしげた。
建築基準法は、確認申請や是正指導など建築行政の多くの権限を、建築主事を置く市や区などの「特定行政庁」に与えており、通知によって特定行政庁側が責任を丸投げされた形だ。都建築企画課も「既存物件への対処はそれぞれの区などで判断すること」とする。