戦略特区WG案:契約で解雇可能に 外資の誘致狙う

毎日新聞 2013年10月04日 21時48分

 政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG、座長・八田達夫大阪大招聘<しょうへい>教授)は4日、特区への導入を目指す雇用分野の特例措置を発表した。短期契約を5年を超えて更新した従業員が無期契約に転換できる権利を制限し、契約に基づく解雇も認める。国内の雇用規制を特区に限定して緩め、海外企業やベンチャー企業の進出を促す狙いがある。政府が秋の臨時国会に提出する国家戦略特区関連法案に盛り込む方針だが、厚生労働省は反対しており、調整は難航しそうだ。

 首相主導で規制改革や税制措置を行う国家戦略特区は、安倍政権の成長戦略の柱の一つ。WGの提案によると、外国人従業員の比率が一定以上の企業か開業から5年以内の企業に特例措置を適用し、対象となる従業員は、弁護士や会計士など一定の専門資格取得者か修士号・博士号取得者に限定する。これによって「企業が優秀な人材を集めやすく、優秀な人材が働きやすい制度環境」を整える。

 労働契約法の改正で今年4月から、有期契約を繰り返して通算5年を超えた従業員は、企業に申し込めば無期契約に転換できるようになった。これに対し、特区では無期転換しないことを従業員に事前に約束させることを認めるほか、解雇の要件や手続きを契約書面で明確化する。

 これにより、個々の事例が使用者の解雇権の乱用にあたるかどうかを問う訴訟が提起される事態を抑え、企業が従業員を採用しやすくする。また、こうした特例措置の導入に伴い、不当労働行為や契約の強要などが生じないよう、特区内の監督機能を強化する。

 一方、WGが当初検討した労働時間規制の特例導入は見送る方向になった。一定の年収がある場合に労働時間の規制をなくし、残業代や深夜・休日の割増賃金を支払わない「ホワイトカラー・エグゼンプション」は、第1次安倍政権で導入を断念した経緯があり、八田氏は4日の記者会見で「議論を詰め切る時間的な余裕がない」と説明した。

 雇用に関する規制を特区で緩和することに、厚労省は反対の姿勢を崩していない。田村憲久厚労相は4日の会見で「労働者の権利の根源に関する部分、労働者保護の根源に関する部分に関しては、やれないことはやれない。提案を精査しなければならない」と述べた。【念佛明奈】

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