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防衛指針改定―日米にずれはないか

日米の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)が東京であり、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を来年末までに見直すことで合意した。ガイドラインは旧ソ連の侵攻に備え78[記事全文]

教委の改革―首長の権限では危うい

知事や市町村長の権限を強めれば、教育はよくなるのか。教育委員会の改革案を、文部科学省の中央教育審議会がまとめた。有力案とされるのは「いま教委がもっている教育行政の決定権[記事全文]

防衛指針改定―日米にずれはないか

 日米の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)が東京であり、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を来年末までに見直すことで合意した。

 ガイドラインは旧ソ連の侵攻に備え78年、最初につくられた。冷戦後の97年、朝鮮半島有事などを念頭に周辺事態の概念を盛り込んで改定された。

 今回の再改定の動きは、中国の軍備拡張をにらみ、日本側が求めて実現した。これまでと意味合いが大きく違うのは、日本が、集団的自衛権の行使をめぐる憲法解釈の変更を反映させようとしている点だ。

 過去2回のガイドラインづくりでは、憲法9条と対米協力の整合性をギリギリの線で図ってきた。それを安倍政権は一気に踏み越えようとしている。

 実現すれば、専守防衛を掲げてきた日本の安全保障政策の大転換となる。

 ガイドラインの再改定をテコに集団的自衛権の行使容認を推し進めてはならない。

 憲法解釈の変更が決まってもいないのに、米国との間で見直しに触れるのは、ものの順序が逆ではないか。見直しに慎重な国内世論より、対米協力を重視するかのような進め方はおかしい。

 米側は2プラス2で、集団的自衛権をめぐる動きを「歓迎する」と表明した。しかし、それは(1)日本自身が決定する(2)周辺国の理解を得る努力をする――ことが前提となっている。

 米国には中国とやみくもに対立する意図はあるまい。静かに抑止力を高めつつ、経済などで中国との協力を模索している。

 2プラス2で、米側は尖閣問題への直接の言及を避け、米国の後ろ盾を強調する日本側との対中認識のずれがあらわになった。日本の強硬姿勢がそのギャップを広げる可能性もある。

 一方、自衛隊が敵のミサイル基地をたたく「敵基地攻撃」には触れなかった。自衛隊は「盾」、米軍は「矛」という役割分担を見直す日本側の動きだが、日本が海外への攻撃力を持つことになれば、隣国の韓国の反発を招きかねない。

 むしろ米国が望むのは、日米韓の防衛協力の着実な進展だろう。2プラス2の直前、在韓米軍高官が憲法改正をめぐる安倍首相の発言などを指して「この地域の役に立たない」と批判した。本音ではないか。

 米国は来年の環太平洋合同演習(リムパック)に初めて、中国軍を招待する。日米同盟の強化は、中国、韓国を含めた地域の多国間関係のなかで、緻密(ちみつ)に検討する必要がある。

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教委の改革―首長の権限では危うい

 知事や市町村長の権限を強めれば、教育はよくなるのか。

 教育委員会の改革案を、文部科学省の中央教育審議会がまとめた。有力案とされるのは「いま教委がもっている教育行政の決定権を、首長に移す」という案だ。教委は独立性を失い、首長の「付属機関」になる。

 だが、このところ学校教育を揺るがした問題を見るにつけ、この案には賛成しがたい。

 大阪市では1月、橋下徹市長が、桜宮高校の体罰問題をめぐり、目前に迫る体育系2科の入試中止を求めた。静岡県では9月、川勝平太知事が、全国学力調査の成績下位校の校長名を公表する考えを示した。

 いずれも教委がブレーキ役に回り、市長や知事と議論した。受験生が行き場を失ったり、下位校がさらし者にされたりという、現場が最も心配した事態だけは避けられた。

 もし、首長が決定権を握り、教委がただの諮問機関になったら、教委が異を唱えても真剣に取り合われるだろうか。

 「首長に権限を」という改革論は、教育への「民意の反映」を旗印にしている。

 各地のいじめや体罰問題の対応をみると、市民感覚からかけ離れた教委があるのは事実だ。教師や保護者はもちろん、首長とも日ごろから意見交換を密にすべきだろう。

 ただ、教育は短期間に成果が出るものではない。首長が代わるたび方針がぶれかねない不安定な制度設計は避けるべきだ。

 そして、民意を反映するためにこそ、一元的でない意思決定の仕組みが大切である。

 今の制度の長所は、多様な人の視点で政策を検討できて一人の意見に染まりにくいことだ。多様な考え方の尊重は教育の根幹であり、そこは守りたい。

 一方、非常勤の委員が月2回程度集まって合議で決める仕組みは、責任の所在があいまいなうえ、あまたの教育課題をじっくり検討できない弱点がある。

 中教審は首長に権限を移す案のほか、第2案として、「委員会の役割は変えず、事務方トップの教育長を教育行政の責任者と明確にする」ことも検討している。委員会にかける議題も、教科書採択や学校統廃合などの重要事項にしぼるという。

 現行制度の弱点を改善し、長所も生かす考え方だ。教育長の権限への歯止めは課題だが、首長と委員会の力のバランスはこちらのほうが保ちやすい。

 「今との違いがわかりにくいのが難点」というけれども、代わり映えがするかどうかは問題ではないはずだ。

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