歓喜の雨を全身に浴びた。両手でウイニングボールを何度もこねながら、帰りのバスへと歩を進める姿が初々しかった。松田がプロ2年目にして、初白星をゲットだ。延長十二回、3時間50分の激闘。19歳のうなる剛球が勝利の女神を振り向かせた。
「たまたま、そういうところで投げさせてもらって。初めて勝ったので、うれしいですね。ウイニングボールは両親にプレゼントしたいです」
2-2の十回。今季26試合目の登板が回ってきた。まずは簡単に3人で斬ると、イニングをまたいだ十一回だ。「すごい雰囲気で、緊張した」。先頭には引退試合、プロ最後の打席を迎えた42歳宮本。神宮球場のボルテージは最高潮に達した。観衆を裏切らない真っ向勝負を挑んだ。フルカウントからの7球目。146キロの直球を芯でとらえられた。左翼席に向かっていったが、若い力が勝った。フェンス手前で失速し左飛に打ち取った。
「小さい頃からテレビで見ていた選手。抑えられてよかった」
後続もピシャリと封じ、2回無安打無失点。22球の快投が十二回の勝ち越し劇を呼んだ。
酸いも甘いも味わった激動の1年だ。7月中旬に1軍初登板を果たすと、破竹の勢いで17試合連続無失点。一気に勝利の方程式の一角を担うまでに成長した。しかし、プロは甘くなかった-。