中日スポーツ、東京中日スポーツのニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 中日スポーツ > プロ野球 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【プロ野球】

宮本引退 6度宙舞う

2013年10月5日 紙面から

ヤクルト−阪神 引退セレモニーでヤクルトナインから胴上げされる宮本(市川和宏撮影)=神宮球場で

写真

 今季限りで現役を退くヤクルトの宮本慎也内野手(42)は4日、自身の引退試合となった神宮での阪神との本拠地最終戦に2番遊撃でフル出場。5打数無安打で19年間のプロ生活にピリオドを打った。小雨が降るなか、3万966人の大観衆が詰めかけ、別れを惜しんだ。6回には同僚のウラディミール・バレンティン外野手(29)が自身のプロ野球記録を塗り替えるシーズン60号本塁打をマーク。ベテランへのはなむけの一打となったが、試合は延長12回の死闘の末、惜しくも競り負けた。

 場内を1周した宮本は、おもむろに右翼席に向かって走りだすと、よじ登ってフェンスをまたぎ、乱舞する傘の群れに向かって叫んだ。

 「ありがとーッ!」

 黄金期を知るツバメファンなら知っている究極のファンサービス。「2001年の優勝の時には、まだ自分はそんな選手じゃないと思ってやらなかった。優勝してできれば一番だったけど…。悔いはない。やりきった」。最後の試合を勝利で飾ることはできなかったが、涙はない。満面の笑みで、19年間のプロ生活に幕を下ろした。

 冷たい涙雨がそぼ降るなか、3万966人の満員のファンの前で胴上げをしてもらった。入団以来背負ってきた背番号と同じ6度、宙に舞った。

 入団当初、当時の野村克也監督から「守りだけの自衛隊」「脇役の一流になれ」と言われた守備の名手。2001年には日本最多記録をマークした犠打で日本一に貢献し、40歳を過ぎた引退前年には通算2000安打を達成した。攻守に数々の記録と記憶を残したチームリーダーは球団の顔としてグラブを置いた。

 8月26日の引退会見では「プロになり、仕事になった瞬間から、野球を楽しんだことは1回もなかった」と、厳しく律してきたプロ人生を振り返った。だが、この日の引退スピーチでは「会見後に自分の中で変わってきた。代打で出る度に温かい大歓声や拍手で迎えられ、自分は幸せ者だったなと感じられた。皆さんのおかげで、初めて野球が楽しく感じられた」と語りかけた。延長11回、現役最後の打席で大きな左飛を放った直後も笑顔に徹した。

 今季は残り2試合あるが、これでグラブもバットも置く。出場選手登録を抹消し、兼任しているコーチの登録でベンチ入りする。来季からは野球解説者となる予定で「球団に『戻ってきてほしい』と言われるように、外から野球を勉強したい」。第二の人生に向かって、笑顔で第一歩を踏み出した。 (竹村和佳子)

 

この記事を印刷する

PR情報

おすすめサイト

ads by adingo




中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ