「尾灯」が教える一皮剥いたときの姿
今日、5日土曜午前08:05~08:45の「ラジオ文芸館」は語り糸井羊司による、三浦綾子の短編小説「尾灯」だった。
特に定年前後の人が読んだら、我が身に重ねるはずだ。
「今度一杯やりましょう」、「ゆっくり泊りがけで遊びに来て下さい」など、友人同士は勿論、近しい親類同士では良くある挨拶言葉だ。
年賀状や引っ越しの挨拶文には、良く添え書きしてあるし、自分でも書いたことがある。しかし、そこには「本音と建て前」という人間の醜さが流れているかもしれない。
「尾灯」のあらすじは、
「定年を過ぎて5年になる主人公・平川良三。正月の朝、良三の元部下・坂崎と長男・義孝からの年賀状に目が留まる。
良三との再会を願う坂崎。そして「泊まりがけで遊びに来てほしい」と誘う義孝。その言葉を受けて良三は、久々の再会に胸を弾ませながら、2人が暮らす旭川へと向かう。しかし訪ねた先で直面したのは、温かい言葉とは正反対の、冷たく不誠実な対応だった・・・・・・・・・」
最後に主人公が「終列車の赤い尾灯を見送る」場面が哀れで印象的だ。
主人公は長男の「泊まりがけで遊びに来て」という言葉を間に受け、その予定だったが、嫁の冷たい扱いに終電で帰宅することにする。
終電までの時間、近くで一人酒を飲む。
「良三は少し酒を飲みすぎた。汽車の時間に気づいて車で駅にかけつけた時、発車のベルがかしましく鳴っていた。良三が改札口を出た時、汽車は発車した。良三は、ふらふらとプラットホームにくずおれた。終列車の赤い尾灯が小さく遠ざかっていった。」
そして、この初老の男性に我が身を重ねて気怠さを覚える。
更に、今回の感想としては、
震災後、「絆」とか「思いやり」などの建て前言葉が流行ったが、直後に「がれき処理」と言う現実問題が提起されたときの各地の拒否反応は見事だった。
これが、言葉だけは簡単に綺麗ごとを並べる人間の「一皮むいたときの真の姿なのだ」と、三浦綾子は「尾灯」で嘆いて教えているのであろうか。
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