水俣病:被害者互助会損賠訴訟 患者「否定」に原告反論 医師を証人尋問−−地裁弁論 /熊本
毎日新聞 2013年10月04日 地方版
水俣病被害者互助会(水俣市)の会員9人が国や県、チッソに対して損害賠償を求めた訴訟の弁論が3日、熊本地裁(片山昭人裁判長)であった。国側の証人として、原告が水俣病患者であることに否定的な意見書を提出した医師4人の尋問が始まり、この日は福岡県内の企業などで産業医を務める田原裕之医師が証言台に立った。
田原医師は水俣病患者の診察経験はないが、原告を水俣病患者と判断した故原田正純医師の診断書について「判断根拠が読み取れなかった」とし、各原告についても「糖尿病(の可能性)を考慮すべきだ」「他の地域なら、神経症と診断されても不思議でない」などと主張した。
原告側は、田原医師が一部の診断書しか見ておらず、病状を判断するために必要な他の資料を見ずに意見書を書いた姿勢を批判。水銀摂取歴や感覚障害などの症状の激しさを考慮していないことも指摘し「意見書を撤回すべきだ」とした。田原医師は「原告が水俣病患者でないとは言っていない」と弁解した。
女性原告が「あなたは、毒の魚を食べさせられた私たちを否定した。私たちの人生は何だったと思うか」と質すと、田原医師は「病気に苦しんでいることを気の毒に思うが、医師としての対応は別だ」と突き放し、傍聴席から「無責任だ」との声が上がった。【笠井光俊】